伝統的建造物の保存と継承への取組み
今回は、愛知県豊田市の伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)
にてデジタル耐震チェックを行った事例をご紹介いたします。
1.豊田市足助
~愛知県豊田市足助地区の特徴~
愛知県北東部に位置する足助(あすけ)は、伊那街道の重要な中継地点として栄え、江戸時代から昭和前期までの町家が密度高く並んでいる。
街道沿いの短冊状の敷地に平入・妻入の主屋が間口いっぱいに建ち並び、背後には付属屋・土蔵などが配置されている。
足助川沿いには、石垣を築き川に張り出すようにして座敷などが建てられ、独特の景観をつくり出している。(※豊田市作成資料より抜粋)
※重要伝統的建造物群保存地区とは?
城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存を図る目的で、昭和50年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群保存地区の制度が発足しております。
令和6年3月時点で、重要伝統的建造物群保存地区は105市町村で127地区となっており、様々な取り組みが行われています。
参照:文化庁ホームページ(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/)
2.デジタル耐震チェック実施
本建物は、豊田市足助町が重伝建地区に選定されるにあたり、江戸時代から塩の道として栄え、全盛期13件程あった塩問屋の内、唯一残っている塩問屋としての価値があり、建物も足助の特徴である妻入型と平入方が同じ地主として一対で残っている価値ある物件です。
そして現在も代々9代目として生計を立て、有形民俗文化財にも指定されています。
建物は、伝建地区第一号として伝建ルールに基づき文化財修理、及び耐震補強を既に実施しているとのことですが、デジタル耐震チェックによる「数値での耐震評価」が、今後の足助町の耐震計画を進めていくうえで有用になるのではということからご依頼いただきました。
デジタル耐震チェックでは、地盤の揺れやすさ+建物1F、2Fの重心部分に調査機を設置していきます。
既存の建物情報から必要な耐震性能を割り出し、地盤の調査結果を加味した建物の計測結果と比較して現在の耐震性能を割り出していきます。
☆まずは地盤の揺れやすさ調査から
☆続いて宅内の計測を実施
計測時間は地盤、建物それぞれ20分程度です。
非破壊で音もしない調査となります。
3.調査結果を公表
今回は家主様のご厚意により、測定結果を掲載させていただきます。
地盤増幅率0.61ということは地震力が減衰して伝わってくることを意味しており、足助の地盤は揺れに強いと言えます。
強い地盤と相まって、評定3.16と非常に高い数値となりました
地盤を考慮しない場合でもY方向1.59という結果で、建物だけで耐震等級3相当の性能があるとの結果です。
建物の築年数から考えるに、しっかりと耐震補強が効いていると言えるのではないでしょうか。
このようにデジタル耐震チェックでは、建物の耐震性能が数字で見えるようになります。
今後も、豊田市様・足助伝建保存会様とともに本調査結果の検討を進め、地区の保存にむけた活用方法を検討していきます。
今後も事例と合わせて、サービスの紹介を行っていきます。