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兄が死んだ日

その日はとても月が大きくて
都会のビルの屋上から見え隠れする程の低い高さで
黄色ともオレンジともつかない色を帯びていた。

夏の猛暑でクタクタになった花と
秋の花を花壇に植え替えるため
隣の駅まで2歳にもならない息子を夫と連れ立って
夕飯を食べ花を買い帰宅した。

世の中は、台風明けのラグビーの試合で
持ち切りだった。

夜20時ほど。
日曜日の夜だった。

兄嫁から電話が鳴った。

こんな時間に何だろうと思った。

兄が死んだ。ごめんね。
淡々とした電話だった。
兄嫁は泣かず少し苛立ったように
兄を呼び捨てにした。

私は動転して、事故で死んだことを聞いて、
もう新幹線はなかったし
明日の朝行くからと電話を切った。

夫がとても驚いていた。

叔母と父に電話した。

叔母も怒っているようや口ぶりだった。
明日の朝、東京駅でと約束した。
父はすぐに、びょういんに向かうと言った。

人生で1番辛い日。

兄の亡くなってしまった日。

私が人生に絶望してしまった日。


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