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「火の鳥」

久しぶりに読みたくなって、メルカリで購入して読みました。
やはり素晴らしい。歳を取れば取るほど素晴らしさを感じてくる気がします。

手塚治虫という人はもちろん多作なので駄作もありますが、ほとんどの作品が今でも立派に通用する素晴らしい人生哲学をもとに作られています。

本人が元々医学博士を取るほどの理知的な人というのもあると思いますし、虫博士、昆虫博士で、あらゆる森羅万象に興味があったということもあるでしょうし、何より、漫画を書くことを生涯のライフワークと決めて取り組まれたことが大きかったのだと思います。

何しろ、最後病に倒れても、頼むから原稿を描かせてくれといっていたと言いますし、有名な逸話ですが平均睡眠時間2時間!、少し寝て、コーヒー飲めば大丈夫といっていたらしいです。しかし、その分早めになくなってしまいましたが。。。

同期に近い水木しげるさんはいつも、漫画家は寝ないからしんでしまう。どんなに忙しくても眠らないといかんとおっしゃっており、本人は戦争も経験し、片腕もなくし、恐ろしいほどの多忙を極めても長生きされました。胃腸が丈夫というのもあったとは思いますが、それにしてもすごいことだなと思います。

手塚先生に話を戻しますが、私は先生の作品の中でも火の鳥はやはり別格に好きです。次はシュマリかブラックジャックでしょうか?

火の鳥の中でも特に鳳凰編。皆さんにも人気が高い話になります。

我王を通じた人生の辛さ、苦しさ、虚しさ。その上で茜丸との対比による人間の欲望のくだらなさ、しかし、しを目前にしてもそれに気づかない人間の愚かしさを説いています。

我王にはおおきく4回、自分を振り返る場面があったと思っていまして
1つは助けたてんとう虫が自分の伴侶としていてくれたことを知った時
1つは信じていたお坊さんが自分が牢屋に入れられた時にどこかにいってしまった時
1つはお坊さんが生き神となった時
1つは片腕を切り落とされた時
いずれも凄まじく心を踏み躙られる、あるいは大きく揺さぶられる出来事で、彼はこれらの出来事をしぬのではなく生きる中で何年もかけて自分の中で消化していきます。
そして、人間の本質をしり、その生き様の虚しさを知り、しかし、逆に生きるということや生あるものの美しさを知り、そして自然の大いなる美しさをすることになります。

手塚治虫は他の作品でも繰り返し、人間が作り出した人工的なものや欲望の愚かさを説いており、人間も動物であり、生き物であり、他の生物と同じくただ生きてただしぬ。そしてそれだけで素晴らしい、生まれた段階で素晴らしいということを説いている気がします。そして、残念なことに多くの人間がそのことに気づかないままもがきながら死んでいくという構図になります。

正解はありませんし、わかりません。

しかし、過去の偉人や現在でも成功者の多くの正解つ背景や人生時事情を紐解いていくと、やはりそこには苦しみや絶望の連続が感じられることがあります。それはきっともがいているからなのではないかと思います。
ただあるがまま、与えられた状況で精一杯生きていく。足るをしり、自分の中へ静寂と落ち着きを得ていく。それが良いのではないかと言われている気がしてなりません。

中にはきりひとさんかやシュマリにみられるような、爆発的な人間の生への渇望や足掻きが感動を呼ぶものもあります。また、ブッダのように、人間の営みを根底から価値を壊されるような感覚に陥る作品もあります。

おそらく人間が言語を介しコミュニケーションを取るために起こる現象に対して、色々な示唆を手塚先生は与えているのだと思っています。

火の鳥は完成をみてはないということですが、手塚先生の作品も本来は完成をみたかった作品が多々あります。

今後も手塚作品をまだ全て見たわけではないので、楽しみながら見たいと思っています。

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