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教員の働き方改革への提言(5)

「グラデーションポリシー」に基づく「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点による「適正な学習評価」をめぐって

おはようございます!
毎週ご高覧いただきありがとうございます!

めざすのは定期考査の廃止と平常点作業の見直し・削減です

定期考査に代わり、単元テストを、
平常点に代わり、パフォーマンス課題を

という訳です

先ず、定期考査に代わる「単元テスト」です

単元終了時に単元の学習内容を、教科書の副読本(問題集)、使用した授業プリントから「単元テスト」として出題します。定期考査を作問するのではなく、小テストを作成する感じです

先生方が担当する展開講座数(クラス数)で、出題範囲を任意に分け、授業内で小テストを実施するように Google Classroom を活用し実施します
採点は Excel を利用すれば、採点は不要となり採点ミスなどもなくなります

例えば、「知識・技能」評価の7割、「思考・判断・表現」評価の2割は、「単元テスト」を活用します。問題には、「知識・技能」問題であるか「思考・判断・表現」問題であるかを明示する必要があります

続いて、平常点に代わる「パフォーマンス課題」です

パフォーマンス課題」とは、リアルな文脈の中で、様々な知識やスキルを応用・総合しつつ何らかの実践を行うことを求める課題です。具体的には、レポートや新聞といった完成作品や、プレゼンテーションなどの実技・実演を評価する課題です

例えば、「地理探究」の「現代世界の地誌的考察」・単元「西アジアと中央アジア(北アフリカ)」の授業では、標準時間数3時間を7時間(若しくは8時間)とし、次の「パフォーマンス課題」を第1時授業開始時に提示します

「あなたは総合商社に勤めています

米調査機関ピュー・リサーチ・センターの予測によれば、世界のムスリム人口は2010年に約16億人で世界人口の23.2%を占め、2050年には27億6千万人で世界人口の29.7%を占めることが予測されています
欧米中心の「グローバルスタンダード」では説明しきれないイスラーム世界の社会様式は、特に日本において表面的・特徴的な部分で関心を集めるものの、言葉や文化の壁が最も大きくて理解しづらい・わかりにくい文化・社会として、「ステレオタイプ」的な見方にとどまる傾向が強くあります

ムスリムの人々にとって生活が豊かになるような商品開発のチームリーダーに指名されたあなたは、開発チームで、どのように商品開発をし、欧米中心の「グローバルスタンダード」にとらわれない、新たなビジネススタンダードモデルを構築しますか」

パフォーマンス課題はルーブリックで評価し、併せて第1時に予め生徒に提示します

最初は汎用性のある基本的なルーブリックを活用し、教科・科目で実践を積むごとにアンカー作品が増えていくので、教科・科目の教員でアンカー作品をそれぞれ評価することで単元に応じたルーブリックを作成する必要があります
SGH指定校時に私が作成した課題研究評価のルーブリック

授業では、「西アジアと中央アジア(北アフリカ)」に関する「思考・判断・表現」のための「知識」を3時間かけて身に付けていきます

第4時は、教師からの指定、若しくは生徒たちの任意で共同研究(探究・プレゼンテーション)を行う4,5名のグループを決め、中間発表会の準備に充てます

第5時は中間発表会。ワールドカフェ方式で、発表3分・質疑応答3分。5ローテまわすことができればグループ全員が他のグループに対して探究内容をプレゼンすることになります

質疑応答で気付いた課題や研究の方向性について、新たに全校生徒や官公庁、企業、JICA等へのアンケート調査や聴き取りを行ったり、モスクを訪問したり、探究の質を高めるために、本発表までに粘り強く自らの学習を調整して本番のプレゼンテーションに臨む

これこそが「主体的に学習に取り組む態度」評価で期待されていることです

第6時は、発表会に向けての準備

そして迎える第7時発表会。グループごとに、プレゼンテーション3分・質疑応答3分。予め提示したルーブリックで発表者は自己評価、聴き手による他者評価、担当教員、見学教員による教員評価を行います

「パフォーマンス課題」プレゼンテーションで、「思考・判断・表現」評価の6割と「主体的に学習に取り組む態度」評価の7割、「知識・技能」評価の3割を一体的に評価します

私は、「パフォーマンス課題」の設定は年に1回若しくは2回で良いと考えています。

グラデーションポリシーに基づき、先生方が教科・科目において1年間で身に付けるべき資質・能力を踏まえ、一番本質的な学びだと考える単元(若しくは、一番教えていて楽しい・充実感溢れる単元)を選び、そこに「パフォーマンス課題」を設定して、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価・授業改善を実践していきます

「パフォーマンス課題」取組み始めの計画・準備はかなりの労力・時間を要することになりますが、年に1回若しくは2回の実施で、教科・科目の一番本質的な学びだと考える単元、若しくは、一番教えていて楽しい・充実感が溢れる単元を選ぶことで、生徒の学びは深まりを見せ、先生方の負担感は軽減されるのではないでしょうか

「平常点」=「主体的に学習に取り組む態度」と思い込むことで生じてしまう、情意も含めた授業の取組み態度の評価やノート・プリント点検等の業務も、「パフォーマンス課題」で「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで不要となります

発表後には、個人論文・レポート・提案書・ジャーナルを書かせます
探究の今後の方向性や、新たに気付いた提案、協働のなかでの個人の頑張り・努力、等々書くためのテーマはたくさんあります

これで「思考・判断・表現」評価と「主体的に学習に取り組む態度」評価の残りの部分を一体的に評価します

但し、教科・科目による「パフォーマンス課題」の集中による生徒たちの負担を和らげるための教員間の調整が必要になります

これらの観点で、現場での研究・開発・実践・リフレクションを積み重ねること、研究者の先生方の専門性に学び、指導・助言をいただくことで、適正な学習評価として、生徒・保護者に対する説明責任を果たせるように努める必要があります

「定期考査の廃止と平常点作業の見直し・削減」はこれで可能となるはずです

本論の最終回となる次週は、まとめと高大接続改革について述べていきます

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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