見出し画像

再び「教員の働き方改革」 ~ 大阪府の取組みを例に ~(2)

おはようございます!
毎週ご高覧いただきありがとうございます!

先生方の働き方改革が叫ばれるなか、大阪府は、2024(R6)年2月に「第2次大阪府教育振興基本計画(前期事業計画)にもとづく府立学校における働き方改革の取組について」を取りまとめました
今回は、前回「今後の働き方改革の取組について」「新たな取組み」の続きについて論じていきます

今後の働き方改革の取組について」「新たな取組み」

(2)勤務間インターバルの設定

1)長時間勤務を解消するため、「年・月」単位の上限時間を
設定し、その徹底をはかってきたが、教職員の意識改革や服務
管理を更に進めるためには、「日々」の帰る時間を意識して働
くことも重要である。

2)また、ワークライフバランスの観点から、1日の勤務終了後、
翌日の勤務開始までの間に、一定時間以上の休息時間
(インターバル)を設けることで、生活時間や睡眠時間を確保
する必要がある。

1)について、私は校長在職中、できる限り「定時退勤」することを心がけました
教頭先生、首席(主幹教諭)の先生方にも18時までには退勤するように求めたのです

大阪府の「働き方改革」のお陰で、大阪府民の皆さまのご理解が深まり、外線電話は17時で繋がりません
保護者からの緊急の連絡等は、学校メールや教育庁経由で管理職に繋がるので、深刻な事案の生起や、大型台風の接近、大地震の発生等、学校に宿泊することも含めて校長が必ず学校に居るべき場合以外は、定時までに校務をやり遂げれば、学校に居続ける必要はなく、連絡を受けた時点で対応し、必要に応じて学校に戻ればよいのです

先生方の意識のなかに、「校長は17時には居なくなる」「教頭先生、首席の先生方は18時には居ない」という強いメッセージを送り続けたのです

「何かあれば管理職が居てる」と先生方が思い、実際に遅い時刻まで管理職や首席が居ると、遂々、先生方も仕事を伸ばしてしまう傾向があると、私自身の教員生活からも確信していました

先生方には定時退勤時刻後の管理職への所用を諦めてもらう環境整備が、先生方の定時退勤を少しでも促すことになるし、教頭先生、首席(主幹教諭)の先生方の「働き方改革」にも繋がるのです

2)については、管理職も含めて全教職員が個人情報を学校から持ち出す、自宅に持ち帰ることが既にできません

先生方に、持ち帰り仕事を余儀なくさせているのは「教材研究の時間」です

こちらは、教職員定数の増加=持ち授業時数の減少(教科人数が増えれば、何色も科目を持つことも解消されるでしょう)しか特効薬はありません(断言できます)

「新たな取組み」(3)(4)は割愛します

(5)会議の精選(連絡・情報共有の電子化等による会議の縮減)

‣従来から精選に取り組んできたものの、特に教員の縮減ニーズ
が大きいことから、各校の実情を踏まえつつ、改めて縮減に取り
組む必要がある。
○校長・准校長は、教職員の拘束時間を縮減し他の業務等に専念
する時間を確保する観点から、次のとおり会議の見直しを行う。
‣会議は意思決定過程において議論が必要である場合や諸課題に
ついて意見交換等を必要とする場合に限定する。
‣連絡・情報共有については、会議を開催するのではなく、
下記デジタルツールをはじめとするICTの活用によって省力
化・迅速化をはかる。
‣このほか、校内で会議の在り方を見直す機会を設ける。

新たな課題に対して学校現場ではよく「委員会」がつくられます
例えば、コロナ禍、GIGAスクール構想にともなう1人1台端末を活用したオンライン学習
箕面高校でも、オンライン学習企画委員会が、首席の先生方を中心に自主的につくられ(委員に手を挙げてくださった先生方を校長がその職に委嘱します)、委員会での学びを全体共有すべく研修やミニ研修、勉強会をタイムリーに開催してくれました

コロナ禍、一斉休業、分散登校期間、先生方には、オンライン学習でもできることは何か、対面授業でしかできないことは何か、という授業の本質に迫る問いが突き付けられました

同じことが会議にも言えそうです

ICTの活用によって省力化・迅速化すると言っても・・・・・
教員用の校務用端末は1人1台以上あるというのが文科省の言い分ですが、一体、いつの時代のPCのことを言ってるんだ、いまどきそんなスペックで・・・・・
箕面高校でも、私が在職中、貸与される生徒用端末「クロムブック」と同等品を、校長マネジメント予算で、先生方の校務用端末を少しずつ買い揃えていきました

有効活用(校務・授業等)できるだけのICT環境が整わない高校現場においては、対面でしかできない会議と、オンデマンドで用が済みそうなものとを意識的に精査していく必要を感じます

(6)学校行事の精選

‣教員の縮減ニーズが大きいものの、学校行事は学校の特色づくり
として実施している側面が強いことから、各校の実情に配慮しつつ
検討を進める必要がある。

教育は、教科教育活動と教科外教育活動の両輪で子どもの発達段階に働きかけ、人間的成長を促しはぐくむ営みです

教科外教育活動は文字通り教科教育以外の教育活動で、学校行事、学年行事、HR活動、生徒会活動、部活動等の教育活動をさします

青年期の発達段階に応じた部活動や学校行事は必要不可欠な教育活動なので、安易な削減には慎重であるべきです

「コロナ禍」の制限のあるなかで実施した学校行事の在り方が大いに参考になると思います
安易な行事の削減はあってはなりません


「新たな取組み」(7)は割愛します

(8)テレワークの検討

‣クラウド化された校務用システム(令和7年1月)や
無線・軽量化された教職員端末機(令和6-令和8年度予定)
により、職員室外への端末機の持ち出しが容易になる見込み
であるため、これにあわせてテレワークの枠組を検討する。

「コロナ禍」、大阪府教育委員会は「府立学校におけるテレワーク(在宅勤務)の実施について~「緊急事態宣言」発令の間の取扱い~」を通知し、「緊急事態宣言」発令時における業務への当面の対応として「テレワーク(在宅勤務)」を実施する、ことを認めてくれました
 
校長・准校長が、当該教職員に対して自宅での勤務命令を行うもので、学校への連絡対応や必要な会議・打合せ等の校務、個人情報を取り扱う校務、等がなければ、自宅で使用する端末を登録のうえ、積極的に先生方のテレワークを認めました(テレワーク翌日以降に簡潔な「業務報告書」の提出を義務付け)

学校でなければできない仕事がなければ、緊急事態宣言下、感染リスクのある通勤をすることは回避すべきと判断したからです

全学年授業日ではないこと、学校に在勤しなければできない校務がないこと、等の条件が満たされれば、コロナ禍明けの今日においても、先生方の働き方改革を促進する意味で、テレワークは積極的に推進すべきだと考えます


「新たな取組み」(9)は割愛します

「第2次大阪府教育振興基本計画(前期事業計画)にもとづく府立学校における働き方改革の取組について」「6 おわりに」で

「働き方改革を進めるにあたっては、なぜ忙しいのか、どの業務にどれくらいの時間がかかっているのかを客観的に把握することが重要である。教育庁としては、今回の分析で長時間勤務の主な要因となっていることが分かった部活動をはじめ、教員の勤務状況について今後も継続的に把握を行い、服務監督を行う校長・准校長が適切に取組をすすめられるよう支援していく。また、適宜、進捗を確認の上、分析結果にもとづいて新たな取組内容を検討していく。
あわせて、働き方改革の実現には、教職員のみならず、児童生徒・保護者や地域住民の協力が欠かせないことから、府立学校における取組状況について教育庁・学校のホームページ等を通じて積極的に発信していく。」

と結んでいます


本論では、大阪府教育庁「働き方改革」の取組みの進捗と展望を「第2次大阪府教育振興基本計画(前期事業計画)にもとづく府立学校における働き方改革の取組について」にみ、本論の趣旨に沿った項目を取りあげるとともに、私見を述べていきました

改めて、地方自治体や教職員の努力、生徒・保護者の理解に助けられながらの問題改善には限界があり、法改正(「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」)や財源の確保等、国の「本気の教員の働き方改革改善」施策を強く求めます

問題の抜本的改善は、
「教職員不足」の改善=「教職員定数」の抜本的改善=「教員の働き方改革」の劇的な改善
しかありません

また、校長をしていて見えることがたくさんあります
教員数だけが不足しているわけではないのです
教育委員会(教育庁)指導主事(指導系も行政も)や管理主事の圧倒的不足

学校事務職員の不足(就学支援金事務等、臨時的任用職員のてあてもしていただいていますが、事務長・主査・副主査・主事は学校マネジメント補佐もしてくれています。マネジメントがまわらない。三六協定の適正な履行に際しても、大規模工事等がはいれば(耐震、空調、大阪府の場合はブロック塀回収やトイレ改修も)週休日の出勤や時間外労働命令もおねがいしなければなりません

実習助手(大阪府では実習教員)の圧倒的不足
理科(物化生地)の実験・観察や家庭科の調理・被服等実習の準備・授業補助・後片付け等々、図書館司書業務が、基本的な校務です
私が校長を務めた高校の場合、常勤2名で、これらの業務を分担して(総ては物理的に不可能なので、例えば生物科・地学科のサポートはごめんなさい、等々)もらっています


先生方の「働き方改革」は、校長職六年間で先生方のしんどさを目の当たりにしてきた者として、経験知や既習知をもとに提言や発言をしていく使命があると考えています

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?