テーマ決めのパターン

さて、漠然とした卒論のテーマが思い浮かんだら、指導教官との面談を行うことになると思います。
私のいた研究室では、確か5月の後半に構想発表会があったので、4月に指導教官のもとへ相談に行くというパターンが多かったと思います。その時にこんなテーマでやりたいということを伝えるわけですが、まずはテーマの話をもう少し。

歴史の論文のテーマ決めパターン

私がテーマを考えるのに当たって、また他の同期のテーマを聞いていて感じたのは、大きく分けてこのような2つのタイプがあるということでした。

①テーマ先行型
②史料先行型

私は以前の記事でも書きましたが、卒論段階では①によるテーマ決定をしていました。修論はそこから少し②寄りになっていたとは思いますが…
それぞれのタイプによって話していきます。

①テーマ先行型

これは「○○時代の□□について」というように自分の興味のあるテーマから論文の構想を練るタイプです。時代じゃなくて地域というパターンもあります。

メリット:史料のどこに着目するか、が見やすく取捨選択が容易

また、古代史を例に今後話したいと思いますが、焦点が定まらないまま史料を読むのはとても辛いんです。苦労して読んでそれが今後役立つのかも見えない状況になるので。そう思うと、ある程度関係無さそうなところを斜め読み、場合によったらスルーも可能なのは気持ちが楽です。

デメリット:史料が存在している保証がない。
当たり前ですが、都合のよい史料が存在している保証はないですよね。自分の調べたいテーマについての情報が豊富な史料が仮にあっても、そんな史料はもう誰かが研究対象にしたかもしれない。と思うべきでしょう。

で、じゃあテーマ先行型で史料を見つけたい時は何をするべきか、という問題になりますが、一番手っ取り早い方法は先行研究を調べましょう。まずはciniiで新しそうなところから探っていくのが無難でしょうか。
もしくは、特定の地域を対象としたい場合は、『○○県史』(通史編・史料編)などの自治体史もいいと思います。

で、図書館とかで雑誌をコピーするとよいのですが、ここで以前の記事で伸べたことを繰り返します。
着目すべきは、その先行研究の内容は勿論のことですが、


・そこで展開されている論はどのような史料を根拠にきているのか。

ということです。ちなみに論と史料はあえてほどよく分離しておくことも無難です。(それには理由があります。)

ここで史料が見つかれば、その史料はテーマ通りの研究を進める上で、「使える史料」である可能性が高いと思います。

先行研究を集めるなかで、史料のピックアップ作業を同時にやることは大切です。

②史料先行型

 これは「『○○記』にみえる□□」というように、あらかじめ『○○記』など対象とする史料を決定し、なにかできることはないかを絞っていくやり方です。

メリット:史料上の制約で行き詰まるリスクが低い。
歴史学は史料に書いてあるという前提でしか成り立ちません。ということは、当然たくさん書かれていることほど書くネタは増えるし、書いてないことはネタになりません。

デメリット:独自性が出しにくくなるかも。
ある史料に頻出する内容が出てきていたら、大抵その話は誰かが研究していたり、自治体史に載っていたりと、ひょっとしたらすでに自明の理になってる可能性もあります。独自性を出せる保証はありません。

では、史料先行型でテーマ設定したいときには何をすればいいのでしょうか。
史料に目を通して、気になる内容があったとしましょう。
そのときは、ciniiや図書館で探すべきものは3パターンです。
a. 史料+内容の先行研究
まずはその内容そのものの先行研究を探しましょう。なければラッキーですし、あれば少し方向転換も必要になります。
b.史料そのものの研究
どんな史料を使うにも史料批判は不可欠でさ。自分で史料批判をできれば理想ですが、そこまでの水準に行けるか分かりません。だから、史料そのものがどういうものかということは抑えておいた方がいいでしょう。また、刊本になっている史料の場合は解題がついていますので、それは必ず目を通しましょう。
c.比較できる研究
比較して相対的に見るというのは研究には必要ですし、それだけでも論が固まることがあります。時代の違いは隔たりが大きくなるほど難しくなりますが、地域ごとの比較であれば、きちんと違いの要因まで分析を加えられればそれなりに体裁は整います。
たとえば、他県や他地域に関する類似研究はないかを探します。もちろん、ここでも根拠にしている史料のピックアップを忘れてはいけません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?