見出し画像

見方しだいで、その違いは“価値”に変わる 第7回ミッション研修レポート

大阪・天満橋にあるユニバーサルレストラン「ル・クロ・ド・マリアージュ」。

障害の種類や程度に関わらず、どんな人も当たり前に自分の居場所があり、のびのびと働ける「ユニバーサルな世界」がそこにありました。

見て・聞いて・食べて・お話して、ル・クロの世界観をまるごと体感した第7回ミッション研修の様子をレポートします。

(文責:ミッションパートナーあきこ)

■ル・クロとは?
大阪・京都・パリに5店舗をかまえるレストラングループ。
障害を「人と人との違い」と捉え、就労継続支援B型事業所の「ル・クロ ラボ」、かいづかいぶきヴィレッジ(グランピング)、放課後等デイサービスなど幅広い事業を手掛ける。
ル・クロ・ド・マリアージュでは様々な障害のあるスタッフ(キャスト)が料理の仕込みやサービスなどそれぞれに得意な仕事を担い、プロの料理人とともにフランス料理をお客さまに提供している。
(HP:https://www.le-clos.jp

感謝からはじまる朝~作業の様子を見学

ル・クロでは、働く皆さんを「キャスト」と呼んでいます。
朝、キャストのみなさんが集まると、最初に行われるのが「感謝の朝礼」です。

JPT社員がいるいつもと違う雰囲気のなかで始まりましたが、特に印象的だったのがキャストの方の『緊張にも感謝』という言葉。

緊張という一見ネガティブな感情にも素直に向き合い、受け入れ、ポジティブな思いに変換する姿勢には、「最初から感動した」という声も聞かれました。

朝礼のあとは、ル・クロで実際にキャストさんが働く様子を見学しました。

ル・クロでは、2階がA型、4階がB型の作業所になっています。
2階では、プロの料理人と一緒にその日のレストランで出すお料理の準備を。

4階では、2階でおこなう調理のさらに前段階となる仕込みや、ル・クログループの他のレストランやグランピング施設、様々なお取引先に卸すお料理やお菓子を作っています。

テーブルごとに完全にタスクが分かれており、キャストの皆さんがそれぞれの持ち場で真剣に作業に取り組んでいました。

扱う食材も違えばやっていることも違うのを見て、オーナーシェフの黒岩さんの「フランス料理は構築的」という言葉の意味が分かった気がしました。

お料理としてお客さまに出す前に、素材に手をかけて少しずつ加工・準備していく「工程」のようなものがある。
一皿ごとに設計図に沿って作り上げていく、そのプロセスを切り分けることで、さまざまな人が活躍できる仕事が産まれるということが腹に落ちた瞬間でした。

黒岩さんの講演


ル・クロのオーナーシェフ黒岩さんの講演は、一人ひとりの「違い」に対する愛とリスペクトで溢れていました。

黒岩さんご自身が、幼少期から「人との違い」=コンプレックスを感じながら育ったこと。
料理人になって、文化や宗教・考え方が「みんな違って当たり前」の海外で働いてきたこと。

スイスで働いたときの恩師は、働く仲間それぞれの文化や慣習の違いをけして否定せず尊重してくれた。
彼の『相手が家族ならどうするだろうかと考える』という言葉こそがユニバーサルの考え方だと思った、という黒岩さんのお話には胸を衝かれました。

自分とあまりにも違うカルチャーの人と“職場で”出会ったとき、私はそれを受け入れることができるだろうか。

自分がマジョリティだったら、あるいは上司だったら、相手に我慢を強いてしまわないだろうか。
働く仲間を「家族」と捉えることで対等に向き合い、尊重できるようになるというエピソードには、働くうえでのヒントをもらった気がしました。

もう一つ印象的だったのは、黒岩さんの「能動的に違いを探索していく姿勢」です。

“ユニバーサルはビジネスの価値を高めるもの”と語り、レストラン以外にも就労継続支援事業所やグランピングなど、さまざまな事業を手掛ける黒岩さん。

お話を聞く中で、単に「違い」を受け入れるだけではなく、その違いをどうやったら価値に変えられるか?を、ワクワクしながら考えていらっしゃるように感じました。

キャストの皆さんと和気あいあいとコミュニケーションをとる様子からは、一人ひとりの個性に興味を持ち、いい意味で面白がり、楽しんでいる印象すら受けます。

このスタンスこそが、様々な取り組みや事業を生み出すために大切であり、今の社会にとって重要なのかもしれない。
そんなヒントをもらった時間になりました。

心のこもったおもてなしで至福のランチ

講演が終わると、いよいよお料理をいただく時間です!

ル・クロでは、障害のある方もサービススタッフとしてお客さまにお料理や飲み物を運んだり、お料理の説明をしたりと接客を行います。

車いすのキャストさんが、テーブルとテーブルの間を滑るように移動しながらお料理をサーブする様子には目を奪われました。

フロアで接客にあたるキャストの皆さんは、「サービスの仕事がしたい」と自ら希望してこのお仕事をしているそうです。
様々な個性(障害)があるキャストの皆さんですが、できるかできないかではなく「どうすればできるか考えればいい」。
大切なのは、本人の「やりたい」という気持ちだというのがル・クロの考え方。

接客が好きで、フロアでの仕事を楽しんでいる気持ちがにじみ出るような心のこもったサービスに、いっそうお料理がおいしく感じられました。

私たちの共通点、そして違いとは?

お料理を頂いていると、キャストの皆さんがフロアに来て下さって、交流の時間が始まりました。

最初に成川さんから、JPTの自己紹介。
JPTの働き方の特徴は、フルリモートフルフレックスで自分に適した環境で働けること。

人間関係を働くうえでの障壁にしないために、あえて一人一業で業務をおこなうこと。

その代わり、工程の最初から最後までを基本的に1人で進めていく「フルスタックエンジニア」であること。

これを料理に例えると、成川さんいわく「JPTはフードコート」なんだそうです(笑)。

聞いているJPT社員からも「その発想はなかった」と笑みがこぼれるとともに、なんだかル・クロの皆さんに一層親近感が沸きました。

その後は、JPT社員からル・クロの皆さんに質問タイム!
キャストの皆さんが自己紹介をして下さったり、好きなお笑い芸人の話をしたり。
楽しいやりとりがたくさん生まれました。

特に素敵だと思ったのは「働く中で、ル・クロのここが好き!ここがいい!というものはありますか?」という問いに、キャストの皆さんのほぼ全てが「仲間が好き」と答えて下さったことです。

障害の有無に関わらず、職場での悩みの多くは人間関係から生まれるのではないでしょうか。

JPTでは
・自分で関わり方を調整できる=フルリモート
・チームでなくても仕事が進められる=一人一業

というやりかたで、そもそも人間関係が問題にならないような仕組みをつくっています。

いっぽう、ル・クロでは
・働く仲間を家族だと思い、尊重する
・プライベートの悩みも職場に持ち込みOKにする

という、まったく逆のベクトルでこの課題を解決していると感じました。

業種が違えば、アプローチの方法もこんなに違うんだ!と驚きましたし、一人ひとりが自分にあった仕組みや組織を選べるよう、社会全体でさまざまな選択肢をつくっていく必要があると改めて思いました。

最後に

今回ル・クロに伺ってみて、フレンチレストランという飲食業の中で様々な障害のある方が入り混じりって働いていることに衝撃を受けました。

デパートやスーパー・コンビニ・レストランなどで、障害のある方がスタッフとして接客する姿を見たことはありますか?

私は一度、つくばのスターバックスコーヒーで聴覚障害の方に接客してもらったことがあります。でも、その一度切りです。

もちろん、障害が“見えない”方も多くいらっしゃいます。
ですが、障害者が日本に7.6%いると言われる(※1)と言われるのに対してあまりにも少なすぎるのではないか?ということに気づきました。

サービスや接客の仕事は、健常者でないとできないのでしょうか。
やってはいけないのでしょうか。

けしてそうではないということを、私はル・クロで感じました。
私たちの社会に、そして日常生活に、色々なひとがいることがもっと見えるようになれば。

社会全体の価値観が代わり、誰もが対等に暮らし、働くことができる未来が実現するのではないかと感じました。

素晴らしい一日をともに過ごして下さったル・クロの皆さん、そしてJPT社員の皆さん、本当にありがとうございました!

※1:厚生労働省,「障害者福祉分野の最新の動向」,(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000918838.pdf)より

この記事が参加している募集

#多様性を考える

27,868件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?