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不要で有害な「産業保護規制」を改定し、安全保障を向上させよう

こんにちは!自由主義研究所の藤丸です😊
今回も「安全保障」に興味のある方にぜひ読んでいただきたい記事です。


米国の産業保護規制「ジョーンズ・アクト(ジョーンズ法)」
その代替案についてのケイトー研究所の論文を意訳・紹介しようと思います。

他国の話ですが、同盟国アメリカの安全保障に関する規制の話なので、
日本も大いに関係があります。


「ジョーンズ・アクト(ジョーンズ法)」と「ケイトー研究所」については、下記の記事を御覧ください。


国内産業保護政策「ジョーンズ・アクト」は、ここを直せ‼


1,保護主義によるコスト高で、かえって需要が減る💦


米国の海運産業を保護するためのジョーンズ・アクトによって、
米国の海運業界は競争から守られた結果、
非常にコストが高くなってしまった。

このような高いコスト・高い価格により、
貨物輸送の運賃が上がり、船舶の需要は減ってしまう。
つまり、国家の緊急事態に対応するために利用できる船舶が減少することになってしまうのだ。

また、米国の造船所とその熟練工は、船舶の減少によって、
保守、修理、アップグレード作業を行う機会が減少し、損害を被っている。


さらに、船舶の不足は、戦時中に政府所有の船舶と商業船舶の両方に乗船できる十分な数の船員を確保するという政策目標を挫いている。

1985 年の米国国際貿易委員会の調査では、
「米国で建造された商業船舶は、海外で建造された同程度の船舶の多くと比較して、建造にかかる時間は倍、費用は 2 倍」とされている。

2,「国産」の実態は?
  実は、米国船舶の部品・ノウハウの海外依存度は高い!


ジョーンズ・アクトの国内建造義務のせいで、
船舶は米国内で組み立てられ、全ての「船体および上部構造の主要部品」が国内で製造されなければならない。

しかし、これは船舶の他の主要部品が海外で製造できることを意味し、
実際に、しばしば海外で製造されている。
船舶の建設に使用される鋼鉄メッキでさえも、「標準的なミル形状およびサイズ」で納入されれば、外国産でもかまわないのだ

2018年にフィリー・シップヤードが納入したコンテナ船「ダニエル・K・イノウエ」はその好例だ。
ジョーンズ・アクトの適用船でありながら、
主発電機エンジンとプロペラ(韓国
操舵装置(英国
補助ボイラー(デンマーク
推進エンジン(ドイツ
マニューバリングスラスター(ノルウェー
といった外国企業からの調達部品を数多く含んでいる。

また、ジョーンズ・アクトの大型船の建造には、部品だけでなく、
海外のノウハウも頻繁に利用されている。

3,世界有数の造船国である同盟国との協力を重視しよう


ジョーンズ・アクトの論理には、
戦時中の造船・修理の必要性については、
米国の自立を重視すべきだという考えが含まれている。

しかし、このような考え方は、
米国の防衛同盟国(特に日本、韓国、NATOの一部加盟国)が
世界有数の造船国であるという事実を無視するもの
である。

同盟国には多くのヤードがあり、そのすべてが同時に収入を断ち、
アクセスを拒否すると考えるのは非現実的だ。

中国やロシアとの紛争において、
損傷した船を、太平洋や大西洋を引きずり牽引して米国に戻すのではなく、
欧州やアジアの同盟国の造船所で修理するほうがいいのではないだろうか?

4,そもそも「商船」と「軍の船」は違う


商業的に効率的な船を造る技術と、軍事作戦の支援に役立つ船を造る技術は二分化が進んでいる。

軍用船と商業船のニーズの隔たりは、
ジョーンズ・アクトの船隊の基本である米国製船舶の面で、
特に顕著に表れている。

実際、2010 年の CRS 報告書では、
過去 20 年間、米国の造船所で建造された【軍事的有用性の高い商用船】はほとんどない」と平然と述べている。
その結果、軍用輸送司令部が船舶をチャーターする必要が生じた場合、
「ほぼすべてが外国製船舶をチャーターすることになる」と報告している。

また、実際に過去の戦争では、
ジョーンズ・アクト船舶の利用は限られていた。
ペルシャ湾戦争では、海上輸送が急務であったにもかかわらず、
軍の後方支援のために、商業運航から外されたジョーンズアクト船は、
たった1隻だけだった。
その理由は、限られた数のジョーンズ・アクト船は、
国内の輸送ニーズに不可欠だったため、国内に留まる必要があったから
だ。

5,ジョーンズ・アクトの代替案


ここまで述べたように、明らかにジョーンズ・アクトは失敗作だ。しかし、米軍に十分な海上輸送能力を確保するという目的は、妥当なものである。
実際、米国の国家安全保障にとって必要なものだ。

ジョーンズ・アクトは、
訓練された船員の予備を確保する」という目的に焦点を当てることで、
国家安全保障に貢献することができる。

ジョーンズ・アクトの「過酷で異常な国内建造要件」だけでも撤廃すれば、船舶の供給と船員の需要は増加するだろう

ジョーンズ法の廃止・改定は、経済的な恩恵をもたらすだけでなく、
海事産業のかつての偉大さを取り戻し、
この国をより安全で豊かなものにするのに役立つだろう。

以下は、現在の米国船員の不足を解消し十分な数の船員を維持するための3つのアプローチである。
いずれもジョーンズ法の廃止と同時に実施することができる。

(1)民間商船予備軍の設立
米国商船は、米国の国家安全保障の中で興味深い位置を占めていて、
その戦略的価値は、米国商船大学が米国の5つの軍事大学の1つであることに示されている。
しかし、国家の安全保障にとって重要であるにもかかわらず、
米国の商船員のほとんどは軍属ではない。
彼らは民間人であり軍務に付随する義務がないため、
戦時中に従軍できる人数は不確かである。

さらに、商船員が紛争時に任務に就くことには本質的な阻害要因がある。
例えば、船員は危険な状況に身を置くことを求められるが、
退役軍人とはみなされないのが一般的である。
民間の商船員が軍事的に重要な役割を果たしているにもかかわらず、
米軍は、軍の輸送隊への参加方法や海軍情報部との情報共有方法といった
重要事項についての訓練を提供していない
のだ。

この問題を解決する一つの選択肢は、他の軍事サービスの予備役と同様に、民間の商船予備隊を設立して、商船の役割を正式なものにすることだ。
この予備役のメンバーは、新しい船舶技術やシステムに関する最新情報を得るため、必要な軍事的知識や技能を得るため、そして乗組員免許の維持のために定期的な訓練を受けることになる。
そして、戦争時や国家的緊急時に、海上輸送に必要な政府船や民間船の乗組員として召集されることがある。
戦時勤務に召集された者には、この重要な軍務の重要性に見合った退役軍人手当が提供されることになる。


(2)賃金補助の実施
商船予備軍の設立に代わるアプローチあるいは補完的なプログラムとして、戦時中や緊急時に米国船に乗船できる米国人のプールを維持するために、
米国人船員に賃金補助を提供することが考えられる。
このような補助金は、米国人船員を雇用する雇用主に支払われ、
米国人を雇用するインセンティブを高める。
このような補助金と引き換えに、雇用主は、乗組員が戦争時や国家緊急時に雇用を失うことなく米国船で勤務することを許可する義務を負う。

商船予備隊と同様にこのアプローチは、米国の海上輸送の提供において、
より公平で透明性が高い。

(3)外国人船員の戦時利用を認める
もしも、米国の船員が、
戦時中の軍と商業の両方のニーズを満たすのに十分でないならば、
外国人船員がチャーターした補助的な商業用海運船に乗務することを認めることを検討すべきだ。
そもそも外国人は米軍に入隊して兵役に就くことが許されているのだ。

また、外国人は民間人として米軍を支援してきた歴史がある。
例えば、最近では、イラクやアフガニスタンの米軍基地で働きながら、
数万人の外国人が後方支援に携わっている。

米軍物資を輸送する船舶に外国人乗組員を使用することは、前例がないわけではない。
砂漠の盾作戦と砂漠の嵐作戦を支援するための輸送努力の一環として、
数十隻の外国籍船と外国人乗組員が使用されていた。
さらに、2002 年の GAO の報告書では、「海外活動を支援する主要機器を含む展開の一環として 2001 年に海外に出荷された貨物の約 43%が外国籍船で運ばれた」と指摘している 。

しかし、懸念される問題もある。
砂漠の盾/砂漠の嵐を支援するための海上輸送活動において、
外国籍船 13 隻(177 隻中)が貨物を最終目的地に届けるのをためらったり、拒否したりした。
このような事態の可能性やその他の関連リスクを減らすため、
米軍または軍事海運司令部は、船の上級職を米国民に限定すべきだ。
また、敵対行為の開始前に、外国人船員の身元調査を行い、その適格性を確認することや、この プログラムへの参加資格を米国と防衛条約を結んでいる国の国民に限定することも考えられる。

外国人船員の利用にはリスクが伴うが、
米国人船員の利用にもリスクがないわけではない。
船員の不足は、それ自体が重大なリスク
であることを忘れてはならない。

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最後まで読んでいただいてありがとうございました😊

この記事は、下記のケイトー研究所の論文を意訳・紹介しています。

私は自由を守るためにも、安全保障の充実・抑止力の向上は重要だと思います。
そのためには、不必要で有害な保護主義規制は見直す必要があるのではないでしょうか。
今回はアメリカの規制を紹介しましたが、同様に、数多くある日本の規制について、それが本当に必要なものなのかを考え続けるべきだと思います。

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