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取締役会の研究をする上でベースとなる理論や法則

※こちらは論文ではなくマイメモ代わりです。ミスがあっても見逃してください。

取締役会の構成と社外取締役の役割に関する理論的枠組みは、経営学の研究において中心的なテーマの一つだ。取締役研究の先行研究を読んでいると出てくるキーワードはエージェンシー理論、ステークホルダー理論、資源依存理論、コーポレートガバナンス理論、スチュワードシップ理論、リソースベースドビューなどだ。これらの共通認識化されたセオリーを解説し、それらが取締役会の構成や社外取締役などとの因果関係についてどのように説明しているかを探ることが必要だが、そのためには既存のセオリーの理解も必要だ。さらに、これらの理論が経営学研究の歴史的背景の中でどのように発展してきたかにも触れる。

エージェンシー理論 Agency Theory

エージェンシー理論は、経営者(エージェント)と株主(プリンシパル)間の利益の対立を解決するためのメカニズムに関する理論だ。この理論は1970年代にマイケル・ジェンセンとウィリアム・メックリングによって提唱され、経営者が株主の利益よりも自己利益を優先する可能性があると仮定する。この結果、株主にとって不利益な意思決定が行われるリスクを指摘している。この問題を緩和するために、社外取締役が導入され、彼らは独立性を持って経営者の活動を監視し、株主の利益を守る役割を果たする。ジェンセンとメックリングの1976年の論文「Theory of the Firm: Managerial Behavior, Agency Costs and Ownership Structure」は、この分野で非常に影響力のある研究だ。社外取締役は、この理論に基づいて、経営者の行動を客観的に監視し、エージェンシーコストを削減することで、株主の利益を最大化するための重要な役割を担いる。また、社外取締役の存在は、経営者に対する監視機能を強化し、意思決定の透明性と責任性を高める効果がある。

ステークホルダー理論 Stakeholder Theory

ステークホルダー理論は、企業が株主だけでなく、従業員、顧客、地域社会などの利害関係者の利益を考慮すべきであるとする理論だ。この理論は1980年代にR. Edward Freemanによって提唱され、企業が多様なステークホルダーの利益を考慮し、そのバランスを取ることが長期的な成功につながると主張する。社外取締役は、これら多様なステークホルダーの声を取締役会に反映させることで、企業の社会的責任を果たすことに貢献する。Freemanの1984年の著書「Strategic Management: A Stakeholder Approach」は、この理論の基本文献とされている。社外取締役は、企業の意思決定プロセスにおいて多様なステークホルダーの視点を取り入れることで、企業の社会的責任(CSR)や持続可能性(ESG)を推進する。これにより、企業のレピュテーションやブランド価値を高めるとともに、長期的な成長と利益を追求するためのバランスの取れた意思決定が可能となる。

資源依存理論 Resource Dependence Theory

資源依存理論は、組織が生存と成長のために外部環境からの資源に依存しているとする理論だ。この理論は1970年代にジェフリー・フェファーとジェラルド・サランシックによって提唱された。企業は外部の資源に依存しており、その関係を管理するための戦略を必要とする。取締役会は、外部の重要な資源を持つ個人を社外取締役として迎え入れることで、企業の生存と成長を支援する。フェファーとサランシックの1978年の著書「The External Control of Organizations: A Resource Dependence Perspective」は、この理論の基礎となる研究だ。社外取締役は、その専門知識やネットワークを通じて、企業が必要とする資源(例えば、資金、人材、情報、技術など)の確保に貢献する。また、外部環境との関係を管理し、企業が外部の利害関係者との関係を効果的に構築・維持する役割を果たする。これにより、企業は外部環境の変化に柔軟に対応し、持続的な競争優位を維持することができる。

https://www.econstor.eu/bitstream/10419/78991/1/756930359.pdf

コーポレートガバナンス理論 Corporate Governance Theory

コーポレートガバナンス理論は、企業の適切な統治構造が企業価値に影響を与えるという理論だ。この理論は1990年代にエイドリアン・キャドバリーによって提唱された。企業のガバナンス構造は、透明性、公正性、責任性を確保するための枠組みだ。適切なガバナンスは、企業の長期的な成功と持続可能性を支援する。社外取締役は、取締役会の独立性を高め、企業の透明性を確保し、株主利益の保護に寄与する。キャドバリーの1992年の報告書「The Cadbury Report」は、この理論の重要な文献とされている。社外取締役は、取締役会の独立性を確保することで、経営者の行動を監視し、企業の戦略的意思決定に対する透明性と責任性を高める。また、ガバナンス構造の強化を通じて、企業のリスク管理やコンプライアンスを推進し、長期的な企業価値の向上に寄与する。

スチュワードシップ理論 Stewardship Theory

スチュワードシップ理論は、経営者が自己実現を求め、組織の利益を最大化するために努力すると仮定する理論だ。この理論は1990年代にジェームズ・H・デイビスとF・デイビッド・スチュワートマンによって提唱された。スチュワードシップ理論は、経営者が株主の利益に忠実であり、自己利益ではなく組織の利益を優先することを前提とする。この理論では、経営者と取締役会の間に信頼と協力が重要とされる。社外取締役は、経営者が組織の利益を最大化するための支援を提供し、経営者と株主間の信頼関係を構築する役割を果たする。デイビス、スチュワートマン、ドナルドソンの1997年の論文「Toward a Stewardship Theory of Management」は、この理論の基礎となる研究だ。社外取締役は、経営者と株主間の信頼関係を強化し、経営者が企業の長期的な利益を追求するための支援と指導を提供する。これにより、経営者が株主や他の利害関係者の利益を最大化するための戦略を実行しやすくなる。

リソース・ベースド・ビュー Resource-Based View, RBV

リソース・ベースド・ビュー(Resource-Based View, RBV)は、企業が競争優位を獲得するためには、独自の資源と能力を持つことが重要であるとする理論だ。この理論は1980年代にバーニーによって提唱され、企業内部の資源と能力が持続的競争優位の源泉であると主張する。企業は希少で模倣困難な資源を活用して競争優位を築くことが求められる。社外取締役は、その専門知識や経験を通じて企業の資源を強化し、持続的な競争優位の確立に貢献する。バーニーの1991年の論文「Firm Resources and Sustained Competitive Advantage」は、RBVの基礎となる重要な文献だ。社外取締役は、企業が保有する独自の資源や能力を最大限に活用するための戦略的なアドバイスを提供し、企業の競争優位を強化する。また、彼らの外部ネットワークを活用して、新たな機会を探り、企業の成長と発展を支援する。

これらの理論は、20世紀中盤から後半にかけて、経営学の研究が組織の内部構造と外部環境との関係に焦点を当てるようになる中で発展した。特に、1970年代の経済危機と企業スキャンダルを背景に、コーポレートガバナンスの重要性が高まり、社外取締役の役割が注目されるようになりた。これらの理論は、取締役会の構成や社外取締役の役割を理解するための枠組みを提供し、経営学研究における重要な貢献をしている。

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