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【一番注目の循環型農業】アクアポニックスをやってみた&施設に行ってみた!

こんにちは。
個人的に今一番注目しているのがアクアポニックスという農法です。
環境保全型農業の一種で自然界の循環の仕組みを人為的に再現したものです。
今回は半年ほど行っている自宅のアクアポニックスと先日見学に行かせてもらった神奈川県にあるアクアポニックスの施設のことを中心に書きます。

先にまとめです。

まとめ
アクアポニックスは魚の排泄物を植物の肥料として有効活用することで節水しながら無農薬野菜を作ることができる循環型農業です。
世界で深刻な「水問題」の解決の一助として期待されており乾燥地域など水資源へのアクセスが限られたエリアでの導入が進められています。
日本でも農福連携の取り組みとして取り上げられたり異業種参入が多いようですが、作ったものをどう販売していくかがこれからの課題のようです。

アクアポニックスの仕組み

アクアポニックスとは循環型の農業の1種で水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせることで魚にとって有害な糞尿を微生物の力で分解し植物の肥料として利用する農法です。

一般的に魚を飼う際は水替えを行いますが、水替えが必要な理由の1つとして魚の糞尿成分を取り除くというものがあります。
糞尿成分には魚にとって有毒なアンモニアが含まれていますが、それを微生物の力によって亜硝酸、そして硝酸へと分解し、その硝酸を含んだ水を植物へ与えることで植物の肥料となり水耕栽培に活用ができ、なおかつ水が濾過された状態で水槽に戻るため魚の養殖にも活用できるのです。

これらは自然環境であれば普通に起きていることなのですが、これを閉鎖環境でも作り出すことができるため、環境保全型農業として注目がされています。

アクアポニックスと現代農業の違い

現代農業がもたらす環境破壊

拡がった畑や田んぼを見ると「自然っていいなあ」と感じることもありますが、農業は立派な自然環境破壊行為の1つとされています。
森林伐採、土壌の塩害、過放牧、作物を運ぶための長距離輸送など、その例は色々とあるわけですが、これらには環境を保全するために必要な「循環」という考え方が欠如しています。

例えば、焼畑農業は悪のように捉えられがちですが、それ自体は昔から行われていたことです。
しかし、人口が増え、生産効率も上がると、今まで行っていた以上のサイクルで生産活動を行う必要が出てくるため、昔は十分に設けることができていた焼いた畑を寝かせて地力を回復させるための期間がどんどん短くなり、結果的に自然を無理に切り拓く環境破壊行為になってしまったのです。
もともとは焼いた畑から出た灰を肥料として利用し、別の畑を転々としながら焼いた畑の地力が戻ったら再びそこで農業を行うという循環のサイクルができていたのですが、休耕期間の減少によってそのサイクルが崩されてしまったのです。

このように、かつては循環として成り立っていた仕組みも現在の生産ペースでは維持できないという例もあります。

昔から行われていた循環環境を人為的に作る

現在の農業は種・肥料・農薬・農機など生産に必要な資材を外から来たものに頼っているため「循環」という構造ができていませんが、物流や科学技術が発達していなかった頃は、地域にあるもので全てを賄うことで循環の仕組みができていました。

今のような「科学的根拠」という考えを持ち合わせていたわけではありませんが、当時の人たちは経験則でそういった仕組みを確立させてきたのです。
株式会社アクポニさんのHPによるとアクアポニックスのルーツは1000年前にまで遡るそうです)

アクアポニックスではそのような昔から行われていた仕組みを参考に、現代の科学技術を用いることでより効率的に循環環境を作り出すことに成功していると言えます。

科学の力でプラスαの成果

アクアポニックスは現代の循環型農業として、より効率的に資源を循環利用する仕組みを整えていますが、科学の発展により昔の仕組みではできなかったこともできるようになってきているようです。

その一例が好適環境水というものです。
好適環境水は海水のうち海水魚が生きるのに必要な成分(ナトリウム、カリウム、カルシウム)のみを残して作られた特殊な水でこの水の中では海水魚も淡水魚も生きることができるのです。
人工海水の60分の1のコストで作ることができ、魚もより早くより健康に育つこの水を使ったアクアポニックスの研究は岡山の大学で行われているようです。

また、それ以外にもモーターの電力として太陽光発電を使ったり雨水を活用したりとアクアポニックスは原始的な仕組みを科学の力で定量化・法則化し、なおかつプラスαの成果を挙げています。

我が家のアクアポニックス

家でも簡単に始められる

ここまで説明してきたアクアポニックスですが、実は家でも簡単に始めることができます。
家庭用の専用キットが販売されており、それさえ買えばあとは魚と植物があれば誰でも簡単に始めることができます。
私も実際にキットを購入し始めてみました。

土の代わりにハイドロボールという粘土を高温で焼いて発泡させたボール状の石を使っているので家を汚すこともなく始めることができ、虫などの発生も防ぐことができます。

金魚とさまざまな植物でやってみた

魚は近所の金魚屋さんで購入した小赤(一般的な金魚)を3匹。
植物は元々水に浸していたアボカドの苗やスーパーで買ったパプリカの種などを植えてみました。
収穫したいとかは考えていなかったのでとりあえずその辺で手に入った植物を使っています。(アボカドもスーパーで買ったやつです)

始めて半年ほどの写真(一番伸びているのはアボカドですが、こちらはアクアポニックスを始める以前から育てています)

施設を見学してみた

株式会社アクポニさんは一般向けの見学会も行っているので、実際に施設を見学してきました。正直、まだあんまり認知度が高くないアクアポニックスですが、新しく始めてみたいと言う方が全国各地から来ていて驚きました。

シンプルで管理がしやすい

一口にアクアポニックスといっても野菜を垂直に栽培するものや、しっかりと機械を入れて水中の酸素濃度を常に測っているものなどいろいろな形態がありました。
とはいえ、栽培に使うポットなどは取り外しも非常にシンプルで、土を使わない分汚れ作業もかなり少ないので、水槽の立ち上げ(水の状態が安定して魚が住める環境になること)さえできれば管理にものすごく手間をかける必要はなさそうです。

節水率90%で乾燥地で期待の技術

アクアポニックスが始まったのはアメリカのバージン諸島という場所で、元々は乾燥地などの淡水が少ない場所で、いかに使用する水の量を抑えながら農作物を栽培できるかということを考えてできた循環型農業です。
日本は水資源に恵まれているのであまり実感がありませんが、地球上の水のうち利用できる形で存在する淡水の割合は0.8%に過ぎず、それらは飲み水以外にも工業用水や農業用水などに使われるため、人口増大や工業化が進んでいる21世紀は、20世紀の「石油の世紀」に代わり「水の世紀」と言われるほど水はシビアな問題となっています。

アクアポニックスはそういった問題への解決の一助として世界で期待されており、オーストラリア、東南アジア、中東、アフリカなどで導入や実験が盛んだそうです。

これからの課題は販売

アクアポニックスに参入する企業の9割は異業種だそうです。
その中には農福連携の取り組みとして障害者雇用のために導入されるケースもあるようです。
そんな中で株式会社アクポニさんは販売面にこれからより一層力を入れていきたいと仰っていました。
アクアポニックス自体が都市農業を想定して作られているものなので、植物工場のように大きな施設を設けて野菜を作るよりも、省スペースで高効率な作物栽培と魚の養殖ができるという特徴があり、販売はまず直売所など地域に根ざした場所で行っていくようです。

ただ、アクアポニックス自体の認知がまだ進んでいないため慣行栽培でできた野菜と差別化をして売るにはブランドの認知拡大が必要になります。
さらに養殖できる魚やできる野菜の種類も現在は限られているので、その辺りもどんどん進めば認知の拡大やブランド化も進みそうです。

また法律面での課題もあり、魚に関しては農地で養殖した魚の販売はそもそもできない地域が多く、そういった部分が改善されれば、魚は野菜よりも高く売れるのでさらに商業ベースにも乗りやすくなるのかなと思いました。(養殖の水も排水が多いようなのでこれが野菜を育てることでリサイクルできるなら養殖業者からしてもメリットが大きいです)

最後に

今回はアクアポニックスについてまとめました。

アクアポニックスは魚の排泄物を植物の肥料として有効活用することで節水しながら無農薬野菜を作ることができる循環型農業です。
世界で深刻な「水問題」の解決の一助として期待されており乾燥地域など水資源へのアクセスが限られたエリアでの導入が進められています。
日本でも農福連携の取り組みとして取り上げられたり異業種参入が多いようですが、作ったものをどう販売していくかがこれからの課題のようです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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