【直売所】もろこしフェアが凄すぎた
地方の直売所に行くと、稀にものすごい人だかりを見ることがあります。
今回は毎年行っている山梨県のある地域で開かれる、県外から多くの人を集めるあるイベントについて書きます。
普段は自然豊かな田舎
2006年に甲府市に編入合併した旧東八代郡中道町ですが、地元の方は現在でもその地域のことを中道と呼んでいます。
2000年時点で中道町の人口に占める65歳以上の割合は22.0%と、流石に甲府駅から車で30分で行ける場所にあるため限界集落というほどではありませんが、それから20年以上経った現在、高齢化はさらに進んでいることが予想できます。
古くは養蚕が盛んだったようですが、現在はとうもろこし、桃、スモモ、ブドウなどの農業が盛んになっています。
わずか2時間半で大量のとうもろこしが完売
幻のとうもろこし「きみひめ」
果物王国の山梨県の地域ということで果樹が有名なのは言わずもがなですが、この地域の農産物で一番特徴的なのは甲府市中道特産のとうもろこし「きみひめ」です。
「きみひめ」は皮の薄さと甘さが際立ち、生でも食べることができ、その甘さはメロンを超えると言われる幻のスイートコーンです。
そんな希少なとうもろこしが大放出されるのが、毎年6月に開催される「もろこしフェア」です。
中央道の甲府南ICを降りたすぐのところにある「風土記の丘農産物直売所」で行われるこのイベントには県外の方も含め、本当に多くの方がとうもろこしのためだけに来ます。
駐車場が足りず全く関係ない運送業者の敷地まで活用
直売所自体の駐車場が100台以上の車を収容できるのにも関わらず、毎年この日ばかりはそれだけでは全く足りず、隣の運送業者のスペースも駐車場として利用する必要があるほど多くの人々が集結します。
雨の中、早朝から長蛇の列
直売所のオープンは9時ですが、それよりもかなり早くの時間から多くの人が列を作っています。
私は朝3時からとうもろこし収穫作業などに追われていたため直売所へ行けたのは10時半頃ですが、今年はあいにくの雨にも関わらず朝8時の時点で200人越えの列ができていたそうです。
遠方から来ている人も
サラッと確認した限りでは宇都宮ナンバーや習志野ナンバーの車もありました。
ほかにも山梨県はもちろん、神奈川県、静岡県、東京都、埼玉県など各地のナンバープレートを見ることができ、遠方からもたくさんの方が来ていることがわかりました。
なぜこれだけ多くの人が集まるのか
大盛況のもろこし祭りですが、なぜこれだけ多くの人が来るのでしょうか。
いくつか要素に分けて考えてみました。
場所:アクセスが容易
山梨県という首都圏であることや高速道路を降りてすぐのところで開催されていることが集客のしやすさに大きく影響していると考えられます。
商品:希少な品種
とうもろこし「きみひめ」は基本的に甲府市中道でしか栽培がされていません。
人口5000人代の地域ですので、産地とは言えどもその生産量は限られており、幻のスイートコーンとなっています。
商品:味がわかりやすい
美味しいのはもちろんなのですが、良いか悪いかは別として味がわかりやすいということも青果の評価に大きく影響すると思います。
果樹は生で食べて甘いことが前提なので味がわかりやすく多くの人に伝わりやすいのですが、野菜でそのまま食べて美味しいというものは意外と少ないと思います。
野菜で代表的なのはフルーツトマトやさつまいもなどやはり生や単純加工で甘く食べることができるものですが、とうもろこしもその部類に入るので多くの人の評価を集めやすい作物と言えます。
時期:シーズンが限定的(他産地より早い)
東京で食べられるとうもろこしというのは大体が5月ごろに宮崎県から始まって、その後リレーのように産地が北上していき、最後は北海道のとうもろこしが9月頃に出荷されて終わりとなります。
中道地区の「きみひめ」は6月上旬から出回るため、比較的他産地よりも早い時期に出荷されることになります。
青果は早めの時期に出るものほど高く取引される傾向があるため、他産地より早く出荷ができる「きみひめ」などのとうもろこしは高い値段で取引をすることができるのです。
その他:他の作物で既に知名度を集めている
もろこしフェア成功の理由として大きいと考えられるのは、直売所自体が既に果物で人気になっていたということです。
とうもろこしのシーズンが始まると、スモモ、桃、ブドウと切れ目なく果物シーズンが続くため、かつて果物目当てに直売所に来たことがあり、既に美味しい農産物がある直売所として認識している方が一定数はいるのではないかと予想ができます。
もろこしフェアの日ほどではありませんが、果物シーズンになると直売所は人で活気付き、多くの果物が午前中でほとんど品切れになってしまっています。
その他:他の観光地へも行きやすい
近くにたくさんの温泉があるのがこの地域の特徴ですが、そのほかにも武田信玄ゆかりの地や信玄餅でお馴染みの桔梗屋の工場、少し足を伸ばせばワイナリーやシャトレーゼの工場なんかもあり、農作物以外のコンテンツも豊富にあります。
また、もろこしフェアではとうもろこしが午前中に完売してしまうため、かなり朝早くから待っている猛者もおり、早い時間に購入を終わらせることができれば後の予定が立てやすいのも特徴です。
地域を支えるために重要な農業
大盛況だったもろこしフェアですが、この地域の農業が安泰かと言うと全くそうではありません。
多くの地域と同じく農家の高齢化を避けることはできないことはもちろんですが、今年に限ってはとうもろこしの九州地域での出荷がまだ続き、関東の他産地とも出荷時期が被っているためとうもろこし自体の相場が例年と比べてかなり下がっているようです。
この地域は桃やブドウなどの果樹に加えて、とうもろこしもメインの収入源としている農家さんが多いため、相場の変化は大きな打撃になります。
※こういった状況を打開するためにとうもろこしの秋蒔きに挑戦している農家さんもいます。
上記のような課題はありますが、この地域には移住による新規就農者も毎年出ていますし、そういった成果が積み重ねって農業地域の優良事例となって欲しいです。
個人的に学生時代から関わりがあり、毎年訪れている場所なので今後も定点観測のような形で注目を続けられたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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