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戦争とは

世界情勢が揺れている。ウクライナに続いてパレスチナ。第三次世界大戦の予兆めいた動きにびくびくしてしまう日々が続いている。身体の緊張がほぐれない。
戦争とは、人類とは何なのかを考えずにはいられない。私たちは全員もれなく地球の一部であるというのに、互いに争うとは。生物としての本能的な生存闘争か、はたまた単なるヒトの欲か。
毎日郵便受けから新聞を取り出し広げ、また戦争のニュースか、とうんざりする。

高校時代に、わりと親しかったクラスメイトが別の科の女子とトラブルになったことがあった。teenagerによくある、お前生意気なんだよ、とかそういう類のものである。
昼休憩中いつものメンバーでお弁当をたべていると、どうも廊下が騒がしい。大勢の騒つく気配がする。そうこうしているうちに誰かが教室に駆け込んでくる。
「〇〇ちゃんが絡まれてるよ!」
隣り合って座る友人たちと顔を見合わせ、何だかよく分からないけどひとまず様子を見に行かねばと皆で席を立った。
ぞろぞろと教室を出て騒ぎの方向へ足を向けると、100人近い生徒が集まっている。その中心から聞こえ漏れる大声。人ごみを掻き分け掻き分けようやくクラスメイトの側に立つ。
エネルギー有り余る大声で罵る別の科の女子が3人、怯むこと無く言い返すクラスメイト。お互いのテンションが上がりすぎて放つ言葉は意味をなさず、何を言い争っているのかさっぱり分からない。
5分くらい、私は静かに聴いていたように思う。けれどそれが限界だった。言い争う全員に低い声で話しかけた。

「ねえ、静かにしてくれない?何やってんの」

クラスメイトの肩を持つわけでもなく、喧嘩はやめてと止めに入るでもない言動に、野次馬も含め皆がきょとんとしたのを覚えている。その場の温度が5℃くらい下がったんじゃないだろうか。

私には意味がわからなかったのだ。そこまで熱くなることに。感情的になることに。だってそうだろう。お互い譲り合わないのであれば、どんなに相手を罵ったところで事態は平行線のままだ。どこかで互いに譲歩しなければならない。そんなことも分からないのか?
分からないなら仕方ないけど、とりあえず鼓膜が痛むから、声量を下げて話してほしかった。ゆえに私が言いたかったのはそのひと声だけだったのである。
勢いを削がれた喧嘩は尻すぼみになり、そうこうしているうちに五限目のチャイムが鳴り、うやむやのまま解散となった。

あぁ、すべてが懐かしい。新聞の国際面を眺めながら思い出し笑いをしてしまう。
なんだ、昔から自分の主義主張は変わってないのか。
なぜなら、たったいま戦争記事の見出しを読んでつぶやいたのは

「いい大人のくせして何やってんの?」

だったのだから。

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