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「400字の独りごと」のまえに自己紹介を
はじめまして、Jeyです。
鳥取の小さな集落で夫と2人、古い家をセルフリフォーム(現在7年目!まだ終わらない…)しながら、猫2匹烏骨鶏4羽と共に暮らしています。
野菜を育て、卵を採り、料理で出た生ごみや鶏のふんはコンポストに。そして翌年それを庭に還す。吹けば飛ぶような小さな規模ではありますが、循環型の生活をしています。
そうした日々の生活の合間にテキスタイルを制作中。布を染めたり、直接筆で描
読みたい本が溜まっていく…
読みたい!と思って購入した書籍が溜まってしまいました…
普段は図書館で借りる読みたい本たち。なぜなら、すでに本棚から本が溢れているから。
にも関わらず、躁状態も手伝ってかリストに書いた書籍を買うモードに走っている現在。恐ろしいのは、買ったものをまだ開いてもいないのに、図書館へ通うのが止められず、借りてきた別の本を読んでしまうこと。いや、買った本を先に読もうよ…
というわけで、自分への戒めの
【400字の独りごと】氷柱と蜜柑
氷柱と蜜柑
2011年、豪雪と共に迎えた新年は近年記憶にないほど厳しい寒さで、軒先に連なる見事な氷柱が冬の弱々しい夕日に照らされている。
キンと冷えた空気の中、ほんのりオレンジ色に染まった氷柱を部屋の窓から何することもなく眺めていると、ふいに蜜柑の香りが鼻先を掠めた気がした。
幼い頃過ごした生家は昭和の典型的な日本家屋で、冬になると家じゅう底冷えがしていた。毎年冬になると祖母は蜜柑を段ボ
【400字の独りごと】 恋文
恋文
いま、なにしてる?
あなたに話したいことがたくさんあるんだ。幸せなんだ、ものすごく。このあいだ、生まれて初めて
「生きるのって楽しい」
と声に出して呟いて、たったいま自分が何を口走ったのか、理解するのにたっぷり十秒ほどかかったあとに、ものすごい勢いで「後悔」の津波が押し寄せてきたんだ。
どんな後悔かって?あの頃、ふたりのあいだに溜まっていた澱のことだよ。
後悔なんてしたことなかっ
【400字の独りごと】 夢
夢
ひどく長い夢を見た。
ずいぶん前に出ていったはずの家の中で、私は追い立てられるように荷物をまとめていた。
ここを立ち退くのは明日だから、と暗い顔で男が言う。部屋にはそこらじゅうにまだ大切なものが残っていて、それらを手当たり次第に袋に入れていく。ガラスのペンギン、古びた写真立て、昔集めていた四つ葉のクローバーの押し花。どれもうっすらと埃をかぶっていて、けれどひとつひとつを拭いている暇は
【400字の独りごと】記憶
記憶
2011年3月12日、わたしは日本海に面した浜辺で海をぼんやりと眺めていた。東日本大震災の翌日のことである。
約束していたデートの行き先を海と決めていたのは地震が起こる前日だった。なぜ海に行きたかったのか、震災直後どうしてデートを中止しなかったのか、今となっては覚えていない。被災地の衝撃的な映像を目の当たりにし、どこか感情のスイッチが壊れていたのかもしれない。
津波が起きたあの海と
【400字の独りごと】 記憶をもたない女
記憶を持たない女
女は、メモをとる。
昨日したこと、さっきやったこと、今すること、これからすべきことを、ひたすら紙に書き記す。
「今」以前と「今」以降は、いつもうまく繋がってくれず、記憶は常にさらさらと流されていく。
あるのは「今」の感情だけで、信じられるのは「今」立っている場所だけで、かつて栄えた遺跡のように、幸福も安定も希望も、残像が閉じたまぶたの裏におぼろげに映る。
ちいさな文