【映画雑記】岸田森の「エクソシスト 地上波吹替版」は本当にカッコいいぜ。
岸田森は最高だ。カッコいい。
2018年夏、その岸田森が声優を努めた「エクソシスト 日本語吹替日本初放映版」をムービープラスで観ることができました。
「エクソシスト」は今まで字幕でしか見ていなかった。吹替で見る必要を感じなかったからだけど、さすがに岸田森が悩める神父を演じる「エクソシスト」があるならそりゃ見るしかない。だって、岸田森だもの。
「エクソシスト」はホラー嫌いにも有名で、オカルトホラーの金字塔という評価はゆるぎない。自分のような遅れてきたファンは、初見の時点で既に基本的な作品情報は頭にしっかり入っている状態だからどっちかというと「これがあの!?」という答え合わせ感覚で見ていた。吹替という形式で見させてもらってまた違う印象を持った。吹替は字幕では字数制限で省かれる情報が補足されているし、何より声優の演技が映画の魅力を増すように感じるときもある。
悪魔に憑かれる少女、リーガンの冨永み~な(のちのカツオ)。最近は洋画の吹替にもアニメ声が侵出してきていて、辟易するときがあるが、当時14歳の彼女がボソッと地声で放つ「お前は宇宙で死ぬ」が最高でした。
リーガンの母、クリスの中西妙子。中西さんの演技で初めて「あ、これは難病もの映画でもあったんだ」と気づきました。精神科医に見放され、悪魔祓いに頼るしかなくなったときの泣き崩れ方はシングルマザーの苦悩がよく出てますし、クライマックスの震える声で静かに言う「あの子、死ぬんですか?」は鳥肌ものですね。そうか、だから「震える舌」はホラー映画になってしまったのか。
そしてもちろん岸田森。悩める神父、カラス役と聞いて見る前からはまり過ぎだろとは思ってましたが、想像以上にはまってました。クリスに悪魔祓いを相談されるところで、焦りつつ冷静になるよう説得するところ。字幕だとこの「焦る」が伝わってこなかった。悪魔祓いの死闘の最中、母の死に対するトラウマを悪魔にねちねちとつけこまれ、取り乱して「お前はママじゃないッ!!」と絶叫するとこなんか最高でしたね。先述の「あの子、死ぬんですか?」に対し答える「いや!」の決意のこもった感じなんかほんとにいい。
声優さんたちの熱演もさることながら、字幕で頭に入っていた台詞が、そうきたかーと唸らされるとこもいくつかあった。見た人はわかると思うけど、世の親たちを震え上がらせた「キリストにファックさせろ!」のシーン。母親に怪力でビンタくらわせたのち、頭がグリッと後ろを向いて死んだ(リーガンに殺された?)登場人物の声で話す。原語では”Do you know what she did ? your cunting daughter ?"。いや、これだけでもすげえ言い方ですけど、字幕だと「お前の娘は、このバークに何をしたと思う」という、娘が人を殺したのではないかという疑念をストレートに煽る台詞となってました。これが今回見た吹替だとものすごく上から目線で憐れむような言い方で「見たか?あられもない姿を・・・お前の娘もしようがないな・・・」、これはなかなかですよ!気になってブルーレイに入っている2001年収録の吹替で同シーンを見たら、恫喝するような言い方で「お前の娘を見たか!?最低のメス豚だな!!」と三流のAVみたいなこというもんでこれはこれでありかなと吹いてしまいました。また、悪魔の声をやっているのが飯塚昭三で、モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズとか戦隊ものの敵役とかで有名だけど、思いっきり宇宙刑事ギャバンのボスみたいな飯塚昭三テイスト。嫌な人もいるかもだけど、自分ははまりました。ちなみにカラス神父の親友のダイアー神父役の方がノンクレジットでウィキペディアでもわからない。すごいいい演技だったので誰なのか知りたいぜ。
ムービープラスで発掘された吹替音源は、間をおいてブルーレイがリリースされる作品が多い。滝田裕介版「ジョーズ」、羽佐間道夫版「ミッドナイトラン」。ただ、あれから一年経ってまだリリースの気配がない。何やってんだよ、ワーナー。