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【映画雑記】世の中には2種類の人間がいる。「ゆきゆきて神軍」を観た人と観ていない人だ。

「ゆきゆきて神軍」。

 スキモノは絶対に見ている超有名ドキュメンタリー映画ですが。なんで今まで見ていなかったのだろうと思うくらい滅茶苦茶面白かったっす。

 サブカル界隈でクソ有名な元軍人のキチガイアナーキスト、aka街角のテロリストである奥崎謙三という人物が終戦のどさくさの中で起こったとされる上官による部下銃殺を、映画のキャッチコピー「知らぬ存ぜぬは許しません」を地で行く大迷惑な行動力で糾弾しまくります。元上官の家に押しかけ、時には一方的で破綻した議論、時には病人相手でも馬乗りになって殴りかかるリーアム・ニーソンも真っ青になる俊敏性で相手を圧倒する一大アクション巨編です。

 怪物級の自己顕示欲と自己演出で、突然の訪問で不意を突かれた素人相手に言いたいこと言いまくるんですが、何せ行動原理が「知らぬ存ぜぬは許しません!!」なのでとにかく自分の納得のいく答え(そんなものはないのだが)が得られるまでは絶対に相手を許さない。画面に映っているのは多分にカメラを意識した「奥崎謙三」を演じている奥崎謙三。正直、途中から辟易してくる笑。言い分もやり方も完全に間違っている彼はついに勝手に演出の段取りを整えだしたりあまりのクセの強さから映画を乗っ取ってしまいますが、それを記録し一本の映画作品にまとめあげた原一男の手綱捌きも相当なもんだ。「企画:今村昌平」というのも納得。事実として知っていましたが、クライマックスのために行ったニューギニアロケが、インドネシア政府にフィルムを全没収されて、そうこうしているうちに映画とは全く関係ないとこで奥崎が元上官の息子に改造銃で発砲、殺人未遂で逮捕、さらに追い打ちをかけるように内助の功で奥崎を支え続けてきた奥さんが死去!しかもそれが最後の3分程度で駆け足で流れてエンドロールというふんだりけったりな爆裂オチ連発も見事でした。

 原一男監督自身がまとめた書籍、「ゆきゆきて神軍 製作ノート」も映画とセットで読むべき凄まじい本なので是非!インドネシアロケの全貌が文章で明かされるのですが、口では立派なことを言いながらどうしようもないトラブルを起こしまくって監督を絶望の淵に叩き落とす奥崎謙三の非道っぷりがよくわかります。

 写真は、世界に変革をもたらす暴力ならいくらでも行使します!と豪語する奥崎謙三と、その暴力から相手をかばおうとして脛を大怪我した奥崎の奥さん。

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