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アートに関するメモ(2) 【美術史】

本メモはアートの基礎的な内容に関するメモです。


1. はじめに 5項目

1-1. 現代美術は何が何だかわからない、子供のいたずら書きみたい
…世界が生み出した認識で自分の認識が固定されているからでは?
これはこうだよね
→ヨーロッパでの文化・社会認識を知ろう、その上でメッセージがないと言えるかどうか
→わからないは 2 種類、何が描かれているのか、どんなメッセージがあるのか
→わかると思っている絵画についてわかっているのか?
描かれているものとメッセージが密接しているとは限らない
→わからないで片付けるか、一旦近づこうとするか、人間の接し方が出るのでは?
→まずヨーロッパ・日本での考え方の違いを考える


1-2. ヨーロッパのアートは主観
…人間が自然を切りとって作る人工のもの


1-3. 日本のアートは客観
…人間と自然と調和して作る自然のもの


1-4. 世界は◯→□
…人間の視覚で見た世界は◯
→解釈して説明された世界は□、建築の装飾・窓
→絵画・テレビ・パソコン


1-5. タイトル
…最初に出会う解釈、差別化、説明


2. 古代ギリシャ美術 7項目

…前1000 年〜前1世紀
「古典」といえばこれ、今でも芸術の基準、王道がうまれる

2-1. 幾何学様式期
…コンパスで円弧や直線を組み合わせる


2-2. アルカイック期
・いかに静止像に動きを与えるか、神殿の奉納用、死者の墓像、個性は表現されない
・ドーリス式、力強くたくましい、男性的
・イオニア式、繊細で優雅な、女性的
・アルカイックスマイル、ぎこちなさを残しながらも生命を表現
体を正面からしか捉えていない


2-3. 【瀕死の戦士】


2-4. クラシック期
・端正な顔立ちや肉体と感情を抑えた表情、人間らしさではなく完全な神の尊さを表す
・理想的な人体の比率が考案される、完全な肉体を表現するには現実のモデルを写してもダメ
・コントラポスト、片足に重心をかけることで自然になったポーズ
逆 S 字、リラックス


2-5. 【クリティオスの少年】
・芸術における最初の美しい裸体像、古典の基準作


2-6. ヘレニズム期
・東西文化が融合しギリシャ世界が拡大、生活が向上し万人用から個人用へ、より人間的らしさを
・ヘレニズム的、激しい動きや感情を表す、バロック的


2-7. 【ミロのヴィーナス】


3. 古代ローマ美術 5項目

…前5世紀〜4世紀
古代ギリシャ美術のコピー + イタリア半島エルトリア人の美術

3-1. エルトリア美術
・エルトリア人は信心深い、葬祭用の美術品が多い
・自然主義的、享楽的で陰鬱さがなく、見たままの形を残そうとする
・テラコッタ像、力強い肉体を持ち理想化されていない像


3-2. ローマ美術
・優秀なギリシャの職人がパトロンを求めローマに移る、ギリシャ美術のコピーが増えた
・歴史浮彫彫刻や肖像彫刻は写実的、誰の像か・いつの出来事かを特定するため
・主要人物や目のみを強調する、感情をもっと強く伝えよう、表現主義へ変化


3-3. 【ディオニュソスの秘儀】
・噴火によって埋没したポンペイ遺跡の壁画


3-4. 【エウティケスのミイラ肖像画】
・エジプトではエンカウスティック(ロウに敷材を混ぜた画材)を用いた肖像画が描かれた


ホルツィウス

3-5. 【ベルヴェデーレのアポロ】
・ルネサンスの芸術家が参照した古典美術、古典美のアイコンとして崇拝される
・ローマ時代の大理石による彫刻、高貴なシンプルさ・静かなる偉大さ


4. 初期キリスト教美術 3項目

…2世紀〜5世紀
キリスト教が広まりつつあった頃の美術
西では初期中世美術へ、東ではビザンティン美術へ
→ローマ帝国の政情不安定と入れ替わるようにキリスト教が浸透する
→肉体美・現世的な美術よりも救い主・来世的な美術を求めるようになった


4-1. キリスト教公認前
・キリスト教徒が迫害されたため密やかに祈る
・カタコンベ、地下墓所、集会
・モノグラム、寓意的人物や暗示的表現

→異教のテーマが描かれた絵も聖書になぞらえたものであった
・羊飼い=キリスト、オランス=魂の救済、泉=教会、鳩=信者


4-2. キリスト教公認後
・豪華に布教活動、大規模な教会堂の造営
・写実的な人物や三次元的奥行きを表すことに関心がなく建築空間に合わせて画面が構成された


4-3. 【サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂】
・外観は現実の地上界、質素な石・レンガ
・内観は霊的な天上界、高価な大理石・色ガラス・金
・天井や壁に聖書のシーンがモザイクで描かれる、文盲の信者のため
・絵画上段は受胎告知、絵画中段はマギの礼拝、絵画下段は幼児虐殺


5. 初期中世美術 5項目

…2世紀〜10世紀
キリスト教美術 + ケルト文化・ゲルマン文化、物質量感
→西ローマ帝国滅亡後では多民族、多地域でキリスト教化が進んだ

5-1. ケルト民族のキリスト教化
・三大福音書写本などの装飾写本・修道院、ケルト民族独特の装飾的・抽象的な感覚


5-2. 【ケルズの書】


5-3. メロヴィング王朝
・ゲルマン民族の大移動後、フランク王国のクローヴィスがメロヴィング王朝を開く
・クロワゾネ技法の貴金属工芸品や固有の蛮族趣味を反映、鳥獣や魚がモチーフが好まれる


5-4. カロリング王朝
・最盛期、ヘレニズム的ではなくキリスト教化されたローマ末期的
・カロリング・ルネサンス、西ローマ帝国の威光を蘇らせようという古代文芸復興
・写本挿絵は人物のモチーフが中心となる
・礼拝堂はビザンティン的な非物質量感ではなくローマ的な物質量感を表す


5-5. オットー王朝
・ドイツ中心に形成、カロリング・ルネサンスとビザンティンの伝統を融合させた
・ケルン派、動きと軽い色彩、暖かい人間味と敬虔な宗教性
・ライヒェナウ派、大げさな身振りと金地、表現主義的な写本


6. ビザンティン美術 4項目

…5世紀後半〜15世紀
古代ギリシャ美術 + キリスト教美術 + 古代ペルシア文化、非物質量感
→コンスタンティヌス大帝のローマ遷都
→ローマの東西対立
→西ローマ帝国滅亡
→ビザンティン帝国として勢力を強める、皇帝は古代ペルシアからの皇帝で神とした

6-1. 前期
…5 世紀後半〜8世紀
・宮廷儀礼的な雰囲気、皇帝とキリスト教の一体化
・人物は正面向き、動きを排除した左右対称構図、超越的、精神的
・イコン、自宅での礼拝用聖人画、崇拝


6-2. 中期
…8世紀〜13世紀中頃
・イコノクラスム、偶像破壊運動
偶像崇拝(神を人間にして崇拝)はいけないとされ破壊

→形式ばったものが多い、リアルな表現は偶像と言われる、自由な表現は服のひだのみ
・神のポーズや教会のどこにどの図像を描くかを気にする
・フレスコ画、砂と石灰を混ぜて作ったモルタルで壁を塗りその上に顔料で描く
・金地の背景、黒くて太い輪郭線、服のひだの強調による鮮明で力強い印象


6-3. 後期
…13 世紀中頃〜15世紀
・洗練され表現に目覚める、強い感情表現、擬古典的な人物表現
・ローマ帝国滅亡後はビザンティン美術はキリスト正教の盛んな地域に残る
・マニエリスム的、小さい頭、長い体、自由な動き


6-4. 【聖母の嘆き】


7. ロマネスク美術 3項目

…10 世紀後半〜12 世紀
古代ローマ風の美術、山の美術、建築に付随した彫刻
→十字軍や聖遺物崇拝で巡礼者が増えヨーロッパの文化交流が盛んになる
→各地の素朴で独自な文化が関連、ロマネスク様式が形成される

7-1. 【聖ピエール修道院:最後の審判】


7-2. 【ピサの大聖堂】
・ロマネスク建築、修道院が中心、重厚で立派
・天井、木造から石造に変わる、アーケード型天井が定番となる
・彫刻、境界装飾はモザイクから浮き彫り彫刻へ
枠の法則に則り建物のスペースに合わせる

→他の神話がモチーフ 、他民族の巡礼者のため、引き伸ばされた身体、写本挿絵を手本にした
・壁画、モザイクからフレスコへ、威厳があり超越的


7-3. 【ジローナのベアトゥス写本】
・モサラベ様式、イスラム教とキリスト教が混ざる、強烈な色彩と大胆な構成


8. ゴシック美術 4項目

…10世紀〜14世紀
ゴート族の美術、都市の美術、建築と彫刻のハーモニー、田舎のという意味

8-1. 【ケルン大聖堂】
・聖堂、壮大・高い塔・大きい窓
王権は神より授けられたと視覚的に印象付け身近に感じさせる

・ステンドグラス、幻想的、神の光をより身近に感じさせる
文盲の人々にとって目で読む聖書

・彫刻、威厳に満ちた神より慈愛に満ちた聖母が好まれる、S 字の姿勢と流れるような衣、優雅さ


ジャン・ピュセル

…イタリアのシエナ派の影響を受け北方初の空間表現を試みる

8-2. 【ジャンヌ・テヴルーの時祷書、受胎告知】
・写本、流れるような線・華麗な色彩で優雅さを表す、制作が町工房へ移る


ジョット・ディ・ボンドーネ(ジオット)

…プレルネサンス、建築家主体の芸術を画家主体の芸術へ変える、絵画の時代の出発点
→生きている人間をありのままに写生するという方法で優れた絵画の技術を蘇らせる

8-3. 【荘厳の聖母】
・中世的なビザンティン様式の拘束から脱し 3 次元の空間を作り上げる
・師匠であるチマブーエを乗り越えた結果
・美術の中心はイタリアからフランスへ
→その中でイタリアでは新しい市民社会が生まれる、新しい表現も生まれる
→人間的で自然な表現の聖母を描く、優美で繊細な装飾


8-4. 【哀悼(受難伝より)】
・聖史劇、ドラマ的な要素を絵画に盛り込む、ペストが流行した際に始まる
→画面の寸法に合わせて小型の建物を描く、劇を見るように視線を移動させて楽しめる
・身体全体を使って感情を表現、深い悲しみ
→中央の人物は両手を広げる、右端の人物は両手を組んで物思いに耽る、天使たちはもがく


9. 国際ゴシック美術 3項目

…4世紀〜15世紀
フランスゴシック美術の優雅・洗練 + イタリアゴシック美術の写実・装飾

◯フランス

・フランコ・フラマン派、フランスゴシックに細密描写・写実表現・風景画を加える

ランブール兄弟

9-2. 【ペリー公のいとも豪華な時祷書】


◯イタリア

ピサネッロ

…卓越した観察力・繊細な描写力

9-3. 【エステ家の公女】


10. ルネサンス美術 40項目

…15世紀〜16世紀
古典(写実的・理想的調和) + 科学(遠近法・解剖学・幾何学)
→古代ギリシア美術・古代ローマ美術いいね、ただ模倣するわけではない

初期ルネサンス美術

…15世紀
・死後よりも現実を優先、現実=苦しみ を耐えたものが天国へ
・フィレンツェが中心、富と活力、科学に興味を持つ、個性・人格を尊重
→自由を守ろうとする、メディチ家を中心に芸術家のサークルができる


フィリッポ・ブルネッレスキ

…建築家という仕事を生み出した

10-2. 【サンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂】
・建築、人間的規模が好まれる、古典的要素を取り入れた堂々とした力強いものも現れた


ドナテッロ

…コントラポストを自分のものにするだけでなく肉体の持つ美しさを再生
→解剖学的なリアリズムによりアトリビュートを排除、生々しい聖人像を演出

10-3. 【ダヴィデ】
・古来初の裸体
・彫刻、写実性が追及されコントラポストにより自ら立っている安定感がある


10-4. 【マグダラのマリア】


フラ・アンジェリコ

…優美で甘美、合理的空間、現実味ある天上界、立体表現よりも内面性の表現にひたすら向き合う

10-5. 【受胎告知】
・絵画、遠近法・解剖学による生々しさ、明暗法による重量感
『立場が変われば見える景色も変わる』


10-6. 【最後の審判】
『すべて自業自得、自己を見失わなければ神は微笑む』


サンドロ・ボッティチェリ

10-7. 【ヴィーナスの誕生】
・影と虚無感、アネモネ(愛の儚さ)
『自分に不誠実でいる限りモラトリアムは終わらない、自分を受け入れよ』


北方ルネサンス

…15世紀〜16世紀
・聖書の世界を日常生活で展開、写実的、人間の尊厳を確立
→ゴシック様式が残る北方で宗教改革による人文主義が浸透し個人様式を生む
→ルネサンスからバロックへ、古代ギリシャ美術・古代ローマ美術を超えたい

◯初期フランドル

…文化の中心はフランドルへ、油彩画の技法の発達によって細密描写が可能となる
→貿易でイタリアにもたらされる、アルス・ノヴァ

ロベルト・カンピン

10-8. 【メロード祭壇画】
・中央は受胎告知、本がはためき蝋燭が消える、百合・タオルはマリアの純潔、書物は叡智
・悪魔の鼠取り、アウグスティヌス、マリアが子供を宿すことはないと悪魔を騙す
・日常風景があることで受胎告知が現実的なものとして受け止められる
・急激な遠近法で床は傾斜、イタリアの一点透視図法を知らなかった
・2 つの光源、登場人物の顔には左から光が当たる、衣服には正面から光が当たる
→イリュージョンではなく実際に見た世界を再現しようとする
・左は階段と入り口の扉を描くことで空間的に結び付けられている、イリュージョナルな働き
・右は額縁が空間を隔てる壁になっている


ロヒール・ファン・デル・ウェイデン

…市井の画家、感情に訴える宗教画、感情の追体験で信仰の力を与える

10-9. 【十字架降下】
・カンピンとの合作、箱型の舞台設定、彩色彫刻のように人物を配置した構成
・マグダラのマリア・イエス・聖ヨハネ・聖アグネスはロヒール、細身で柔らかい描写
・聖ニコデモ・聖ヴェロニカ・マリアはカンピン、周囲から区切れていて硬い描写、彫塑性


ヒューベルト・ファン・エイク
ヤン・ファン・エイク

10-10. 【ヘント祭壇画】
・ヤンの変更によりマリアのいる室内は天井が低くなる
→狭さを解消するために 4 つのパネルを突き通る 1 つの空間にまとめる、
中央の 2 枚は何も置かない広々とした床と市内を見渡す窓だけを描く
・画面の外の 1 つの光源から作品に向かって光が当たる、床面に額縁の影が斜めに落ちている
→額縁は画面空間と現実空間を物理的に分かちながら室内の柱の役割も果たす
鑑賞者と絵画の登場人物が同じ空間にいるような感じ、単なる絵画の保護材ではなくなる


ヤン・ファン・エイク

…宮廷画家、完璧な細密描写により感情的なものを排除
完璧な質感表現により時間を超越

10-11. 【アルノルフィーニ夫妻の肖像】
・お互いを見つめてはいないが神秘的な絆で結ばれている、持参金ファンド、娘が多いと修道院へ
・左右対称な構図、厳粛な雰囲気、シャンデリア・鏡・犬をつなぐ中心線で強調
・結婚式に司祭がいない、秘跡だったため
→内縁関係であり一方が結婚を否定するという厄介ごとが生じる、司祭と仲人が必要
・肖像と物語が融合できる・世俗と聖が融合できることを証明、蝋燭は神の叡智、神が見ている、
果実は無垢、アダムとイヴ、彫刻は安産
・瞳や鏡に映る像の始まり、鏡には受難伝が描かれる、画家と弟子が映る


10-12. 【宰相ロランの聖母】
・宰相は現実の人間として写実的
聖母は人間を超えたものとして理想的


フーホー・ファン・デル・フース

10-13. 【羊飼いの礼拝】
・生まれたイエスを早く見ようと駆け込む羊飼い、今までにないスピード感を表現
・特異点なのは最前列で緑のカーテンを弾いて場面を開示する人物がいること
→現実の場面か演劇の場面かわからなくなる中で錯覚がさらに増す
・右の男性は何かを語りかけてくる、狂気に満ちた眼差し、発狂して死ぬ前、ヘント祭壇画を見てファン・エイク兄弟を超えることができないと悟る


◯後期フランドル

…ロマニスト、イタリアを手本としルネサンス美術を取り入れようとする

ヒエロニムス・ボッス

…自然でも古典でもない独自の世界観、寓意が込められたブラックユーモア、愚かさ・虚しさ

10-14. 【石の切除手術】
・作中のフクロウは自身を表す(昼は怠け者、夜は賢者)


ピーテル・ブリューゲル

…貴族・商人ではなく風景・静物・風俗という現世的なものを描く
150 年続く画家一族

10-15. 【子供の遊び】
・人物がシミのように画面に散らばる、視線は一点に集中できず全体を捉えられない、
子供だとわかっても集中は途切れて画面全体の混沌に引き戻される
・町は遠近法で奥行きがあるものの子供たちにより平面性が強調される、
いずれもそれ自体で完結し独立しているため無秩序に描かれているように見える
『どんなに貧しくても遊ぶことはできる』


10-16. 【雪の狩人】
・世界風景、人物が小さく描かれる、今までは風景とは物語の背景に過ぎなかった
・写実的だが場所を特定できない、あらゆる要素が盛り込まれる、水墨画
→現実の村の風俗・旅行で見た風景の記憶・中世的な世界観を組み合わせる
・人間の営みで季節を表現するのではなく風景で季節を表現し始める


10-17. 【十字架を担うキリスト】
・イエスの処刑前を描く、今までは処刑後が描かれていた、悲しみが予告される
・人物の赤いシミ、画面中央にイエスを発見しづらい
・地面にも赤いシミ、これから槍で突かれるイエスの肌を象徴、
ぬかるみにはまる場面は刃物で切られて血を流しているように見えてくる
・エブストルフの世界地図、中世的世界観の地図、世界はイエスの身体
→世界風景のパノラマを作り出しながらその世界はイエスの犠牲によって成り立つと信じていた


10-18. 【イカロスの墜落のある風景】
・3人ともイカロスの墜落を必死にみないように
『無関心は1番の解決策であり絶望の始まりでもある』


◯ドイツ

…ダンスマカーブル、死の舞踏、メメントモリ(死を思え)
→疫病・飢餓・動乱で社会は不安で行き詰まり骸骨が人間に忍び寄って最後の審判を告げる

ハンス・ホルバイン

…小道具で身分や心境を表す

10-19. 【死の舞踏(連作)】


10-20. 【大使たち】
・宝石(地位の高さ)、科学道具(教養がある)、弦が切れる(対話できない)、キリスト(政教の混合)
『いつか死ぬのなら悔いのない選択をしよう』


マティアス・グリューネヴァルト

…ゴシックの名残、ヴェネツィア派に学んだ色彩、劇的な感情表現や平面的構成

10-21. 【キリストの磔刑】


アルブレヒト・デューラー

…ゴシックの名残、北方初の理想的プロポーション、シワやシミさえ見逃さない写実描写

10-22. 【自画像】
・木版画・銅版画、大量印刷の時代となり、誰でも版画で見れるようになる
・自分をキリストになぞらえる、自分を神のような芸術家とみなしているのではない、形から入る
・顧客にこの自画像を見せることで実力を証明できた、500 年美しく保つと保証すると言っていた


10-23. 【ばったのいる聖家族】
・版画を芸術の域にまで高める
→ラファエロはマルカントニオにデューラーの版画を徹底的に研究させ自分の初期作品を版画化
→初の著作権裁判、マルカントニオはデューラーの版画の偽物を販売して訴訟を起こされる
・頬杖をつく男性・衣服が下スレスレ・丘が奥に連なる・木々の遠近法、ヘールトヘンから着想


10-24. 【メランコリアⅠ】
・メランコリーが主なテーマ
・左のシミは地図・顔などに見える、有翼の人物がドクロを見つめて憂鬱になっているのか
・画面内に潜在的イメージが認められるか否か、潜在的イメージを見出す
→人面岩・枕の素描に顔のようなもの、人間は顔を見出しやすい
・身体比例の研究、ダヴィンチも、ウィトルウィウス的人体


盛期ルネサンス

…16世紀初め、1500年〜1530年のわずか30年
3 大巨匠、古典と自然を凌駕し完成された作品が多い
→ルネサンスからバロックへ、古代ギリシャ美術・古代ローマ美術を超えたい

レオナルド・ダ・ヴィンチ

…世界一有名な絵を描いた、絵の中にいるような臨場感
主役に目が行く構図とテーマが一致

10-25. 【モナ・リザ】
・スクマート、光の屈折による色の変化で遠近感を表現するため絵具を薄く塗り重ねてぼかす
・いいとこの奥様だけど貴族ではない人が描かれたのはこの時代から
・盗まれたことがある、ピカソが容疑者の1人になる、ビビって手が震えてボタンをはめるのが大変だった
・笑ってない説、左半分は正面、パーツパーツを見ると無表情、そのパーツが組み合わさって微笑みという表情が生まれる、キュビスムと構造が同じ


10-26. 【最後の晩餐】
・ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の壁画、身体表現の多様性
→腕が作る表情、親指が外を向く回外、親指が内側を向く回内、平行だった骨がクロスする、左側は回内、キリストは左が回内・右が回外、右側は回外
・復元されたキリストの顔やばい、裏切り者はどこに?
『100人いれば解釈は100 通り、ただ真実はいつも1つ』


10-27. 【アンギアーリの戦い】
・ドーリアの板絵、ドーリア家が所有、本物か論争
・キリスト教的終末論、世界は滅ぶかもしれない、ドクロが描かれる、メメントモリ
・画面内に潜在的イメージが認められるか否か、潜在的イメージを見出す
→デューラーとの交流の記録はないが同じような方法で作品の本当の意味を伝えようとする、イタリアとドイツで美術革命が同時に起きていた


ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ

…世界一有名な天井画を描いた、均整と調和を主眼とする芸術が開花、フィレンツェからローマへ

10-28. 【アダムの創造】
・E.T. のモデル


10-29. 【ダヴィデ】
・プラトン主義、彫刻とは石に閉じ込められた魂の意思の開放、余計なものを削ると現れる


ラファエロ・サンティ

…世界一有名な天使を描いた、聖母の画家、ゲーテやニーチェが賞賛
→人物表現の力強さはミケランジェロ、画面全体のバランスはダヴィンチ
→古典を自分のものにした上で構成や技術を調和させ絵の中で演出をしてもよいと考える

10-30. 【システィーナの聖母】
・未来への怯え、美の規範、十字架の構図、クリスチャンでない鑑賞者への求心力がすごい
・ユリウス 2 世から注文を受ける
・シクストゥス 2 世は鑑賞者を指差す、聖母に降りてくれるよう願っているのか、
・天使は侵入しないように居座っているよう、緑のカーテンで劇的な効果を高める
→絵画空間と現実空間は一続きだが境界を超えて世界に入り込むことはできない


10-31. 【ブリッジウォーターの聖母】
・幼児イエスの伸びた身体はミケランジェロから着想を受ける、視覚的記憶力・統合力
→前の世代・同じ世代の画家から最良の部分を引き出し手本の画家を凌駕する
→後の世代の画家はラファエロの研究から始める
・ミケランジェロはフィレンツェではラファエロを可愛がっていたがローマではライバル視、
システィーナ礼拝堂でこっそり見る、ブラマンテの協力


10-32. 【神殿から追放されるヘリオドロス】
・戦闘的・動的な世界を描く、ユリウス 2 世は謁見の間にも気迫をみなぎらせようとした
・御輿を担ぐスイス人衛兵はデューラーから着想を受けたのかライモンディから着想を受けたのか
デューラーと作品交換


ヴェネツィア派

…ヴェネツィアは貿易で豊かになる、異国文化が入り込み華やかさと退廃を持つ
→一般人がパトロンとなり、官能的な表現や田園風景が流行する
→始めから色彩で描くというような手法をとり色彩豊かで感情をストレートに表現する、感覚的

ジョルジオーネ

…詩的風景ではナンバーワン、風景の中に人物が添えられたところが斬新

10-33. 【ラ・テンペスタ】
・ジョルジョニスム、田園詩的風景の風俗趣味


10-34. 【老婆の肖像】
・『老婆は 2 度死ぬ』美女は様々、老婆は一様
一方を必要以上に貶めているのでは?


ティツィアーノ・ヴィチェッリオ

…色づかいではナンバーワン、宗教画ではなく世俗的世界をテーマとする

10-35. 【受胎告知】
・『領主の初夜権はひどい』花嫁の最初の夜を領主から請求される
神同然で諦めるほかない


10-36. 【フローラ】


マニエリスム(後期ルネサンス)

…16世紀
奇抜さを好む、的確な人物表現
場所を特定できない背景・重量感のない像で不安を漂わせる
→ルネサンスからバロックへ、古代ギリシャ美術・古代ローマ美術を超えたい
→宗教改革・ローマ略奪・大陸発見、社会的混乱や精神的不安
→市民向けの分かりやすい表現ではなく、有識者向けの寓意的な表現
→肯定的な意見、自然を超える知的なスタイル、自然を写すことが芸術ではない、マニエラが大切
→否定的な意見、創造力が欠乏したスタイル 、自然を手本とせず巨匠の手法をまねただけ、わざとらしい

10-37. イタリアでは対抗宗教改革のためエロチックなものはご法度
→フランスではエロチックなものは歓迎される、ネーデルランド風の堅い表現で描かれる


アーニョロ・ブロンズィーノ

10-38. 【愛のアレゴリー】
・ねじれのポーズ、ツルツルの肌、人体の不自然な誇張・仮面のような冷たさ

・裸は隠し・ごまかしを表す、嫉妬や真理、時、快楽、右手に金のリンゴ、愛には痛みがつきもの
『常識は変わる、人生がおもしろいかどうかは自分の生き方次第』


フォンテーヌブロー派

10-39. 【ガブリエル・デストレとその妹】


エル・グレコ

10-40. 【無原罪の御宿り】


11. バロック美術 16項目

…17世紀〜18世紀中頃
強烈なコントラスト、過剰な装飾・演出、不確実性という問い、宗教画
→古代ギリシャ美術・古代ローマ美術から抜け出したい

→イタリア・フランス・フランドル・スペインはキリスト教信者のウケ狙い、カトリックの巻き返し
→オランダは一般人向け、プロテスタントの保守

◯イタリア

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

…バロックを切り開いた名高い犯罪者
宗教画を日常的な空間・現実的な人物で生々しく描く
→過激なリアリズム・強烈なコントラスト、人物の動作・表情・場面を浮かび上がらせる

11-1. 【聖マタイの召命】
・窓から差し込む光の調和を考えて光の効果を設定する、絵画空間と現実空間の境界をなくす
→安い酒場の薄汚い光景を神聖な出来事の高みまで引き上げる
・イエスの手招き、背後からのスポットライト、物語を知らなくても見れば宗教的な感情を抱く
・マタイはヒゲの男性か若い男性か、ヒゲの男性は右手にきんかを握り帽子にも金貨がついている、若い男性は指さされている、ヒゲの男性に光が差し込んでいる


11-2. 【ダヴィデとゴリアテ】
・賭けテニスで殺人を犯した後に逃亡している時に描く
・ダヴィデは逃亡を手伝ったお付きの少年、ゴリアテは自分の自画像、後悔の念、自分の分身に斬首という処罰を与えて罪を償わせている、ナルシシスムとマゾヒズムの傾向を垣間見る


11-3. 【果物籠】
・世界初の静物画


〇フランス

…イタリアに追いつき追い越せ、ルネサンスを学ぶ、古典主義を学ぶ
→文化の中心はイタリアからフランスへ、スペインの侵略・イギリスやオランダへの敗北
→建築、ルイ 13 世の狩りのための質素な邸宅からルイ 14 世のためのヴェルサイユ宮殿へ

ニコラ・プサーン

…理知的な構成、精神性の深い作品
晩年に近づくほど古典的な風景画が多くなる

11-4. 【アルカディアの牧人】
・プサーン派、絵画は知識人のもの、素描や理性が大事


11-5. 【サビニの女】


ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

…灯の達人、光源を絵の中に描くことで私的な閉じた世界を表現

11-6. 【いかさま師】
・黒幕の存在が物語に深みを与える
・お坊ちゃんが騙されようとしている、心配するか、いい気味だと思うか
『自分は特別だと慢心を抱かずに感謝しよう、気づかない時間が長いほど失うものは大きい』


11-7. 【聖誕】


◯フランドル

…寓意や教訓というフランドル伝統のテーマ 、カトリック復興に燃える

ピーテル・パウル・ルーベンス

…見えない感情を姿勢・表情で表現
ヴェネツィア派から学んだ輝く色彩で目に訴える
→ヒロイックな男性、官能的な女性、ダイナミックな構図、登場人物はリアル、多くのアレゴリー

11-8. 【マリー・ド・メディシスの生涯】
・ルーベンス派、絵画は一般人のもの、色や感性が大事


11-9. 【キリスト昇架】


ヴァン・ダイク

…馬、リラックスした全身
樹木というイギリスらしい肖像画のスタイルを確立

11-10. 【狩場のチャールズ 1 世】


〇スペイン

ディエゴ・ベラスケス

…規範を逸脱した反古典的な表現、神話のシーンを現実の場に描く

11-11. 【ラス・メニーナス】
・宮廷にきらびやかさはなく衣装も着ている感じ、閉塞感、純血主義に逆らえない
・王女が鏡に映るという瞬間を描く、ご機嫌取りも描く、作品自体が鏡そのもの、描く本人も描く
・鏡に映る像で不思議な空間を作り出す、ファン兄弟を取り入れる、鏡と鏡が向かい合う空間、
国王夫妻の肖像画を描く自画像・王女と女官たちの肖像画を組み合わせて集団肖像画を作り出す
→空間を補完するだけでなく絵画空間を実在しないもののように複雑に発展させる
→ねじれた空間はバロックの特徴そのもの
『日常は永遠でない、不幸も幸福も』


11-12. 【王太子バルタサール騎馬像】


〇オランダ

…市民階級が栄える、現実的で分かりやすく親しみやすい

レンブラント・ファン・レイン

…バロック時代のバロック的ではない画家、深い静けさが漂う、肖像画と歴史画のミックス
→抑制のきいた色彩と独特の厚塗りによるマチエールで人間の内面と向き合う

11-13. 【夜警】


11-14. 【自画像】


ヨハネス・フェルメール

…日常性を超える静けさ
永遠性・抒情性(写真みたい)があり独特の世界を作り上げる
→左側から光が差す室内に 1 人か 2 人いるというシンプルな構図

11-15. 【牛乳を注ぐ女】


11-16. 【真珠の耳飾の少女】


12. ロココ美術 4項目

…18世紀
かわいい、甘美で優美、女性的で曲線的、ソフトな色味
→ルイ 14 世の死後、窮屈な中央集権が終わり貴族たちは領地へ帰らずにパリに私邸を建築
→小さくかわいいものが好まれ、室内装飾は白を基調に金をあしらう、
大きな窓やシャンデリアで光の演出、重々しさを避けるため高さは低く曲面を多用

〇イタリア

…芸術の地からルネサンス美術を見に行く観光地となる
→お土産としてヴェドゥータ(都市塁観図)が流行する

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ

…発掘ブームで人気となった古代遺跡を強調した奇想な版画

12-1. 【牢獄】
・カプリッチョ、奇想風景、実際の景観と架空の建築物を組み合わせた風景画


〇フランス

…夢のような想像、生きる喜びを享受することや恋愛を美術の表現として確立させた、自由奔放で官能性や軽薄さがある

アントワーヌ・ヴァトー

…上流階級の合コンを描く、メランコリーとエロティシズムをほのかに漂わせながら、
合コンという軽薄なものに繊細さ・洗練・哀愁が混ざることで高尚な風俗画となった

12-2. 【シテール島の巡礼】
・フェートギャラント、庭園や田園を着飾った男女が優雅に散策する絵、雅宴画


フランソワ・ブーシェ

…奔放で明るい裸婦を描く、ポンパドール夫人のお気に入りで衣装や装飾の分野でも活躍

12-3. 【ソファに横たわる裸婦】


〇イギリス

…現実的・古典主義的で歴史画を重要視、シェイクスピアがテーマ
芸術学校ロイヤルアカデミーを設立したことでフランスの軽薄さが悪趣味に見えたため

ウィリアム・ホガース

12-4. 【当世風結婚】
・カンヴァセーション・ピース、家族団らん図


13. 新古典主義美術 6項目

…18世紀中頃〜19世紀
イギリスで古典美術をもう一度見直す
動きがない・完璧な肉体・神話がテーマ
→ギリシア美術・ローマ美術やっぱいいね
バロック美術の激しさ・ロココ美術の官能性を否定
→古代ギリシアへ憧れ、美術史の祖ヴィンケルマンの「ギリシア芸術模倣論」に多くの画家が共鳴
→産業革命を経験、フランス革命前後を支配した新古典主義に則る

トマス・ゲインズバラ

…ヴァン・ダイクに挑む

13-1. 【ブルー・ボーイ】
・ロココ様式を吸収、ファンシードレスを着た肖像画、青い衣装は当時の流行とはかけ離れる
・流行のものを細かく表現すると普通のものに見える、流行が去ると古くさく間抜けに見える


13-2. 【犬と壺をもつ田舎の娘】
・ファンシー・ピクチャー、空想的なテーマ、純粋無垢、
子供・若い女性が描かれる、感傷的・官能的、イギリスの独自性

・田舎の低層階級の人々をロココ的な牧歌的風景に描く
・大きな人物を手前に描く、顔の表情・仕草がわかりやすいためより感傷的になる
・少女の表情と破れた衣服の対比に心を動かされる、失われた無垢な笑顔・平凡な営み
・少女・犬の顔を似せて守られるべき存在だと気づかせる


ジョシュア・レノルズ

…レンブラントに挑む

13-3. 【ストロベリー・ガール】
・不安げにじっと見つめる、いちごがカゴ・エプロンに入っている、
壊れやすいものをしっかり守る姿に心を動かされる
・全体的に経年劣化したような黄色がかった色、レンブラントの色と調和する展示効果を見越す


13-4. 【無垢の時代】
・飛び去った鳥を目で追う自由な空へ飛び立つ希望、グルーズを取り入れる


アントニオ・カノーヴァ

…動きがない・完璧な肉体・神話がテーマ、新古典主義の特徴を有している

13-5. 【アモルの接吻で蘇るプシュケ】
・シワがない、永遠性


ジャン=フランソワ・シャルグラン

13-6. 【エトワール凱旋門】
・アンピール様式、古代風の様式やモチーフで帝国の威厳を表現


14. ロマン主義美術 11項目

…19世紀
イタリアで多様な美しさを求める、ドイツ・フランスから
革命・戦争・嵐・難破船がテーマ
→古代ギリシア美術・古代ローマ美術から抜け出したい
ドラマチックな表現、感覚重視

→文化の中心はフランスへ、フランスの芸術家はイタリアに留学しルネサンスを学ぶ

ウジェーヌ・ドラクロワ

…激しいタッチと大胆な色彩、ルーベンスやヴェネツィア派に学ぶ

14-1. 【民衆を導く自由の女神】


14-2. 【怒れるメディア】
・異化効果、少年と目があって緊張する
『女の怒りは恐ろしい』実は自分の子供を殺そうとしている、復讐のため


フランシスコ・デ・ゴヤ

…ネオバロック、洗麗なタッチと華麗な色彩
聴覚を失ってからは人間の心の闇を赤裸々に描く

14-3. 【我が子を喰らうサトゥルヌス】
・見てはいけないものを見てしまった感、こっちにきそうな恐怖感、殺人という人間を止める瞬間
・妻は被害者であり加害者、見てただけ
『加害者にも被害者にも言い分はあるが、やらなきゃやられるという言い訳は後ろめたさの表れ』


フランツ・プフォル

14-4. 【皇帝ルドルフのバーゼル入場】
・ナザレ派、古典主義からロマン主義へ、ルネサンス初期の技巧に走らない
・世俗的テーマが多かった、中央の騎馬像・走る犬、デューラーの騎士と死と悪魔を取り入れる、
鋭い輪郭線・奥行きを強調しない平面的な人物・細密さ


ヨハン・フリードリヒ・オーヴァーベック

14-5. 【イタリアとゲルマニア】
・友情の証として描かれる、友情はロマン主義の主要テーマの一つ
・左がイタリア、右がゲルマニア
ドイツからやってきてイタリアで活動するナザレ派を表す
プフォルの死で制作中断、髪色と背景から
・宗教的テーマが多かった、ラファエロを取り入れる、受難伝と聖母子、
王座の芸術に跪くデューラーとラファエロから構想を得る


ヨーゼフ・アントン・コッホ

14-6.【オレヴァノから眺めたカンパーニャ地方】
・風景画家のグループ、実際の風景ではなく理想的な風景
ナザレ派がやってくる前からあった

・クロードを取り入れる、理想的風景の様式を保ちつつ実際の眺めや取材した風俗を組み込む


ヨハン・クリスチャン・ラインハルト

14-7. 【ヴィラ・マルタから南への眺め】
・カメラの先祖を使った正確な自然描写、カメラ・ルチダ
考古学者の遺跡記録・軍の地形記録に使われていた


ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル

…デッサンを重視、見たものだけを信じる、感情に興味なし
美意識はルノワールやピカソに影響

14-8.【グランド・オダリスク】
・長い腕と胴はわざと、物が完璧なので人の奇妙さに気づきにくい
・全体の冷ややかさを女性のぬくもりで和らげる


14-9. 【聖ペテロへの天国の鍵の授与】
・ナザレ派のグループを訪問、交流から影響を受ける
・硬い人物表現・衣服の色・左上から右下へ横断する構図


14-10. 【グラネの肖像】
・風景画家のグループを訪問、建物を描くのが得意ではなかったため背景はグラネのスケッチから
・カメラ・ルチダによるもの


ウィリアム・エッティ

…技術は最高だがデザインがひどい、ゴシップ・ヌードがテーマ

14-11. 【嵐】
・エッティスム、不潔な肉体、最悪な趣味、大衆に好まれた


15. レアリスム(写実主義美術) 2項目

…19世紀
芸術とは美しくないもの、日常生活・日常風景がテーマ
→古代ギリシア美術・古代ローマ美術から抜け出したい
→フランスで共和制政府が成立、目の前の現実・日常は民主主義の象徴

ギュスターヴ・クールベ

…史上初の個展を開く、寓意画は聖書などがテーマというサロンの約束を破る

15-1. 【オルナンの埋葬】
・田舎の葬式を大画面で描いたことが革命的、名もなき田舎民の現実生活を自分の価値観で描く
・左(下層階級・田舎・過去)、右(上流階級・都会・現在)


ジャン=フランソワ・ミレー

…美しい絵空事ではなく美しくない現実を描く、仕上げの雑さも個性

15-2.【落ち穂拾い】


16. バルビゾン派 2項目

…何の変哲もない風景を描く、バルビゾン的

テオドール・ルソー

…何も加えないで断片的に風景を切り取る、目の前の自然が主役
印象主義の先駆け

16-1. 【フォンテーヌブローの森のはずれ】


シャルル=フランソワ・ドービニー

…樹木よりも水面に煌めく光を好む、印象主義の先駆け

16-2. 【オワーズ川の船】


17. 印象主義美術 10項目

…19世紀
あるがままの偶然をとらえる、一瞬でも明るくて楽しい方がいい
日常生活・日常風景がテーマ
→モダニズムの始まり、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からもっと抜け出したい

→レアリスムから暗い現実を取る、絵の対象は外の世界から内の感覚へ、世界は常に変化するもの
→瞬間性や光への関心、対象を光の中のシミとしてとらえる 、明るい色調、形は不明瞭

エドゥアール・マネ

…正確には印象主義に属さない、先駆け、裸の娼婦を描きスキャンダルになる、パロディの先駆け、見る者のショックは大きい
→今までの美術の流れに別れを告げる新しさ

17-1. 【オランピア】
・薄っぺらさ・絵具の物質性・未完成な外観は新しい
→写真の登場、本物そっくりに描くなら写真でよくない?
絵画らしさって何?
・娼婦がよく使っていた源氏名、媚びていない眼差し
→神話で消毒された裸体を安心して見る人の無意識な後めたさを射抜く、居心地が悪い
・右腕から右肩にかけてはあえて人体のリアリティを消そうとしている、背景が暗い
→全体が薄っぺらなものとして映る、陰部を隠す左手だけが生々しい
・割れた鏡のよう、割れていない鏡は鏡であることを意識されないことで鏡の機能を果たす
割れた鏡は鏡そのものの表面を見るよう促す・鏡が生み出す自分の姿を隠してしまう


17-2. 【草上の昼食】


クロード・モネ

…印象主義を成立させる
同じ場所を何度も描き瞬間をつなぐことで時間を表す

17-3. 【ラ・グルヌイエール】
・印象主義が成立したとされる絵画
・分割筆触、純色の点を並べ遠くから見ると別の色に見える技法
・カリカチュア、有名人の風刺画、そこそこ儲けた
・太陽の画家、ガーデニングのパイオニア、外で絵を描いた、太陽そのものに関心を持っていた可能性
→太陽が空のどの高さにあるかで描き分ける、影の伸び縮みだけでなく色を描き分ける
太陽が真上にある時は大気の厚さ分だけ光が通るため青く見える
太陽が地平線近くにある時は大気の中を長い距離光が通るため青の光は消えて赤く見える
→青がどのように消えていくかを探究した、古代ギリシャなども太陽の位置と向き合ってた


17-4. 【陽を浴びる積み藁】
・カンディンスキーに影響を与える、画面の下の影、近くで見ると絵具というただの物質
・絵画にとってモチーフは必要ないかもしれない、表面の輝き・力強さを純粋に追求するなら
→絵具に鑑賞者を集中させるほど絵画空間が消えて材料の多様性が生まれる
・積み藁以後は睡蓮に取り組む、積み藁に当たる光が時間に応じて変化、
光の多様性・光によって生まれる色の多様性に注目、絵画に時間を導入
→神を相対化した人間は神を否定しようとさえしている、ニーチェの神は死んだ発言と同時期
・セザンヌに影響を与える、絵画こそ移り変わる世界を超えた確固たる存在である、画家の主観の拡大を促す、世界の不変性は絵画の物質性への覚醒という形で引き継がれる


17-5. 【睡蓮】


ピエール・オーギュスト・ルノワール

…大好きなロココ美術から再現性を学ぶ、テーマが自然や母性愛に変わる、風景と人物の融合

17-6. 【イレーヌ】


17-7. 【舟遊びする人々の昼食】


エドガー・ドガ

…踊り子の画家、室内の人工的な光で作られる時間と空気を描く、全体をキャンパスに収めない、一瞬を感じさせる、アトリエで何度もデッサンして完成させる点は印象主義とは異なる

17-8. 【エトワール】
・踊り子のスタイルは時代の好みで変われど一瞬の仕草や表情はいつの時代も変わらない
・『スターは幸せなのか?』
・素質があるのかパトロンが強いのかはわからない、
確かなのは社会から軽蔑されながらもがむしゃらにスターまで駆け上がったことと、
そしてそれに無関心な画家が批判精神のない美しい絵に仕上げたこと


17-9. 【花束をもって挨拶をする踊り子】


オーギュスト・ロダン

…近代彫刻の父、バルザック

17-10. 【鼻の潰れた男】
・批判を浴びて炎上した、美しくない、オーストリア・フランス戦争、人間の身体という自然
・彫刻を作る人の見方、頭を見たら見えない向こう側を想像する
→彫る彫刻家、一番飛び出しているところをまず把握して形を綺麗にして彫っていく
→付け足す彫刻家、一番凹んでいるところをまず把握して形を綺麗にして付け足していく
・受け取りを拒否される、裸を作る、布を作って被せる、ボロ切れ、カジュアルすぎる、抽象的表現
・ゴシック建築を最も美しい造形物として取り入れる、自然は排除して都市を作ってその中に失われた森をもう一度再現しよう、森に迷い込んだような感覚、大聖堂と森


18. 新印象主義美術 2項目

…19世紀中頃
…とらえた偶然を計算して描く、分割筆触は印象主義と同じ、印象主義の感覚を論理的にした
→自然から絶対的・永遠的な真理だけを抽出
→意図がはじめにある計算された絵で色を見る人に与える効果を予測して使う

ジョルジュ・スーラ

…色彩の科学的理論に興味を持ち印象主義の感覚的な技法をシステム化

18-1. 【グランド・ジャット島の日曜日の午後】
・スーラの感覚的表現要素
❶陽気さ、明るい色、暖色系、上へ向かう線
❷静けさ、明暗の等しさ、暖色寒色の等しさ、水平線
❸悲しさ、暗い色、寒色系、下へ向かう線


シニャック

…理論的で装飾性を高め新印象主義の理論を広めた、フォービスムを生む

18-2. 【フェリックス・フェネオンの肖像】
・フェリックス・フェネオンは新印象主義の名付け親


19. ポスト印象主義美術 10項目

…色・線・形を自由に使って感情・思考を表す
どんな部分も独立しない絵全体の調和を目指す
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からもっと抜け出したい

ポール・セザンヌ

…一か所に固定されない複数の視点
自然とは一瞬の変化の連続ではなく不変なもの

→現象学的視点、絵を描く時だけ自然が動かないのはおかしい
キュビスムへの道を開く

19-1. 【赤いチョッキの少年】
・絵画で重要視したのは世界の深さがどれくらいあるか、空間の深さ、遠近法とは違う遠近感を実現しようとした、色もその1つ、赤が手前・黄が中間・青が奥
→世界に奥行きがあったんだという気づき、気づかなかった世界が立ち上がってくる、角度によって深さが異なる、視覚を意識するようになる
・色彩学、色の三原色、赤青黄、全て混ぜるとグレー
・静物画、リンゴが多い、リンゴでパリを驚かせてやる
・セザンヌにリンゴを描いたのか絵を描いたのかと質問すると絵を描いたと答えるはず、 セザンヌにとって重要なのは画面の空間・構図・色が作り出す世界
・空間の歪み、テーブルの上の瓶、左肩と右肩が違って歪む、近づく離れるだけでなく斜めから見るという見方、上下左右を変えると歪みが修正される、パーツパーツで視点が違う


19-2. 【大水浴図】
・裸婦は記号化され表情は読み取れない、ピラミッド状の構図にぴったり収まるように配置、エロさを消して絵画のパーツとして無害化したいという欲望
・塗り残し・下絵の残りは絵画的欲望が底知れないというアピール、これで完成している
・自然・モノと自分の間の視覚的・感覚的価値を追求、空間・位置を精査し画面で結びつける
・画面に何かを描くのではない、画面に自分で解釈した世界を実体化、
キャンバス・絵具・絵筆などを総動員、個人的欲望を押さえつけて作品へ無理矢理構造化、モチーフと画家・画家と画家の内面との間に生まれる軋みを全て画面に織り込む


ポール・ゴーギャン

…風景と宗教・哲学を合わせる、目の前の見える世界と見えない世界
自然から抽象をとりだす

19-3. 【我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処へ行くのか】
・総合主義、鮮やかな色の平塗り、単純化した形、はっきりした輪郭
・クロワゾニスム、暗い輪郭線、くっきりしたフォルム

『諦めたら死に向かっていくだけ、大切なのはもがくこと』


19-4. 【タ・マテテ】
・装飾化、色彩の意味付け、ベタ塗りの平面、クロワニズムによるモチーフと背景との一体化
・印象主義とは異なる世界を描こうとする、印象主義は限界を感じ東洋を参照
→主観の拡張、色と形でいかに表現するか、見えない個性を見える世界に引き摺り出す
・非連続的ながら生まれる遠近、見通しが生まれる、各層はあくまで平面的、滑らかな移行が意図されておらず孤立感を高める、影がないことも平面性・孤立感を高める
→儀式性・永遠性、宗教観を作る、イコンのよう、主観により風景を内面化・モチーフを精神化


ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

…激しい色彩・筆致、異常な興奮・動揺を表す
自然の中に宗教的テーマを見出す、日本人の感覚

19-5. 【星月夜】
・勢いよく渦巻く雲はうまくいかない人間関係、糸杉は死、夜にもかかわらず星月が明る
『孤独・不安を感じていながらも希望を持って力強く生きよう』


19-6. 【カラスのいる麦畑】
・麦畑は生命の象徴だが墓場みたい、自分の死を予感する精神状態
・ゴーギャンと共同生活を送るが耳切事件をきっかけに精神病院へ
『行き過ぎた情熱と思い込みはキャリアを壊す』


19-7. 【黄色い家】
・背景の空は暗く深い青で塗られている、黄色い家はあっさり描かれている
→青い背景に黄色い家が埋め込まれているよう、空を見ているのではなく絵具そのものを見ている
・暗い黄色の場所、何も意味せずそこにあるというそれだけの理由でそこにある、ブラックホールのよう、不安にさせる、黄色い家による遠近感が深く迫ってくるように見える
→めまいのような感覚、実存的リアリティ・とってつけたような遠近感による
・ゴッホの見る世界は 3 次元、描く絵画も 3 次元っぽい、物質性を誇示する絵具が介入
→3次元と2次元の間に緊張感が生まれて絵画自体が揺らぎはじめる
・主観の解放、自分の見たままに描いた、1800年代と1900年代の決定的な違い
→多くの人に同じように見えるのであれば、このように見えるという客観に規定されている、個性が見たままの世界ではない
→客観という古い神を見放した人々は新しい神を人間の内面に見出そうとした


シノワスリ(中国趣味)

…中国文化をヨーロッパ的に表現
・18 世紀になると中国の陶磁器が愛好される、珍しいものや異形を好む
・西洋人はその白い地肌や絹の滑らかさに憧れロココ文化の絵画、工芸、室内装飾のに取り入れる
→シノワスリはロココ文化の衰退と同時に消えていく
・ザクセン窯、ドイツのザクセン公に雇われた磁器職人がドレスデン郊外に設立


ジャポネスリ(日本趣味)

…日本文化をヨーロッパ的に表現
・19 世紀後半になると日本美術への関心が高まる
・浮世絵の斬新な遠近法や構図、植物や昆虫などの自然主義的モチーフが作品に取り入れられる
・西洋美術の行き詰まりを感じた画家の新たな試みがジャポニスムへの道を開いた


ポン・タヴェン派

…19 世紀後半
見えるものの抽象化、ポン・タヴェンに集まった画家が追求した印象主義とは異なる形式
→ポン・タヴェンはブルターニュ半島南部の田舎の村で多くの画家が集まるリゾート地

エミール・ベルナール

19-8. 【草地のブルターニュの女たち】


シャルル・ラヴァル

19-9. 【市場に行く】


ナビ派

…19世紀後半
見えないものの視覚化、学生が作った前衛派、ゴーギャンの信者、神の言葉を伝える預言者
→反印象主義的、見えるものすべてがテーマ、絵は抽象、自然を模写してもしょうがない

ポール・セリュジェ

19-10. 【タリスマン】
・装飾的、輪郭や色が強調されている、形が平面的・デザイン的


20. 象徴主義 17項目

…19世紀後半〜20世紀初め
見えない形のないものを見える形にする、機械文明への信奉・反発
第1次世界大戦まで
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からもっと抜け出したい

〇イギリス

…ラファエル前派、ラファエロ批判、それを規範とするアカデミーへの反発、わざとらしい
→象徴主義の源泉でありロマン主義的、戯曲・詩がテーマ

ジョン・エヴァレット・ミレイ

…細密描写で装飾性を高める、現実離れした雰囲気
密度の高さはファン・エイクがお手本

20-1. 【オフィーリア】
・歴史性と近代性が奇妙に混在、戯曲ハムレットの悲劇のヒロインを現実世界の哀れなヒロインに
・背景の精緻かつ鮮烈な自然描写、旅行で少しずつ進める
→ケシ(死)、ノバラ(孤独)、スミレ(絶望)、パンジー(虚しい愛)、バラ(若さ)、ヒナギク(無邪気)
・イギリスで女性美の基準が変わるきっかけ、聖母のようなルネサンス的理想美とは離れている
・『若さとは美しく、時に残酷である、自我との折り合いも大切』


20-2. 【チェリー・ライプ】
・ファンシーピクチャーを復興、モブキャップ、腕が開いている、
性的な誘惑、ロリコン傾向
→少女は熟したチェリーのように摘み取られて良い
・政治的野心、臆面もなく初期のレノルズを模倣することでアカデミーでの立場を確立させたい


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

20-3. 【プロセルピナ】


◯フランス

…ベルエポック、産業革命・資本主義で社会がより豊かで華やかになった時代
→デカダンス、芸術は不確実な世界に人を導く暗示とした時代、不安・苦悩・運命・願望
→アール・ヌーボー、新しいものへの期待から生まれた時代

ギュスターヴ・モロー

…新しい歴史画・新しい宗教画を描く、内面的・幻想的

20-4. 【出現】
・唯美主義的、美に最も価値がある、美以外の価値を認めず病的に美しさを求める
・ファム・ファルタル、男の身を滅ぼしてしまう悪女、男の標的となる女性を描く

・ヨハネの首は死を超越、アラベスク模様はオリエント趣味


20-5. 【パルクと死の天使】
・独特の喪失感・悲壮感、絶望的な死


オディロン・ルドン

…出会うことからこの世の全ては生成されると考える

20-6. 【眼=気球】
・夢のような絵、自分のイメージで見えないものを象徴した
・眼は本質を見抜く、己の内面を見る
・『孤独・不安は他人の温もりでしか癒せない』家族・仲間・パートナー


20-7. 【沼の花、悲しげな人間の顔】


◯ドイツ

エドヴァルド・ムンク

…孤独・不安・死・嫉妬を強烈で独特な画面に表現
→現代人が無意識に抱える思いを自然に表現
鑑賞者の胸にスッと入ってくる

20-8. 【叫び】
・愛・不安・死を表現、幻聴を聞いてそれを描く、これを描いた後に不安定になる
・ニーチェに影響を受ける、自然の圧倒的エネルギーに惹きつけられる、死は身近で容赦ない
・深い遠近法、急な傾斜、うねるような赤い空、不気味にくねくねした水面、不安にさせる
・身体をくねらせ叫ぶ人物、恐怖に直面した人間が陥る狂気・痴呆・思考停止を印象付ける
・ドイツ的とは何か、ドイツの劣等感、叫んでいるのはムンク自身でありドイツ、考えたくない
・主観の拡大によってモチーフを変形させることで人間心理などを極限的に表せる可能性を示唆、ゴッホ的、アール・ヌーヴォーの装飾性と混じり合い抽象絵画への可能性をも示唆
・他の世紀末画家、神話・歴史がテーマ、鑑賞者に知的さを求める
→ムンク、個人的な体験・感情がテーマ、独特の色や誇張で鑑賞者に訴える
『不安という原始的な感情を克服してこそ幸福が訪れる、回り道して見つかるものもある』


アルノルト・ベックリン

20-7. 【死の島】
・超現実的世界、自然と幻想を融合した世界
・糸杉は死、夫を亡くしたマリーという人からの依頼、死の安寧、ヒトラーも飾る
・糸杉が岩の上部よりかなり高く描かれる、緩やかなピラミッド型の構図
・棺を運ぶ船、後ろ姿の白衣の人物は垂直に直立、視線を画面に導入する、
画面全体で厳粛さ・過酷さを表す、門の奥がフェードアウトされ効果が高まる
・左の岩肌はすれて後の建物の壁面が少し見える、超現実的
・イタリアの具象への美意識をドイツのロマン主義的感覚で内面化、具象と抽象のせめぎ合い、元々人間は抽象表現がベース、キリスト教やヒューマニズムによる具象表現は例外なのでは?
・『誰にでも死は平等に訪れる、すごい人でも、大切なのは悔いがないと言えるかどうか』


グスタフ・クリムト

20-8. 【接吻】
・金箔を多用、イタリアを訪れた際にビザンティン美術に触れる、金地背景に影響を受ける


20-9. 【公園】
・執拗に描き続けた風景画の 1 つ、正方形に描く、抽象への対抗、絵画の 2 次元平面への圧縮
・マティスのように画面の装飾性を生み出す、ピカソのようにモチーフを解体する、カンディンスキーのように色彩で画面の抽象性を生み出す
・風景に擬人的要素を交えずに装飾的に描く、身体への触覚的愛着による具象表現、現代に通じまたその可能性が取り上げられている
・ドイツ統一に向き合う、ヨーロッパ最大の経済格差、報道はされない、
今の時代の認識による再解釈、東ドイツ美術の西ドイツへの解放


◯北欧

ジェームズ・アンソール

…仮面や骸骨などに皮肉、偽善、虚飾を込めグロテスクな人間像を描く

20-10. 【仮面の中の自画像】


ヘレン・シャルフベック

20-11. 【快復期】
・不安というテーマ、北欧が得意、決定の自由と不安、現代社会の心理的葛藤を捉えて表現
・婚約破棄、立ち直った自分の自信を重ねる、希望的、春の芽生えと子供の強い生命力を象徴


20-12. 【未完成の自画像】
・叶わぬ恋、自分が勧めた旅行で結婚、自分の顔に傷をつける
・恨みがましい手紙と自画像に苦悩・失望をぶつける


20-13. 【黒い口の自画像】
・第 2 次世界大戦、死の不安、不安な表情とは反対に背景はバラ色
・顔面は蒼白、目と鼻は骸骨のよう、大きく開かれた目と口から戦争への恐怖


ヴィルヘルム・ハマスホイ

20-14. 【手紙を読むイーダ】
・モノトーンで静かな作品、フェルメールの手紙を読む青衣の女を取り入れる
・不安・孤独を室内に託す、家具を最小限に抑えて生活感を排除
・コーヒーセットは置いてあっても椅子はなく団欒とはいえない冷たさを感じる
・テーブルも足を 3 本しか見せておらず消えていきそう


20-15. 【室内、ストランゲーぜ 30番地】
・イーダが鑑賞者に背中を向ける、後ろ姿は強い拒絶にも思える
→壁・扉で閉ざされた室内に置き鑑賞者にまっすぐ向き合わせる、大きいテーブルと圧迫感
・テーブルに何もないため行為の文脈がわからない、家庭的な女性像の役割を取り去る
→時間が止まったかのように見える
・髪にはドクロのような影、黒い床、ホラー映画の一場面
→見慣れた日常が突然見慣れないものになる、自宅でさえ裏切ってくる現代の精神の危うさ


アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ

20-16. 【喫煙室】
・ジークフリート・ビングのギャラリーであるアールヌーヴォー館のインテリア
・直線と曲線で構成された角張った家具、アール・ヌーヴォーの特徴、モダニズムを予言していた
・フランスでは厳しく批判される、ドイツでは称賛される、これまでの様式に終止符を打った


20-17. 【トロポン広告ポスター】
・コーポレートアイデンティティを 100 年先取り
→食品会社というイメージではなくファッショナブルな会社であるというイメージがわかる
・直線的なアルファベットの文字、曲線的に視線を誘導されて見える広告文
→直線と曲線は相反するように見えて交流している
・幾何学模様と広告文、商品名が液体に変化しながら流れていき右下の広告文へ誘導
→中央の装飾と混ざり合う、広告文を囲んで上昇し幾何学模様に合流、紺色がオレンジ色に反転
→また中央の装飾へ


21. フォービスム 5項目

…20世紀初め
…色を再現という役目から解放、活動らしい活動はなく短期間、20 世紀最大の絵画革命
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からかなり抜け出してきた
→原色の鮮烈な色彩・荒々しいタッチ、フォーヴ(野獣)、色は感情を表す
→大胆だがフランスの伝統を重んじている

アンリ・マティス

…裸婦という伝統のテーマ、現代的な色・構成をマティス風に調和させる
→ゴーギャンの調和された画面構成を受け継ぐ

21-1. 【ダンス
・感情を色に置き換える、フォービスムから離れて色・線・形が一体化・単純化された
・独特な線、色彩の単一さ、もっと色を明るく、印象主義はまだ暗い
・音楽っぽい、矛盾しているように見える関係を装飾という欲望で和解させる、いい緊張感、
・人体への幾何学的探究・生物学的興味、絵画の抽象化・具象的世界への信頼


21-2. 【河辺の浴女たち】
・女性と背景との関係に視界を広げると硬さが消える、緑の植物は装飾的、
黒い線とリズミカルに交代、鮮やかな色彩の対比、抽象の冷たさはない
→絵画の 2 次元化に絵を描く純粋な喜びがプラスされている、描くことへの本能的な欲望
・セザンヌに影響を受ける、ピカソ・ブラックへのマティスなりの応答


21-3. 【装飾的人体】
・人体はボリュームを取り戻す、空間は和やかに展開
・ヨーロッパでは多くの画家が具象絵画へと還っていく、第一次世界大戦後の保守的ムード
→抽象絵画はユダヤ・共産主義と結び付けられて嫌われる、アメリカにマーケットを移していく
・裸婦の左足が太い、上半身はぎこちない、背中が垂直でまっすぐ、背中は壁に密着していない、上半身の背景は平らな壁面が豊かな装飾を伴う、下半身の背景は斜めのベクトル
→装飾は画面と同一化し空間を無効化・抽象化、立体的な裸婦は装飾と対立、イリュージョニスティックな空間を作る、矛盾する要素が裸婦で無理なく繋がる
・モデルの個別性・肉体性は透明化、絵画世界の中に装飾として再生される


モーリス・ド・ヴラマンク

…風景をドラマチックに描く、抑制の利いた色調、スピード感のある筆致
→ゴッホ流の色彩表現を受け継ぐ、父親よりゴッホを愛する、キュビスムを受け付けない

21-4. 【シャトゥーの曳き船】
・アンデパンダン展、最も自由な展覧会、前衛的な作品の発表の場


21-5. 【雪の村通り】


22. キュビスム 13項目

…20世紀初め
固定した単一の視点で描くのではなく、複数の視点から見たイメージを集約して描く
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からかなり抜け出してきた、なんだこれ

第一期キュビスム

…セザンヌ的キュビスム、同一視点ではなく同時多視点で描く
→いかに遠近法や陰影で本物に近づけるかという当たり前を否定


パブロ・ピカソ

…現代美術の出発点となった歴史的作品を描く
プリミティブな芸術に影響を受けた
→絵画が「説教」から「飾り」になったと気づかせた

22-1. ピカソが評価されるのはキュビスムをやったから
…現代アートで技法・思想を汲んでいるアーティストは多い

❶絵画の描き方が根本から変わった
…伝統的技法からの解放、抽象芸術の誕生

❷アート作品の素材が根本から変わった
…絵画・彫刻といったジャンルの解体、どんなものでも作品の素材にしていい、コラージュあり

→現代アートはキュビスムから始まってもいい、とにかく新しいアートを作ろうという運動が起きた
→ヒントはセザンヌ・ルソー、正規の教育を受けていない、アフリカ・オセアニアの造形物


22-2. スタイルが変わり続ける、カメレオン
→10代、大人顔負けの上手い絵
→青色の時代
→バラ色の時代
→キュビスム
→新古典主義、きっちり描く
→シュルレアリスム


22-3. 絵画、絵を探求
美術、文法を探求
芸術、音楽などと共通するものを探求
→ピカソは絵画を描いた、絵画から美術などへ行って絵画へ戻る


22-4. 目に見える世界をいかに絵画に移すか
…印象主義、遠近法・陰影法、空気・光まで絵画に移すにはどうすればいいのかから生まれる
→セザンヌ、絵画の独立した自律的な世界があっていいよね、セザンヌの絵は変な絵、ルールを壊していた、正確に描写しない、四角形だけで画面を構成する
→マティスやピカソはその中にこそアートの未来があると感じた、組み合わせて絵を描いていいんだ、単純化して絵を描いていいんだ

→キュビスムの始まり、ブラック、単純化した形で描く、自分なりにセザンヌを描いてみた、何が潜んでいるかを見つけて理解しようとする、いろんな角度から見た対象のコラージュ
→ホックニー、figure with still life、自分なりにピカソを描いてみた、キュビスムを説明してくれる、線でポーズを見れる
→モンドリアン、抽象絵画に発展させる
→ジャッド、ミニマルアート、幾何学的な形だけでアートが成立する
→アートが残っていくためにはを考える、アートが今の時代の自分たちのものであるために、理性によって画面を秩序立てる部分は古典主義と一緒だよね


22-5. 【アヴィニョンの娘たち】
・世界の相対化を試みる絵画表現、相対性理論と同じインパクト、一神教の没落、危機意識による脱ヨーロッパの試み、文化人類学的なパースペクティブ
・積分的な作品、ピカソより前の絵画がパズルっぽくまとめられている、ヨーロッパ以外のもの
・5 人の娘、古代スペインの彫刻をオマージュ、違和感、目が大きくかぎ鼻
・青の背景、大先輩エル・グレコをオマージュ、白い縁取り、光の実体的表現、カーテン
・娼婦と果実、マネをオマージュ、画面の上下いっぱいに人物を描き背景をできる限り近づける
→葡萄はキリストの血、りんごは原罪、スイカは男性性器
・右の 2 人、セザンヌをオマージュ、顔は前向き・鼻は横向き、顔と胴体が逆、絵画を 2 次元化


22-6. 【ゲルニカ】
・ゲルニカ市への無差別爆撃がテーマ、ナチスと結託した政権による、スペイン市民戦争、ダリが予感した内乱、シュルレアリスムとの対決、セクシャリティと暴力を合わせたモチーフ
・蝋燭の明かりに照らされた惨劇、中央上方の不気味な光の目、原爆を予感したような、バラバラな人体、苦痛にあえぐ女性、本能的に危機を感じて逃げる馬
→神話的・歴史哲学的な普遍性、宗教画と呼べる、爆撃を物語として表現、
人間には想像ができない危機、メメントモリ
・モノクロ、リアルさを強調するというより普遍性・無時間性を強調


22-7. 【泣く女】
・『ピカソの絵がわからない』という意見に対して、ピカソは『あなたの言うわかる絵はどういうものなんですか』と答える、
→奥さんの写真を出す、ペラペラで随分ちっちゃいんですね
→ピカソにとって絵はイメージではなくモノ、印刷された奥さんの写真の顔ではなく実際の奥さん


ジョルジュ・ブラック

…キューブだといわれた歴史的作品を描く

22-8. 【エスタックの家】
・ピカソのアヴィニョンの娘たちに衝撃を受ける、調和を重んじるフランスのエスプリ、先へ自己を追い立てるスペインのパシオンとの対立
・時代が終わっていく中での世界観の変化、個人の個性・主観を突き抜けて一つの様式に近似
・ブラックはモノそのものを成立させる空間の実体化に注力、ピカソはモノの実体的把握に注力


22-9. 【ヴァイオリンと水差し】
・モチーフ・空間の圧縮濃密化、溶解・冷却によって固まったような印象、
立体性は画面の奥ではなく手前に存在
→ファセット、圧縮されたモチーフ・空間は存在性を誇示するかのようにエッジを生み出す


第二期キュビスム

…分析的キュビスム、感性ではなく理論で描く、徹底的に分析しすぎて判別不可能に

パブロ・ピカソ

22-10. 【カーン・ワイラーの肖像】


第三期キュビスム

…総合的キュビスム、イリュージョンから解放し絵全体に価値を置く、様々な運動につながる

ジョルジュ・ブラック

22-11. 【ヴァイオリンとパイプ】
・パピエ・コレ、現実の結びつきを取り戻そうと新聞等の切れ端を貼り付ける
・元が何かを示すためにヒントだけ集めたらどうなるかを考える


オルフィスム

…オルフェウス的キュビスム、非再現的な色彩、非具象的な形、非再現的な画面、現実から離れる

ロベール・ドローネー

…ドローネーの作品をみたアポリネールがオルフィスムと呼び始める

22-12. 【エッフェル塔】
・音楽的、明るく華やかな色彩で音楽のリズムや目に見えないものを視覚化
・キュビスム、頭脳プレイ、色に興味なし、再現的、絵画の成長
→オルフィスム、抒情的、感動を色で表現、非再現的


アメデ・オザンファン

22-13. 【ビン、ラフ、ヴァイオリン】
・ピュリスム、秩序・明晰さのある理性による再現性、自然や現実を追求


23. ドイツ表現主義 10項目

…20世紀初め
ゴーギャン・ゴッホを受け継ぐ自然主義的な手法

マックス・ベックマン

23-1. 【夜】
・新即物主義、魔術的レアリスム、第一次世界大戦後の絶望・無気力・人間不信
→戦争によって新しい世界が生まれたという楽観的な幻想を批判
→ディスコミュニケーション、鑑賞者の問いかけに答えようとせず新たな問いを立てるだけ
・不気味にデフォルメされた人物、キリコのような静寂、無関心で突き放したような情景
→やり切れない喪失感を強調された写実主義で描く、鑑賞者を突き放す
・拷問する人間は楽しんでいるわけでもない、母親を殺されそうになっている娘は冷静
→感情移入ができない、空虚な穴がぽっかり口を開けて待っているような恐怖
→自己の鏡像すら見出せない、絵画は鏡、主観と客観のギャップを克服しアイデンティティを取得
→バケモノに惹かれるのはバケモノが自分の奥底で眠る自分の鏡像だから
・戦争は匿名の死を量産、感情的なドラマはなく死は数値化され石碑の名前は記号化する


オットー・ディックス

23-2. 【戦争】
・戦争の惨劇を描く、色がついているにも関わらずモノクロで記憶してしまいそう、リアルに感じようとする責任感、モノクロの方が想像力を刺激しリアルに感じさせることが多い
・非現実的・超越的な画面、殺人・暴力・政治への告発・警告、一種のプロパガンダ
→ルネサンスの巨匠の緻密な模倣、極端に近視眼的な細部描写
・ナチスが政権奪取へ進む、抑圧・貧困にあえぐ国民の支持、暗黒へと走る時代を警告
・右側、負傷者を起こして先に進もうとするディックス、パトロクロスの影響を受ける
・中央、地獄絵図、死神が嘲笑うかのように指差す、機関銃とと内臓が出た死体、ガスマスクの兵士は生きているが死者よりも不気味
→正方形、鑑賞者との間に心理的距離をとる、アンダハツビルト、伝統的宗教画の形式、
思い出す・祈る・考える、死者の死後の安寧を祈り自らの罪を悔い少しでもいい方向へ


ブラウエ・ライター(青騎士)

…動物や風景の精神性・生命力を象徴、抽象的表現が多い
→外観のベールの背後にある隠れた事物を大切にする、見えているものにとらわれない
→出身、年代は幅広く活動はバラバラでそれぞれ違うルートで抽象的表現にたどりつく

ワシリー・カンディンスキー

…風景の形を抽象化させ表現した、ブラウエ・ライターの表紙を手がける
→抽象画のようで抽象画ではない非対称絵画 、重要なのは芸術家の内面、絵画はその表現
→具体的な対象やテーマがなくても色彩と形だけで自立できる、熱い抽象(情緒的抽象)

23-3.  【コンポジションⅦ】
・絵の元になるものがない絵の題名は「コンポジション」となる
・復活がテーマ、カンディンスキーの宗教観に基づく、黒い線は復活のラッパ、褐色の線・青赤黄の人のような形は大洪水とボート、緑赤はアダムとイヴ 、世界の崩壊を描く
・マティスの色彩・ピカソの形が対象の世界でとどまっていることへの苛立ち、
精神的なものを描くためには世界の模倣では限界がある、新しい色彩・形が必要
→恣意的なものではなく必然性、合目的的な探究が必要


23-4. 【ブラウエ・ライターの表紙】


フランツ・マルク

23-5. 【動物の運命】
・人間の寓意として動物を描かなければという思い、第一次世界大戦前の没落
・画面の 4 分の1 を第一次世界大戦で失う、クレーが修復、退廃芸術として没収される
・浮き彫り的対象把握、一見錯綜してそうなモチーフの配置、透過性による色彩の鮮烈さ
→画面全体は抽象的だが動物たちはリアリティを獲得している、ドゥロネーに影響を受ける
・切子状の青い背景、植物と切り株、木を思わせる赤い帯、のけ反る青い鹿に倒れていく、
光線と思われる赤い帯と交差、2 頭の馬、淡い紅色の豚、4 頭の狼
・夜の森、描くことで鑑賞者の奥へ向かおうとする見方を阻害する、
空間のイリュージョンは削減され動物たちは抽象性を求められなくて済む
→分析的キュビスムの抽象性が求められる空間・動物という有機的モチーフという対立を和解


パウル・クレー

…具象画のようで具象画ではない非対称絵画
→目に見えるものを映し出すのではなく目に見えないものを見えるようにする

23-6. 【セネシオ】
・クレーイスム、明快な色彩・線によるシンプルな表現

・生まれながらの中間者、スイス人の母とドイツ人の父、自分の周りの世界に早くから疑いの目を向ける、保守主義の老人や社会に受け入れられない屈託
・具象画、目の前の形あるものを再現した絵画
・抽象画、目の前の形あるものを分析し単純化した絵画
・非対称絵画、絵の中に別世界が生まれている、現実とは違う、モノの形を借りて表現していない


23-7. 【チュニスの赤と黄色の家】
・ブラウエ・ライターに参加、カンディンスキー・ピカソ・マティスを知る、ドローネーの窓に影響を受ける、風景画を抽象的構造化させたい、ゲーテの自然観
→大胆に歩み出すにはチュニジアという異界が必要だった、ヨーロッパとの物理的距離
・抽象とは芸術世界参入へのパスポート、唯一の可能性ではなく選択可能な様式となっていた


23-8. 【泣く女】
・ピカソのオマージュ、第二次世界大戦後の苦しさ、戦争に絶望し感情をむき出しにした女性
❶死を克服して最後の創造に向かうクレー、同時代の画家への親密なオマージュ
❷対象に一定の距離を置く理性的なクレー、感情表現への皮肉なオマージュ
❸死を前にして存在意義を見出そうとするクレー、巨匠に対する嫉妬からのオマージュ
・似ても似つかない、決定的な悲しみに嘆く人間だけが手にする普遍的な悲劇性・崇高性、不治の病、マーケットの冷え込み、独特の軽やかなアイロニーによって異化、表情は悲しみで歪んでいるが悪魔と契約したバケモノになりそう


ブリュッケ(橋)

…新しい芸術の橋渡し、機械文明に染まらない人間性の回復を目指す
→前例のない原色、純色の対比や鋭く尖ったフォルム
→同郷、同年代で共同生活のような活動、ローカル

キルヒナー

…ブリュッケのロゴを手がける

23-9. 【ベルリン、フリードリヒシュトラーセ】
・プリミティスム、未開人、素朴な色・線・形で力強い生命力を表し西欧の文化に束縛されない
・ブリュッケ、印象主義に背を向け中世版画・ゴッホ・ムンクの鮮烈な絵画に向かう
・空間恐怖的息苦しさ、第一次世界大戦前の不安を描く、ベルリンの謎の息苦しさ・閉塞感
→近代化で忙しいドイツに原点回帰を促す、ナチズムに似たような精神
・現実逃避的、風景に自己同一化することで不安定な精神を癒そうとした、
近代化に疲れ未開文化へ無責任に憧れる、黒人彫刻への関心はキュビスムと共通した
・キュビスム的抽象が心理状況の説明になっている、
中世版画のぎこちなくも鋭い直線による対象把握とキュビスムは近似している


23-10. 【ブリュッケのロゴ】


24. イタリア未来派 2項目

…20世紀初め
イタリアで脱古典を目指す、遅れていたイタリアに不満、機械文明の礼讃
→詩人マリネッティがフィガロ誌に出した未来派宣言に呼応、マスコミを使った宣伝は新しい
→ほとんどのメンバーを戦争で失い消滅する

ウンベルト・ボッチョーニ

24-1. 【都市の成長】
・ダイナミズムとスピード感、動きを分析、連続写真のような動きで描いて時間の動きを表現


ジャコモ・バッラ

24-2. 【鎖でつながれた犬のダイナミズム】
・多くのラインを描くことで動きが鮮やかに強調されている


25. ロシアンアヴァンギャルド 3項目

…20世紀初め

カジミール・マレーヴィチ

25-1. 【黒い正方形】
・シュプレマティスム(絶対主義)、自然の再現も理想化もしない
幾何学的な単純な形、絵画が何にも力を借りずに自律する理想の姿、理想という形で描いた

→純粋な芸術的感覚を感じるために色は色、形は形として存在しなければならない
・余白がある、黒い正方形を描いた絵画、非対称絵画ではない、惜しい
→もし余白がなければ黒い正方形を描くことになった、絵画の終焉を宣言、絵画のオブジェ化
デュシャンに限りなく近づいた、現実を越えるために絵画をモノそのものにするほかない
→潔さは大きな影響を与える、現実にあるモノを模倣しないという観念の表象を見る


25-2. 【白の上の白い正方形】
・最たるものは白い正方形、真の美術に色・形は必要ない、行き詰まりを感じ具象に戻る


タトリン

…金属や木片を使って 3 次元の表現をする

25-3. 【絵画的レリーフ】
・構成主義、芸術にも実用性が求められる、ロシア革命による社会主義・生産主義のもとでの展開
・合目的的、純粋に芸術的な形と実用的な目的が一つとなる
・スターリンの独裁が始まると芸術団体は解散させられ社会主義的リアリズムへと移る


26. デ・スティル 3項目

…20世紀初め
世界は水平線・垂直線・三原色でできている
→オランダの美術雑誌「DE STILL」に関わった芸術家や建築家

ピート・モンドリアン

…出発点は自然の要素、純粋な美の実現のためにはテーマを必要としない

26-1. 【コンポジション】
・ネオ・プラクティシスム (新・造形主義)、垂直、水平、冷たい抽象(幾何学的抽象)

・抽象絵画の究極の姿、絵画からモノそのものを描くという考え方がなくなる、
モノをどのような形で描くか悩んでいたけどその形こそが美しいのではないか
・ユニットとして青赤黄、フィールドとしての白、絵画の構造化、世界も構造化しようとする
・世界の多様性に魅力を感じながらも混乱を避ける、厳格なカルヴァン派、神智学を学んだ影響、
自然を支配するということは自然の一部である人間を抑圧することにつながる


26-2. 【ブロードウェイブギウギ】
・色彩の豊かさ・活気あるリズム、ジャズやブギウギにハマっていた
・ユニット・フィールドの関係を見直す、2 つの世界大戦後の混乱、統一された世界観の崩壊
→主観の拡大に身を任せる、多様だが混乱した世界を見て整理しなおした、ドンキホーテ的


テオ・ファン・ドゥースブルフ

…出発点は理論、垂直線、水平線のみとするモンドリアンと決別する
→もともと建築畑にいた、芸術は建築の一部として統合すべきと考える

26-3. 【カウンター=コンポジションⅣ】
・エレメンタリスム、斜め線を取り入れる


27. ダダイスム 3項目

…20世紀初め
従来のあらゆる既成価値を否定する破壊的活動
ダダとはスラヴ系言語で了解

→戦争を引き起こした文明・それに伴う芸術の否定、最終的に何も生み出さないことが理想、イタリア未来派の不条理的詩作が手本、不条理な単語の羅列・無意味な単語を作って詩にする
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からかなり抜け出してきた、なんだこれ
→第一次世界大戦による破壊に対する拒否感・忌避感

マルセル・デュシャン

…既成価値を否定することで新たな見方の可能性に働きかけようとした

27-1. 【泉】
・レディメイド、大量生産された既製品(レディメイド)を組み合わせる
・既製品を作品と読み替える、作品という概念への死亡宣告、
作品とは作品についての言葉以外のなんでもない、言葉はいくらでも紡ぎ出せる
・偶然性を重視、日常の断片が無関係に並べられたコラージュやモンタージュも作品となる
・イメージの不在をイメージの存在によって逆説的に証明しようとしている、既製品は不在による存在証明、絵画は存在による不在証明
・本物はない、世界に残っているのはレプリカ・写真、展示会後に消えた、
おそらくデュシャンが自分で盗難、作品を完結させるシナリオとして意味を持つ
→綺麗は汚い・汚いは綺麗、ないはある・あるはない、マクベス的レトリック
・無意味・無価値なものに新しい原点を求める、シュルレアリスムに受け継がれる
・『世界にあるもの何でもいいから持ってきてアートを作ろう』って言ってる中で便器持ってくるやついたらおもろいよね、先生には怒られるかもしれないが、普通だと思ってたものをひっくり返す


27-2. 【L.H.O.Q.Q】
・モナリザのレプリカにヒゲを描いただけ、女性性・男性性の転換、シュルレアリスムを予感
・イメージが全て、イメージが現実を凌駕する瞬間がここにある、作品という概念の終わりを予感
・チェスに没頭してフランス代表にもなった、アートを捨てたのかと思われてたが1つ作品を残していた、扉の穴を覗くと森・裸の女、小学生になって見る


クルト・シュヴィッターズ

27-3. 【メルツビルト32】
・コラージュ、画面に画面外の素材を貼り付ける
・アサンブラージュ、コラージュを 3 次元で展開する

→絵具の盛り上がりから生まれる裂け目が生々しい女性性器に見える、バロック的、ゴッホ的
・メルツバウ、日用品・工業廃棄物を使った建築、インスタレーションの先駆け
→過激な制作とされナチス政権下で亡命、日用品でコラージュ、構成主義的
→本来なら廃棄される・無視される・汚いとされる物質を集め画面を構成、ダダイスム的
→それらが関連しておらず脈絡がない、シュルレアリスム的、読解・感情移入を促す
→シュヴィッターズは読解・感情移入すら拒否、ロマン主義的、孤高、さくらんぼ
・メルツ、コメルツ銀行の紙、一部が隠れてメルツだけ読めた


28. 素朴派 2項目

…20世紀初め
独学で独自の画風を見出した画家たち、自己流でへたくそがかえって新鮮

アンリ・ルソー

…シュルレアリスムのお手本となった作品を描く
普段は税関で働く日曜画家だった

28-1. 【夢】


グランマ・モーゼス

…懐かしい風景や慎ましやかな日常を描く、もともと農家の女性
→70 歳過ぎから絵を描き始める、80 歳で初個展を開いてから注目される

28-2. 【失われた時間を求めて】


29. 形而上絵画派 2項目

…20世紀初め
日常世界の背後にある世界を表現、合理的思考では割り切れない詩的な直観のような世界
→日常的ではない世界、様々なモチーフを組み合わせ未知の領域を繰り広げる、不気味な沈黙

デ・キリコ

…現実を超えた超感覚的な世界を表現
芸術作品を不滅のものにするために人間的限界の外側へ

29-1. 【街の神秘と憂鬱】
・イタリアの広場に立った時見慣れた風景が疎遠なものに感じる、突然の静寂・孤独に包まれる
・日常の中にある非日常的な不気味さに気づく、不安と焦燥、合理主義の破綻、物理学の発見によるパラダイムシフト、第一次世界大戦前の不穏さ
・輪郭線が明瞭、空気が存在しない風景、人が住めない場所に人が住んでいる不安・孤独
・後ろ姿はベックリンに影響をうける、愛するニーチェ・ショーペンハウアーがいるドイツ、ドイツにいながらイタリアを愛するベックリンに対するイタリア側からの応答


29-2. 【勝ち誇った愛】


30. シュルレアリスム (超現実主義美術) 3項目

…20世紀中頃
見えるものを脈絡なく繋げて見えないものを見えるようにする
合理的なものに支配されない

→合理的なものによって抑圧された人間性を不合理で救済しようとする、
フランス的合理主義の終焉、ドイツ的ロマン主義による西洋美術の救済
→ダダイスム的な反芸術性をファッションとして取り入れる、無意識の世界に踏み込む
→モダニズム、古代ギリシア美術・古代ローマ美術からかなり抜け出してきた、なんだこれ

サルバドール・ダリ

…リアルなシュールを描く、ショッキングな表現、イメージで逆なでするよう、写実的
→心の奥底にある不条理・潜在意識を生のままつかみ出してデロリと見せつける

30-1. 【眠り】


30-2. 【茹でたインゲン豆のある柔らかい構造(内乱の予感)】
・デペイズマン、異なる文脈を持つイメージを組み合わせ超現実的・不条理な世界を生み出す
→なぜか薬剤師が登場している
・インゲン豆、弾けそう、内乱の勃発、内乱が起きるとインゲン豆のスープを飲んでいた
→口を通り生命を保つ食物の記号、食欲と性欲という生命のドラマ、一体だったものを懐かしむ
・セクシャリティと暴力、食べ物への執着、妹に対する執着、厳しい父親との確執
・瞑想的・深刻的・記念碑的、人体は無理矢理解体され建築的構造として再構成される、
インゲン豆の膨らみ・潤いを含んだ光沢はセクシャリティを強調、バロック的、ロマン主義的
→生命的なものの危機的状況を意味する、戦争への反対、潜在意識における予言力の高さを認識


マックス・エルンスト

30-3. 【聖アントニウスの誘惑】
・オートマティズム、意識的に偶然の要素を利用して無意識のイメージを引き出す
・フロッタージュ、素材の上に置いた紙を鉛筆でこする、出てきた形をイメージとして読み取る

・デカルコマニー、絵具を付けた紙に別の紙を乗せる、出てきた模様をイメージとして読み取る
→第二次世界大戦の動揺・鬱屈さ・怒り、フロッタージュ・デカルコマニーにより荒廃を表現
・悪魔の生み出したバケモノの攻撃で試される聖アントニウスの苦悶を描く、バケモノ・醜いもの・不気味なものを形にする、グリューネヴァルトを意識させる
→魅力的な女性たちで聖アントニウスを堕落させようとするという続き、シュルレアリスム的
・バケモノはドイツ・ナチズムの脅威、生い茂る植物は戦争の恐怖、
自然の持つ圧倒的エネルギー、創造と破壊、ドイツ人が根源的にもつアンビバレントな感情
→自然の脅威とは暴力の持つ圧倒的なエネルギー、暴力はドイツ・ナチズムそのもの
・過度のリアリズムと空間恐怖、なんともいえない圧迫感・閉塞感


ルネ・マグリット

30-4. 【イメージの裏切り】
・言葉とイメージをうまく使った作品、絵というものをもう一度見てみようというメッセージ
・パイプの絵、下にThis is not a pipe
→フーコーの本、白い紙に黒いインクで白と書いて何色?白か黒か
・theとaの違い、自分が関わる特定のパイプと頭の中の一般的なパイプ、人間だけが持つ能力、違うものを同じものとして認識できる能力、theとtheを繋げてaにできる、5万年かけて作られた脳と感覚の謎




31. エコール・ド・パリ 4項目

…20世紀中頃
パリに集まってきた世界各地の芸術家、カフェをサロン代わりにして刺激し合う
→芸術の表舞台で起きていた様々な芸術運動に参加せず自分の世界を表現する

マルク・シャガール

…幻想ではなく愛というテーマと故郷ロシアの思い出を描く、シュルレアリスムと呼ぶな
→夢のような非現実的なシーンの表現はロマンチックな愛の高揚感を描く

31-1. 【誕生日】


アメデオ・モディリアーニ

…金銭的・物質的に恵まれなかった、飲酒、ドラッグ、女性関係などの数々の伝説に彩られている
→モデルの多くは知人が多く類似のスタイルを持っている

31-2. 【ジャンヌ・エピュテルヌの肖像】


藤田嗣治

31-3. 黒田清輝の弟子、黒い色を使うな
→フランスで裸婦を描く、ベビーパウダーを絵の具に混ぜて独特の肌の色を新しく作り出す、黒い線、面相筆の中に針を刺して細い線を新しく作り出す、猫の絵、戦争の絵
→シャンパンの会社がスポンサーになって礼拝堂を建ててその壁画を描くのが最後、黒を使わない、教育の力

31-4. 【アッツ島玉砕】
・第二次世界大戦下、ルポタージュを描く、記者などが取材した内容をニュースとして報告、侵略戦争に協力したことは間違いない、愛国心を鼓舞された国民はいる、腫れ物に触るよう
・戦争に協力せざるを得なかった画家として屈折したナショナリズム、
西洋絵画の伝統に深く思いを馳せた画家としてのコスモポリタニズムの対比
→善悪を超えた戦争の 1 つの証言となる
・戦争画、プロパガンダとして描かれる場合、事実を歪ませて描く
勝っている方が描けば負けている側の無惨さが強調される
負けている側が描けば勝っている側への非難・負けている側への同情が強調される
→評価が難しい、戦争後勝った側と負けた側では解釈が大きく異なる、
リベラルとは言い難い上下関係
勝った側は歴史の正当な記録として表彰する
負けた側は敵国の圧力・自国の反省で歪んだ愛国心の産物として断罪する
→文脈のみで観察して倫理的な視点から解釈するのは間違っているのでは?
・殺す人間の無慈悲・殺される人間の悲壮の対比、目線は愛国的、全ての登場人物の同質性、勝つ負けるの上下関係を無効化、宗教的、死の舞踏の寓意を含み出す


32. 抽象表現主義 5項目

…20世紀中頃
どこにも属さないオリジナルスタイル

ジャクソン・ポロック

32-1. 【ラベンダー・ミスト】
・ドロッピング、巨大なキャンバスを置いて絵具をぶちまける
・第二次世界大戦以前の絵画に影響を受ける、インディアン文化に神話的価値を見出す、対象を解体、ドロッピングと言う造形的戦略
・恣意の産物ではあり得ない線による構造、色彩の繊細さ・優美さ、和やかで満ち足りた画面、タイトルは具象的に読むことを促す、親密さを感じる
・文化後進国アメリカの焦り、前衛的な抽象表現を早く取り入れたい


ジャン・フォートリエ

32-2. 【人質】
・アール・ブリュット、子供の落書きや障害者の絵など芸術の教養に毒されてないもの
・アンフォルメル、混沌とした感情・心の痛みを表現、描く行為自体が重視される、反絵画的


ウィレム・デ・クーニング

32-3. 【女Ⅰ】
・アクションペインティング、絵画とは作家の制作中の身体的行為の軌跡、偶然性
・オールオーヴァー、画面全体を均質に覆う、画面の巨大化で超越的なものを嗜好する


フランク・ステラ

32-4. 【恐れ知らずの愚か者】
・ミニマルアート、同じ大きさの要素を同距離・同位相に並列する
→芸術家の主観に基づき絵画を構成する最小単位を抽出して作品にする
→形によって意味を作るのではなく、モノそのものが現存在としてそのものとしての意味を担う、
立方体は立方体でそれ以外の意味はない、無意味性という意味
・シェイプド・キャンバス・ペインティング、キャンバスの形を四角から解放
→抽象は造形の必然から選択肢の 1 つになった、
支持体そのものをモチーフにし抽象絵画を模倣することで絵画そのものをテーマにした
→モノそのものの存在感を絵画にもたらそうとして生まれた抽象絵画だったが、
再びイメージ生成装置としての絵画に立ち戻りそう


マーク・ロスコ

32-5. 【ロスコ・チャペル壁画】
・ゴヤを思わせる暗い絵、呪詛めいたモノクロームの連続、圧倒的存在感、
鑑賞者を突き放す寡黙な色面、スイスのイメージとあまりにかけ離れている
・水平方向に 2 つのユニットに分割されるだけ、作品が限りなく影に近づく
→図と地の関係を解消、教会装飾のよう、崇高さ
・不可解さ、抽象表現のインフレによるものではない、ユダヤ民族の歴史・運命に覆われている、究極のイコノクラスム、共に歩んできたユダヤ性


33. ネオ・ダダ 2項目

…20世紀中頃
芸術を嫌い、芸術とくくられないように作品を作る
→自分の外側にある日常的イメージ・日用品で現実との関係性を作る 、抽象表現主義は内向的

ロバート・ラウシェンバーグ

…日用品を集める、集合体は何かを意味するものではない
→集められた日用品の一つ一つがその時・その場の自分の感覚に引っかかったもの

33-1. 【ときの忘れもの】


ジャスパー・ジョーンズ

…ありきたりだと思っていたものの見方を変える、新しいイメージを感じさせる
→見るとは何か・イメージとは何か・記号とは何かという問いだけが存在

33-2. 【target】


34. ポップアート 4項目

…20世紀中頃
アートの民主化、アートに大衆的なものを取り入れ成立させる
商品・映画・コミックがテーマ

→日常をコラージュ、第二次世界大戦後にも存在していた伝統的権威を批判
→芸術とは人の内部にあるものではなくもっと表面的なもの、人間の共通のイメージ
→モダニズムの終わり、古代ギリシア美術・古代ローマ美術から抜け出したかな、わかりやすい

34-1. アートも大量生産だ、アートは崇高なんかじゃない
→デュシャンの主張を汲んで時代も後押しした
→一般の人もアートを保有するようになる


アンディ・ウォーホル

…時代を象徴する人・モノを異化して現代を表現
大量消費社会・死がテーマ
→「人生は 1 回きりである」ということを多数性のなかに埋めて見なくなってしまっていると警告

→2 重3重にブレさせることでアメリカの屈折した自意識を表現

34-2. 【キャンベル・スープ缶】
・ポップアートの始まりを告げる、情報はメディアに載った広告を通して伝わる、第二次世界大戦で勝利したアメリカは大量生産・大量消費を基盤とする資本主義経済を築いた
・手書きとは思えないほどのくっきりした色彩・線、影・背景はない
→素晴らしい食品を天才が独特のタッチで描いで芸術にするのではなく、
ロゴのようにシンプルに提示した、缶詰のよう、社会にふさわしかった
・平等、いつ誰が食べても同じ味、缶詰は人種も経済事情も関係ない、同じ生活がもたらす安定感


34-3. 【60の最後の晩餐】
・巨匠による伝統的絵画への攻撃、アメリカのプライドとアイデンティティが表れている、
アメリカがヨーロッパに抱くなんともいえない劣等感・憧れが根底にある
・最後の晩餐は人間の生々しい欲望を綺麗に見せる絵画
→大量に描くことで食事の反復という日常を表現、最後だろうがなんだろうが食事は欲望


34-4. 【マリリン】
・シルクスクリーン、写真を引き伸ばしシルクに焼き付けてキャンバスに当てインクを刷る
→手書きでなくても転写できる、何度も同じイメージを作れる
→絵画と版画を融合、作者が生み出す 1 回きりの絵画という概念を刷新、大量消費社会にふさわしい
・3 段階、黒の輪郭を刷る、色の色面を刷る、黒の色面を刷る、非現実的・人工的
・アメリカ文化の象徴、アメリカナイゼーション、アメリカ文化は軍事力・経済力以上に影響する
・モンロースマイル、複雑な家庭で育った子供が持つ印象的な笑顔、口以外は笑っていない、目はどこを見てるかわからない
→自分を守るために周囲の顔色を伺う、自分を好きになれない
空想上のアイデンティティを作り上げるためフィクションの世界に惹きつけられる
→里親・孤児院をたらい回しにされ性的虐待を受け吃音症になった、繰り返される離婚、スターになるも徐々に精神を病む、孤独・不幸だったのかもしれない
・あえて顔のみを切り取る、マスメディアに映る虚像としてのマリリンを虚像のまま見せる、虚ろさを強烈に印象づけ追悼の念を喚起する、マリリンは外見だけをひたすら消費されていた


35. ポストモダニズム 26項目

…20世紀後半〜
ポップアートの感覚は日常生活・環境と交錯する中で様々な広がりを見せる
→いろいろな素材や装置まで芸術に取り入れられる
→パフォーマンスやハプニングのような美術館では展示できない芸術も増える
→アートとアートではないものを見極めるのが難しい時代となる

35-1. ホワイトキューブ
…美術館・ギャラリーの中、アートの産業化を感じる

→外的なものが限られている中での強度、モノ・サービスを作る
→アートの価格が高くなる、アートの商業化から自由になろう、表現だけのアートがしたい
→買えない作品を作ろう、コンセプチュアルアート、パフォーマンスアート、ランドアート
→ポップアートは並んでいない、アートの産業化を皮肉る


35-2. ブラックボックス
…劇場の中
→外的なものが増えて変化する中での強度、活動・コミュニケーションを作る


ドナルド・ジャッド

35-3. 【無題(スタック)】
・ネオ・ミニマルアート、作品を最小限の色・形で表現する、色や形の構成要素を最小限まで切り詰め単純化、禁欲的

→幾何学的な形態を持つ抽象作品、極限までいって箱になった
→わびさびと繋がりやすい、建物・デザインと親和性が高い
・色・形・配置などで空間を認知させる


ジョゼフ・コスース

35-4. 【1つと3つの椅子】
・コンセプチュアルアート、文字・数字を素材にして表現をする、コンセプトがメイン、人間の認識に対して問いかける、観念的
→考え方・ものの見方にアートの本質がある、ミニマルアートの派生型、意味の方に寄っている、説明が必要、背景を聞く、今の現代アートの世界では当たり前になっている
→見た目の美しさが必要、考え方・ものの見方を追求するなら論文でもいい
・左側に写真に撮った椅子、真ん中に本物の椅子、右側に文字で定義した椅子
→文字・数字などで関係・概念を認知させて考えさせる
・原点はデュシャンの泉、説明が必要
→見た目も重要、文字で関係・概念を認知させるなら論文が一番


河原温

35-5. 【日付絵画】
・アルファベットと数字だけ描く、どんな風に描かれたかを想像する
・24時間以内に完成しなかったら破棄、その頃に蘇る力
→絵画はモノ、身体の動きの痕跡によって生まれる、地球が1回回るということに向き合う、時間は全人類が唯一平等に所有していたもの


ジャン=ミッシェル・バスキア

…モチーフは頭蓋骨・内蔵など解剖学をもとにして描かれている
→母親にもらったGRAYの解剖学書、ロックバンドの名前もGRAY
社会への反抗としての頭蓋骨、メメントモリ、ダンスマカーブル

35-6. 【無題】
・ニュー・ペインティング、現実世界にある感情や欲望をストレートに表す
→禁欲的なミニマルアート・観念的なコンセプチュアルアートに反発
・グラフィティアート、建物の外壁・道端にスプレーや絵の具で落書きを描く
→カウンターのメッセージを伝えるために非合法な場所にアートを残す、顔を出さない
→オークション中心に人気が高まって市民権を得た、ファッションとのコラボも多い、アート関係者が無視できない
→美術館でもグラフィティ展の開催、パブリックアートの一部にもなる
・1本1本の線は考えないで描いた線がない、殴り書きに見えて


アラン・カプロウ

35-7. 【ハプニング】
・パフォーマンスアート、人間の身体を使って表現をする
→偶然性を取り入れる、観客が参加する、場所が様々
・メディウム、何を媒介にするか、身体をメディウムにする
…初期は過激、身体に痛みを与える、絵画では伝えきれないものを伝える
→銃で撃たれる、既成概念を変革したい、アートはキャンバス上・オブジェだけではない、活動もアートだよね、コンテンポラリーダンスも影響を受ける
→身体を道具にして描く、セクシャリティを問題にする、テクノロジーと身体の関係を問題にする
・来訪者に体験させてそれを作品にしていく、来訪者が起こすハプニングで作品が作られる、影響を受けあって相互的に更新されていく


マリーナ・アブラモヴィッチ

35-8. 【リズムゼロ】
・ギャラリーに佇んで鎖・銃などのオブジェが会ってアブラモヴィッチにアクションを取る、演奏を取り入れる
・パフォーマンスアートの中では、すごい踊るダンス作品もあれば、ダンス作品なのに全然踊らない作品もある
・身体性をどういう風に感じさせられるか、身体を使えば一番ダイレクトに伝わって共感してもらいやすい
・身体性があれば、よりどう売るのか?を考えるようになる、アーカイブの難しさ


クリスト & ジャンヌ・クロード

35-9. 【包まれたライヒスターク、ベルリン】
・ランドアート、大地を使って表現をする
・ライヒスターク、旧ドイツ国会議事堂、統一ドイツの象徴、先祖の拭うことができない黒歴史
→ライヒスタークを包装、忘れられた場所・こと・感情を露わにする、
隠された真相を露わにする、見せもの小屋としての美術館を告発
・隠すことで見えるものがある、当たり前ゆえに見ていないものを見ていないと気付かされる
・布という絵画を支えていた支持体で隠す、図と地の関係を解消、凹凸というイリュージョン
→絵画そのものの比喩となる、布はテーマに応じて隠されることで存在を保証されていた、ここでは隠すということで存在が保証される、隠されたものは逆説的にテーマとなる


ロバート・スミッソン

35-10.【スパイラル・ジェティー】
・大地や自然そのものを作品の素材とする、大規模な作品が多い
→自然回帰志向、反商業主義、ミニマル・アートに対する反発がある
・アメリカのランドアートは自然を変形させて作る
イギリスのランドアートは自然を壊さずにそのまま使って作る
→ロバート・スミッソン、スパイラル・ジェティー、アメリカのソルトレイク、湖に石・土を積み上げてグルグル
→クリスト & ジャンヌ・クロード、橋を布で包む
→リチャード・ロング、石・木材を並べる


ジュディ・シカゴ

35-11.【The dinner party】
・インスタレーションアート、空間を使う
→屋内でも屋外でも成立する、借景するかしないか、非常に規模が大きい、コンセプト重視、没入感・インタラクティブな要素、テクノロジーが関わる
→頭脳で見るアートという概念が広がってきた、デュシャンがルーツ、1970年に定着し始める
・女性の歴史を可視化、具体的に空間を体感していく、並ぶ料理を前にした時に自分がどう感じるかという体感、空間に入って初めて成立する


ダン・フレイヴィン

35-12. 【V.タトリンのためのモニュメント】
・ライトアート、ネオン管などを彫刻の素材のように使う、新しい感覚で光の効果を取り入れる


ヴィクトル・ヴァザルリ

35-13. 【Vega-Nor】
・オプティカルアート、色や線の錯視効果で画面が膨らんだり揺らいだりするように見える


ユーゴ・デマルコ

35-14. 【変化するプリズムと反射光】
・キネティックアート、風力などを取り入れて形態変化や虚のボリュームを作り出す


レト・ボラー

…作品には 1 つも題名がない、生乾きのような生々しさ、お菓子のよう、イタズラっぽい雰囲気
→絵画とは何か?どんな機能を持っているか?何か積極的な役割があるのかを問う

35-15. 【無題】
・プラスチック・金属箔でできた薄い形が壁・床を侵食、絵具がぶちまけられたかのよう、
絵画と建築を新鮮な方法で結びつけ壁画という概念を大きく逸脱させた
→美術館の基本的な展示場所である壁・床が絵画の支持体みたいになった、
図と地の関係が読み替えられている、建築が額縁となり同時に巨大な絵画へと変わる
・芸術に様式は必要なものなのか?美術館に置かれるものは芸術でなければならないのか?
芸術とはアプリオリに存在するものなのか?
→いや、芸術は人間の生み出した装置にすぎない、芸術は芸術以外のものを排除し特権化する


ゲオルグ・バゼリッツ

…逆さまの肖像画を描く、アイデンティティへの問い
国家とは?社会とは?個人とは?
→バゼリッツの認識はヨーロッパ・世界全体のアイデンティティの問題に拡大

35-16. 【自画像I】
・ポップアートへの反応、ベルリンの壁ができた時に西側に亡命し具象絵画の可能性を見出す、抽象絵画が力を失っていることをわかっていても具象絵画へ向かえない、ドイツ美術はナショナリズムを想起させそう、ナチズムに対する嫌悪感
・粗暴で荒々しい画面、ナショナリズムを想起させ過去の記憶を刺激
→屈折したナショナリズムと宙ぶらりんのアイデンティティを引き出し衝撃・不快感を与える


アンゼルム・キーファー

…ナチズムの過去を巨大な画面・壮大な構想で描く、ドイツのアイデンティティがテーマ
→批判ではない、神話的過去との関連性からアイデンティティを問う
→アメリカのマーケットで評価されその後ドイツでも評価される

35-17. 【リリト、紅海を渡る】
・巨大な画面に鉛・衣服がそのまま貼り付けられる、リリトはカバラ的世界における女性原理、ドイツの歴史ではなく人類における原理の闘争が問題、画面の汚さはドイツ的
・雨にさらされて腐食していく重い物質としての鉛、廃墟を思わせる砂・泥の体積、血のようなもので汚れてくしゃくしゃになった衣類、引き抜かれたような髪の毛、
・歴史を遡り現代を分析する、最終的には母胎に回帰していくだろう、
人類史に関わる秘蹟がテーマになる、神の見えない恩寵を見えるように


リクリット・ティラヴァニ

35-18. 【無題1994(ビューティ)】
・リレーショナルアート、日常的なコミュニケーションをアートのコンテクストに取り入れる
・ギャラリーで食事を振る舞う、それがアートになる、言葉の通じない人とどうコミュニケーションをするか?
→行為が作品になると何も残らない、マルチカルチュラリズム
→内輪ノリじゃんっていう批判、関係性を外に開いてソーシャル・プラクティスに発展、ギャラリーの中から関係性を広げる


ペドロ・レイエス

35-19. 【Palas por Pistolas】
・ソーシャル・プラクティス、社会問題・地域問題にアートで取り組む
・拳銃を溶かして作った鉄でできたシャベルで穴を掘って木を植える写真・その育った木を展示
・死と生、拳銃は死の象徴、植物は生の象徴、シンボル的な効果
・アートの持つ力は想像を喚起すること、行動につながる
・アートという言葉が入っていない、美が入らない、美が入ると戦争の活力になったり誰かの憎悪を増やしたりするのではという警戒、兵器を楽器に


バンクシー

…グラフィティを描く匿名の画家、ストリートにアートを残す、非合法
→誰もが楽しめる、必要なのはブラックユーモアを楽しむセンスだけ、美術館とは距離を置く

→美術史や歴史の素養があればより深い味わいを楽しめる

35-20. ネズミ、社会の嫌われ者・危険因子、ストリートアートの象徴、自身でもある
→グラフィティは非合法で社会に認められてはいない、コソコソ
→ヒップホップカルチャーの表現の一つ、ラップ・DJ・ブレイクダンス・グラフィティ
→アートの民主化・社会の民主化を目指す、アンディ・ウォーホルが最たる存在
→残っているのは市民が気に入った作品のみ、自分たちで決めるという市民社会の達成
→次の美術史は美術館では収まりきらない


35-21. アートテロリスト、法を無視して実力行使する点をテロリストに例えられる、暴力はない
→博物館に無許可で侵入し無断展示、パリスヒルトンのアルバムの偽物を本物とすり替える
→共通しているのは怒り、経済格差・弱者への無関心を生み出した資本主義・現代社会


35-22. 【Love is in the Air】
・ステンシル、切り抜いた型紙を壁に当ててスプレーなどで塗料を吹き付ける
・借景、周りの風景・構造を表現の一部に組み込む、東洋の庭園
・落首、道に看板を立てて風刺絵・歌を匿名で発表

・イスラエルに支配されるパレスチナ市民の抵抗がモチーフ
・イスラエルはアメリカの支援で経済成長、パレスチナは不当な軍事的支配を受け不自由
→イスラエルが建設した壁、国際法違反、パレスチナを世界最大の野外刑務所へと変えている
・石ではなく花束、怒りを愛の象徴にコラージュし紛争地域に投げ込もうとする


35-23. 【Love is in the Bin】
・シュレッダー事件、オークションにて 1 億 5000 万円で落札された作品をシュレッダーで断裁、
アートを投機対象とするオークションビジネスへの批判、資本主義批判
→史上初めてオークションの最中で生で制作された、落札者もそのまま購入


35-24. 【Black Lives Matter】
・基本的に作品にはユーモアが一体となっているがこの作品は違う、ユーモアなし
・白人警察官が膝を黒人の首に押し付ける、黒人は死亡、反人種差別への抗議
→出身地はブリストル、黒人奴隷貿易で栄えた港町、黒人と白人が混ざった文化、ブラックミュージックにパンク・ロックが取り込まれる、反戦争・反資本主義


35-25. 【Game Changer】
・看護師のコスプレをしたヒーローのおもちゃで遊ぶ少年、バットマンなどが捨てられている
・医療従事者へのエール、新しいヒーローもいずれ使い古されてしまうという政府への批判
→医療従事者がヒーローと言われている一方で低賃金・長時間労働で犠牲を強いられた、もし拍手だけで満足すれば彼らを使い捨てることになる


落合陽一

35-26.【nullの木漏れ日】
・メディアアート、コンピューターテクノロジーを使って表現をする
→テクノロジーアートがルーツ、1960年代のビデオアート、コンピューターの多様が広がる、インタラクティブ性も高くなる
→バイオアート、生命体を扱うアート、長谷川愛
→プログラミングアート、AIやプログラミングを使うアート、チームラボ
→最新の論文を読む、いずれ日常に浸透するような技術をアートとして身近にする、世界が広がっていく、認識が変わっていく、アートが未来を提示してくれる
・デジタルネイチャー、テクノロジーによってデジタルとアナログ、リアルとバーチャルが融合し、人間と環境が新たな自然を構築する


おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
修正すべき点やご意見などあればXでお声をいただければと思います。
修正の際は、番号を指定して、フォーマットをなんとなく合わせていただけると助かります。

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