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経済に関するメモ(14) 【金融危機・金融規制】

本メモは経済の基礎的な内容に関するメモです。


1. 金融危機 7項目

1-1. 金融危機
…多くの銀行の倒産・不良債権による損失拡大により金融システムが不安定になる状況


1-2. 不良債権
…元本・利子の返済が滞って債務不履行となる可能性があるか既に債務不履行となっている貸付


1-3. 金融危機への対応
❶中央銀行による資金供給
…金融危機における中央銀行の最も重要な仕事は資金供給で金融システムの安全化を図ること
→最後の貸し手として銀行に無制限に融資を行い、銀行取付を防いで金融システムの崩壊を防ぐ
→買いオペを積極的に行い、貸出が抑制されて預金払い戻しや債務返済ができない状態を防ぐ
→公的資金は税収で賄えず国債発行で賄うため将来の税収で償還されることになる

❷預金保険の活用
…先進国では銀行倒産の際に政府が一定額まで預金を保護する
→預金者に安心を与えるという点では預金保護の上限は設けない方が良い
→安全を保障された預金者は銀行経営に無頓着になるというモラルハザードを起こし、銀行経営者の緊張感が緩むことで貸付審査が甘くなり安易な貸付が行われ経営が悪化する
という銀行のモラルハザードが起きる
→大口預金者に銀行経営を監視させ銀行にプレッシャーを与えるために上限を設ける
→日本のバブル崩壊後のように深刻な金融危機が起きた場合は上限の撤廃や引き上げが行われる

❸政府による銀行への資本注入
…銀行が新たに発行する株式を政府が購入
→一般に不良債権問題で自己資本比率が減少し過小資本状態に陥ると政府は早期是正措置を発動する
→金融危機では数多くの銀行が過小資本状態となるため資本注入で金融危機の深刻化を防ぐ
→銀行の規模が大きい場合は破綻によって金融システムと経済に大きな悪影響を及ぼすため、「大きすぎて潰せない」という事情があり公的救済が行われる可能性
→資本注入を受けた銀行は経営改善できれば公的資金を返済できるようになり、返済時の株価次第では政府に利益が生まれることもあり、
資本注入のための公的資金は必ずしも全額が政府の損失となるわけではない

❹その他の公的資金投入

・不良債権買い取り
…銀行が抱える債権処理を進めるために政府が不良債権買い取り期間を設立し買い取りを行う
→不良債権をバランスシートから引き離すことで損失を確定し拡大するリスクを回避する

・銀行の国有化
特に規模が大きい銀行が債務超過となった場合は政府は銀行を閉鎖せうに国有化することで、預金者を保護すると同時に優良な借り手企業に対して融資を継続することで混乱を防ぐ
→政府は不良債権を財政負担で処理しその銀行を他の金融機関に売却することで、公的資金が回収できるが全額とはいかず政府の損失となる場合が多い

・吸収合併の際の資金贈与
吸収合併が行われれば預金や貸付は新しい銀行に引き継がれるため預金者は保護され、借り手企業への融資も継続される
→財務状況が悪い銀行を吸収合併する場合は受け皿機関の経営も危うくなるため、政府が資金贈与を行うことで吸収合併を実現する
→引き継ぐ受け皿機関のインセンティブは破綻銀行の顧客を取り込むことができる点である


1-4. 通貨危機と金融危機との関連性

❶通貨危機が金融危機を引き起こす場合
・外国通貨建て短期債務を借り入れ、自国通貨建て長期債務を貸し出すと、
通貨と満期の両面で資産負債のミスマッチが生じて通貨危機が金融危機を引き起こす
・通貨危機で外国通貨に対して自国通貨の価値が減少して債務超過に陥り金融危機を引き起こす
・自国金融機関に外国投資家が短期で融資している場合は資金を引き揚げてしまうことで、自国金融機関が流動性不足に陥り国全体で流動性危機が生じ銀行取付が金融危機を引き起こす

❷金融危機が通貨危機を引き起こす場合
・金融危機が発生したときに発展途上国のように預金保険制度が十分に整備されていなければ、公的資金投入される際に貨幣供給増加を通じて直接的に信用を拡大させて資金調達するため、自国利子率が低下し自国通貨の価値を減少させ通貨危機を引き起こす
・金融危機が発生したときに国債発行で資金調達するならば、負担を軽減するためにインフレを起こしたいというインセンティブを高める可能性があり、購買力平価に従えばインフレ率が上昇すると自国通貨の価値を低下させる圧力が高まる
→民間経済主体がインフレ抑制のスタンスを信認していなければ自国通貨の価値低下を予想して、固定為替相場制度に対する信認が低下し投機攻撃が起こり自己実現的に通貨危機を引き起こす


1-5. 通貨危機における伝染効果
・自国で通貨危機が発生すれば自国通貨が低下し自国の国際価格競争力が高まる
外国では相対的に通貨の価値が上昇し過大評価されて国際価格競争力があ
→固定為替相場では外国の貿易収支赤字が増加して中央銀行の外貨準備が減少し、外国通貨に対しても投機攻撃が起こり通貨危機を引き起こす

→マクロ経済環境が類似することで伝染することも考えられる、ドルペッグ制を採用している場合に米金利が上昇すると各国で金利上昇させなければならない
→金利上昇がこれらの国の経済に対して好ましくない場合には引き上げられず、投機家が固定為替相場を維持できないとこれらの国に投機攻撃が起こり通貨危機を引き起こす


1-6. 2008年の金融危機
…2008年のリーマンブラザーズ倒産を機に世界各国で株価が暴落し、
銀行同士が疑心暗鬼となって銀行間取引が収縮したことにより、
アメリカのCPの買い手が見つからず企業の資金調達も困難になった

・Financial Crisis
…債務危機
→資産消える、現金消える、通帳や口座にあるけどおろせない
→皆が金返せと銀行に殺到する、マスクみたいな
→信用創造、通貨の価値がゼロに近くなる、物々交換

・Financial Crisisの対策
…現金を供給するしかない、中央銀行がお金を刷りまくる(金融緩和)
短期間で勝負しないといけない、1〜2ヶ月で物々交換になるかもしれない

・サブプライムローン
…低所得者に貸し付けられた高リスクの住宅ローン
最初は返済額が低く設定されてその後返済額が急増する
アメリカでは住宅投資が盛り上がり住宅価格上昇が続いてバブルが発生していた
→アメリカでは住宅の耐用年数が長く中古住宅売買も活発で住宅価格が重要指標となるため、住宅価格の上昇が続けば購入した住宅の担保価値が上昇し返済額が急増する前に
借入金利の低いローンに借り換えることができるという期待があった
→インフレ予防のために金利が引き上げられると住宅価格は下落し、
返済額は金利と連動するため返済に行き詰まる人々が多くなった
→このサブプライムローン問題が金融危機に発展した要因は証券化にあった
証券化の特徴はリスクの低いタイプとリスクの高いタイプに階層化される点であり、過去のデータがなくリスクが過小評価されもともとリスクの高いサブプライムローンからリスクが低いと誤解された証券が生まれてリスクの高い社債と束ねて更なる証券化が行われた
CDSも金融機関に誤った安心感を与えていた


1-7. 2020年のコロナ危機

・Coronavirus Crisis
…生産・需要の縮小による不況
→生産・需要減少→収入低下、失業率上昇→消費減少→生産・需要減少の負のスパイラル

・Coronavirus Crisisの対策
…需要減少を補う、日本政府が消費にもってく、公共事業やりまくる(財政拡大)
→対処を間違えるとジリジリ長引いて不況のまま、ピークは見えない
コロナに関しては消費に繋がるものを頑張れない、消費を抑えようとする、矛盾

・経済を動かす力、経済成長に必要なもの
❶生産性の成長、傾き
❷短期の信用サイクル、小さな波
❸長期の信用サイクル、大きな波
→Financial Crisisは大きな波が下がった
→Coronavirus Crisis はベースの傾きが変わった、しかも自分から、世界的に

・コロナ危機でダウ、REIT、原油、ゴールド、ビットコイン急落
→ドル建て資産を現金化する際のドル需要、ドルだけ強い
→ドル不足、最悪なのは資金調達できなくて破綻につながるケース


2. 金融規制 8項目

2-1. 銀行規制の分類

・事前的規制
…個々の銀行の破綻を防止する

・事後的規制
…銀行破綻に伴うシステミックリスクに対処する、セーフティネット


2-2. 競走制限的規制
…新規参入、店舗、業務、金利に関する規制


2-3. バランスシート規制
…競走面で自由な活動を認める代わりにバランスシート上で規制


2-4. 検査・考査
…政府や中央銀行が銀行に赴き経営状態を調べる


2-5. 市場規律
…預金金利の変動が健全な経営を行おうとするインセンティブを与える


2-6. なぜ銀行規制が必要なのか
…国民の様々な生産活動や消費活動の収縮・低迷を防ぐため
情報の非対称性を減少させて資家の逆選択による信頼低下を防ぐと同時に、
準備を備えることで信頼低下による銀行取付や銀行破綻を防ぐことで、
決済機能や貨幣創造機能の機能不全を防ぐことができる


2-7. 護送船団行政
…戦後の競走制限的な金融規制、特に銀行業については厳しかった

・新規参入に関しては事実上禁止され 1980 年代まで新規で銀行の設立は行われなかった
・店舗規制に関しては新規で支店を開設することは認められなかった、地域の競走を激化させる
・業務規制に関しては銀行と証券を兼営することや資本関係を持つことは禁止され、細かくグループ分けされて業務分野も細かく規定された
・金利規制に関しては政府が決定して低金利を維持すれば経済成長が促進されると考えられ、銀行同士が金利を引き上げて預金獲得競争に走れば体力のない銀行が破綻することも心配された

→これらは法令で明文化されていないものが多く行政指導と呼ばれる不透明な手法で決められた
証券業については特に売買委託手数料の規制が重要視された、
収入源が売買委託手数料となった証券会社は顧客に売買を繰り返させることに注力したため
規制水準は非効率で経営が弱い中小の金融機関でも経営が成り立つように決められた
→産業保護的な政策を続けた結果 1990 年大後半に大手銀行が破綻するまで破綻は 1 件もなかった
→企業間競走が働かずに顧客サービスは低下し技術革新のインセンティブは弱くなり、
金融革新の導入が遅れたことで特に銀行の国際競争力が低下した
→安定的であったが金融技術の発展が遅れた非効率的な銀行システムが形成された


2-8. 日本版金融ビッグバン
…金融自由化、競走制限的規制の撤廃、抜本的な証券市場の改革
→世界中で金融自由化が実施され金融業界の競争も世界規模で行われるようになり、日本でも金融自由化が始まる

*銀行業の規制緩和

❶金利の自由化
…預金金利規制が段階的に撤廃された、1970 年代末に自由金利が導入され、
1980 年代には大口預金から徐々に金利の自由化が進む

❷新規参入の自由化
…長らく禁止されていた、1990 年代前半には証券会社が信託銀行を設立することが認められた

→これらは段階的で他の先進国より立ち遅れることになった
→最終的には日本版金融ビッグバンによって競走制限的規制は撤廃された
発端は橋本龍太郎首相が支持した
「我が国金融システムの改革~2001 年東京市場の再生に向けて~」
であり、フリー、フェア、グローバルという 3 つの原則を示した
為替取引の自由化、持ち株会社の解禁、売買手数料の自由化が中心となる
→この中で銀行業に対してはプルーデンス規制が強化され、
証券業に対しては公正な取引を確保する投資家保護の規制が強化された

・金融庁
…2000 年に設立された、
バブル崩壊後に不良債権や金融機関破綻で財政に綻びが出たことに加えて、
大蔵省職員と金融機関のスキャンダルが次々と発覚し大蔵省から行政を切り離すべきと考えた

・SEC(証券取引等監視委員会)
…金融庁の発足後に新しい陣容で強い権限を持つ委員会となった、トップは総理大臣に任命される


3. BIS規制 7項目

…銀行の自己資本比率に関する国際統一基準

3-1. ペイオフ
…金融機関が破綻した場合に預金者に元本と利息を上限に保険金を払う預金保険の仕組み
❶預金者が不安となり銀行取付が発生
❷銀行経営者が高金利で人を集めその資金でハイリスクハイリターンな資産運用を行い経営が悪化
→銀行の十分な自己資本は損失拡大が預金者まで及ばないようにするバッファーとなるため、自己資本比率規制を行うことで不良債権で銀行が損失拡大しても預金者が払い戻せる


3-2. 1990 年代にバブルが崩壊すると銀行破綻が相次ぎ預金保険が発動されると、預金者は安全性に不安を持ち始め銀行取付が生じる可能性があった
→1996 年には預金保険法が改正されて預金が全額保証されペイオフが一時凍結された
→不良債権処理が進み 2002 年から再びペイオフが解禁された


3-3. バーゼルⅠの自己資本比率

$$
\frac{自己資本}{信用リスク}≧8.0\%
$$


3-4. バーゼルⅡの自己資本比率
…クレジットリスクのみを対象にしていたがマーケットリスクや金利リスクにもさらされたため
標準的アプローチだけでなく銀行の内部管理モデルアプローチも採用された
事務事故、システム障害、不正行為などのオペレーショナルリスクも追加された

$$
\frac{自己資本}{信用リスク+市場リスク・12.5+オペレーショナルリスク・12.5}≧2.0\%
$$


3-5. バーゼルⅡの3つの柱

❶最低所要自己資本比率の計算方法の変更
…クレジットリスクのウェイトが変更され計算式もリスクウェイトがより精緻になるように標準的アプローチと銀行の内部格付による内部管理モデルアプローチから自由に選択できる
→金融機関の様々なリスクを整合的な基準で計測しリスクに見合う自己資本を各部門に配分して、全体のリスク額が自己資本に収まるようにする統合的リスク管理の観点から健全性確保を目指す

❷預金取扱金融機関の自己管理と各国当局による検証
…自らのリスクを自己評価しその自己評価を監督が検証して必要であれば措置を講ずる、自己資本額を決定しそれを積めなければ罰則を与える
→インセンティブ・コンパティブル・アプローチへの変化

・コマンド・アンド・コンダクト・アプローチ
…監督当局か一方的に命令・指導するように規制を設計する

・インセンティブ・コンパティブル・アプローチ
…社会的に最適な行動を自主選択させるように規制を設計する

❸市場規律
…公表した自己資本額を積めなければ株主や預金者の信頼を失う
→プリコミットメント・アプローチの罰則の代わりになり得る、市場が罰則を決めることで銀行のインセンティブを望ましい方向へ誘導できる
→自己資本比率と内訳、各リスク量、計算手法について詳しい情報開示が必要となる


3-6. バーゼルⅢの自己資本比率
…世界金融危機を経験して変更された、普通株と内部留保に自己資本比率を 7.0%以上に、バーゼルⅡの2.0%より格段に厳しい内容となる


3-7. インサイダー取引
…内部関係者がまだ一般に公開されていない情報を使って行う証券取引
M&A、収益動向、増資計画など
→インサイダー取引は本来他の投資家が得るべき利益を横取りしたり、
他の投資家に損を押し付けたりしていることになる
→このような取引が増えれば投資家がマーケットから遠ざかる
→インサイダー取引の禁止は投資家保護のための規制であると同時に、
マーケット発達の基盤を作るための規制でもあり重要な役割を担う


おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
修正すべき点やご意見などあればXでお声をいただければと思います。
修正の際は、番号を指定して、フォーマットをなんとなく合わせていただけると助かります。

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