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「呪術廻戦」に流れる武士道の精神

日本のアニメはちょっと不思議だ。

敵はヒーローの変身と口上を待ってくれる。
一説によれば、ヒーローの変身には1秒未満の時間しかかかっていないという設定もあるらしいが、それでも口上には数秒~10秒程度の時間を要するだろう。

その間、敵は攻撃しない。子どもの頃はこれが不思議でならなかった。


私がもう少し大きくなり、日本の歴史を習った頃、この謎が解けたと思っている。

日本にある「武士道」の精神だ。

日本の武将たちは、戦を始める前、切り合う前に口上を述べるのが慣例になっていたと教わった。
自分はなんという武士であるとか、きちんと名乗ってから戦いに突入するのだという。

逆に日本が元寇でうろたえる絵が残っているのは、珍しい武器に翻弄されたのと同時に、彼の国には口上を述べる文化がなく、こちら側が名乗っているそばから攻撃してきたから……という理由もあるそうだ。(歴史の先生談)

悪役たちがヒーローの変身と口上を待ってから攻撃を始める理由に合点がいった。きっと日本のアニメに描かれる彼らも、武士道の精神を引き継いでいるのだ。


私は最近「呪術廻戦」のアニメを楽しく見ているのだけれど、このアニメにも同じ精神が流れているのではないかと思う。

「鬼滅の刃」に負けず劣らず、このアニメは心情描写や解説に多くのセリフがあてられている。

また、呪霊側から術式の開示があったり、相手に見抜かれたら手の内を明かしたりと、「正々堂々の勝負」とでも呼ぶべき瞬間がとても多い。
もちろん、術式の一部だけを明かしたり、明かした術式の応用で相手を翻弄する描写もあるが、まったく無言で始まる戦いはとても少ない。

少なくとも視聴者には、敵がなぜキャラクターの前に現れて、なぜ戦うのかが分かるように作られている。

また藤堂が虎杖に教育的助言をしているあいだ、花御すら攻撃を待っている。


このような「攻撃手段の開示」「会話を待つ姿勢」なども、武士道に由来する描写ではないだろうか。

不意打ちも独断先行もするけれど、敵と味方が出会ったらまず言葉を投げかける。その上で戦いを続ける。

一見不合理で、負けに近づく/あえて不利な行動をとっているようにも見えるが、この作品が生まれた国に流れる慣例や精神性に思いをはせると、納得できることも増えるのかもしれない。




文責:亜香里

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