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災いの中で見つけたポジティブと、飲食店の本質【『シェフたちのコロナ禍』感想】

シンプルな表紙に心惹かれて手に取った井川直子さん著『シェフたちのコロナ禍』(文藝春秋)。

去年4月ごろから飲食店オーナーたちに取材をし、考えていたことや休業/業態変更/変化しない等の選択の理由などを聞いていくnoteのシリーズ記事を、まとめて本にしたものだそうです。

コロナ禍にまつわるノンフィクションは、私はこれで2冊目。

以前、『英国ロックダウン100日記』を読んだことがありました。

私も当事者として経験しているこのコロナ禍を、私とは違う立場・場所にいる人たちはどういう風に見ているんだろう?

どんなことを考えているんだろう?

常に心のどこかに、そんな疑問があったから、『シェフたちのコロナ禍』が目に留まったのかもしれません。

文章から感じたこと
みんなネガティブじゃない

いざ実際の記事部分を読むまで、私の中にはある先入観がありました。

みんな、苦しんで、ネガティブに陥っているんじゃないか……。

私は飲食店で働いているわけではないですが、ニュース等から飲食店への風当たりの強さはなんとなく感じていました。

そんな大変な状況の渦中にいたら、みんなしんどい思いをしているんじゃないか。

共感してしまって悲しくなるようなことがたくさん書いてあるんじゃないか……?

それでも「実際を知りたい」という勇気にしがみついて、取材部分を読み進めていく。

すると、「あれ、意外とポジティブな人いるな」

拍子抜け的に驚かされました。

もちろん、私の予想通り「どうしたらいいのか分からない」と語る人もいました。

でもそれと同じくらい、なんならその人も、最終的には「でも、やるしかない」にシフトしているのです。

中には「休業できるからこそ、この時間を有意義に」とポジティブ変換を上手にしている人もいて、新たな視点を与えてもらった感じでいます。

飲食店の本質に思いを馳せる

もうひとつ得た大きな気づきは、「飲食店が提供しているものは何か」という本質的な命題。

私はこれまで単純に「食べたり飲んだりするところ」と捉えてきました。

ところが取材を受けるオーナーさんたちの中には、もっと深いところまで考えている人が何人もいたのです。

美味しい食べ物や飲み物は、飲食店の表面的な要素に過ぎない。

家具、音楽、ざわめき、香り、お店を構成するすべてのもの。

スタッフさんとのコミュニケーション。

言われてみて初めて、飲食店を構成する要素や、お店が本質的に提供しているものに気づくことができました。

誰かが言語化してくれなければ気づけないことって、あると思います。

逆に言えば、本質を見誤らないからこそ、オーナーさんたちは最終的に立ち上がり、なんとかお店を続けて行こうと頑張れるのかもしれません。

本質がブレなければ、表現方法(店内飲食・デリバリー・テイクアウト)が変わっても、お店の個性を伝え続けることができると思うから。

そして自分を振り返って、私はちょっと苦笑い。

あー、そりゃ飲食店勤務向いてないわ(苦笑)。

飲食業界で働く人、私には決してできないことしててめちゃくちゃすごい。改めてそう思いました。



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