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歴史と虚構が混ざり合う【第165回芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』読後感想】

第165回芥川賞受賞作、李琴峰さん著『彼岸花が咲く島』(文藝春秋)を読みました。

実は受賞発表のニュースで、タイトルを見た時からいちばん気になっていた作品。

読むのを楽しみにしていました。

ちなみに、私は単行本のカバーを外した、本体表紙のデザインを見るのが好きなのですが、『彼岸花が咲く島』も例にもれず素敵なデザインがなされていますので、本を手に取る方はぜひともカバーを外してみることをおすすめします(*´▽`*)

感想たち
何書いてもネタバレになるな……(ネタバレしてません)

読んでいる最中から悩んでいたのですが、物語の進行に触れてしまうと、何からなにまでネタバレになりそうで、迂回しながら感想を書くのに力が要ります。

結末や真相に触れない範囲で書き、のこりは記事の最後にリンクを貼る「ふせったー」に書くつもりなので、悪しからず。

新鮮な驚き「こういう話も芥川賞を取るのか!」

文章の勉強と称して、手っ取り早く「じゃあ、芥川賞と直木賞を取ったやつを読んでみよう」というやり方を始めて2年ほど。

読んだ冊数は少ないものの、芥川賞を取る作品には「共通点」があるのかな、などと勝手な印象を抱いていました。

ところが『彼岸花が咲く島』は、そんな私の印象を覆す作品。

「こういう話も芥川賞に選ばれるんだ!」という新鮮な驚きを味わいました。

というのは、作者さんの文章スタイルの話。

これまで私が読んできた『推し、燃ゆ』『ニムロッド』『1R1分34秒』『貝に続く場所にて』は、主人公の心情描写がものすごい深度でした。

主人公を中心に、人の感じていること、考えていることを抉って、抉って……。小さな感情の動きにまで、愚直に言葉を与えていく。

感情の記録。

だから芥川賞に必要なのは、深度のある感情描写なのかと思っていたのです。

ところが良い意味で、『彼岸花が咲く島』は違っていました。

この物語で重視されているのは、感情の動きよりも文化の描写。

祭りの熱気や衣装の色、受け継がれる伝統……等々、そこに根付いたものや生活スタイルにフォーカスして書かれているのです。

そのしっかりとした描写が、私のように〈島〉の暮らしに馴染みのない人にも想像力を働かせる手がかりを与えてくれ、物語の世界観を臨場感あるものとして感じさせてくれるのです。

あえて「○○みたい」と言うなら

人は新しい作品に向き合う時、「以前、触れた作品」と比較して捉えることがあると思います。

それは批評のためではなく、自分が理解しやすくするため。

私は『彼岸花が咲く島』を読んで、「『モアナと伝説の海』と『進撃の巨人』を足して2で割った感じだな」と思いました。

どの辺が『モアナ』でどの辺が『進撃』なのかは、ぜひ読み終えた人と語りたいと思っています。

【詳しくはふせったーへ】エンディングについて思ったこと

ものすごいネタバレになるので、ふせったーへ進むなら読んだあとをおすすめします。

もう読んだよって方は、考えを語り合えたら嬉しいです(*´ω`*)


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