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2度も3度も騙される【『ドクター・デスの遺産』をネタバレなし感想!】

映画化もした、中山七里先生の作品『ドクター・デスの遺産』(角川文庫)を拝読しました。

「刑事 犬養隼人シリーズ」の第4作とのこと。

私は前3作をまったく知らないのですが、とても楽しんで読めました。

今回はネタバレなしで、感想を書くことに挑戦したいと思います!

2度も3度も騙される展開

良い意味で何度も期待を裏切られ、「そうなるのかー!!」が多いストーリーでした。

特に、タイトルにある「遺産」。

そして目次には「受け継ぐ」という単語も登場します。

「遺産」とは言葉通り、遺されたもの、という意味ですが、「何を」遺されたのか。

それは当初の私の予想とは違うものでした。

タイトルの「遺産」の意味が分かった時、思わず「そうなるのかー!!」と叫びたくなったほど。

綺麗に騙されたので、いっそのことスカッとしました(笑)。

言葉遣いの知性と、読みやすさ

もう1つ印象に残っているのは、文章そのものについてです。

中山七里先生の作品を拝読するのは、今回が初めて。

文章を読み始めて感じたのは、作者さんの知性でした。

文中には、的確な慣用句(?)による表現が頻出します。

睨み殺すような目

とか、

堤が決壊したように

とか。他にもたくさん。

これらの言い回しは、登場人物たちの心情を的確に表しており、読む間はずっと「こんな表現もあるのか」と勉強させられっぱなしでした。

きっとこれはいちどきに出てくるものではなく、人の表情や心情の移り変わりを観察してきた、長年の経験などが絡み合って生まれる言葉なのでしょう。

さらに、これは小説・ビジネス書・家事、育児本に関わりなくですが、頭の良い人の文章は洗練され、読みやすい流れがあると思っています。

『ドクター・デスの遺産』も、読みやすい流れの中にある文章でした。

主人公である犬養の容姿について、目鼻立ちなどの詳細な情報は書かれていないのに、「イケメンなんだな」と窺える表現。

他の登場人物たちも同様で、厳選された要素があれば、その人の姿を容易に想像できる書き方がなされています。

スマートですごい。

読み終えた後、いろんな思いを巡らせながら、まじまじと表紙を見つめてしまいました。

考えること:安楽死の是非

そして嫌が応にも考えてしまうのは、安楽死をどう思うか、です。

ドクター・デスは、20万円で安楽死を請け負ってくれる謎の医者。

その黒い医者を追う犬養や明日香、遺族たちとの会話から、安楽死について考えずにはいられなくなります。

本当にいろんな考えが登場するからです。

自分だったら、どう思うだろう?

今はこう思っているけれど、もし、いざ、身近な人が昏睡状態に陥ったり、ずっと病苦で痛がっていたら……?

いろいろな可能性が考えられ、簡単にひとつの答えを定められるわけではありません。

だからこそ、安楽死に絡んだこの物語が頭を離れなくもなります。

日本では、まだ積極的安楽死が認められているわけではありません。(海外には合法の国があるようです)

仮に認められたとしても、「安楽死絶対反対!」の声は残り続ける可能性も高いです。

これから、日本の制度が変わることはあるのか。

変わった時、自分はどういう選択肢を選ぶのか?

本のページは終わっても、考えは尽きません。

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