映画『ミッドナイト・トラベラー』のアフタートークに、アフガンから日本に来た友人と登壇して。
大学生の頃から、映画を通して世界で起きてる課題や事象を知る機会を何度もくれた United People。
長年WELgeeの応援者でもいてくださっている代表・関根 健次さんのお声がけで、絶賛公開中の映画『ミッドナイト・トラベラー』の横浜での上映会後アフタートークに、対談の時間をいただきました。
この映画は、アフガニスタンから逃れヨーロッパまでの5600kmの道のりを移動する難民となった一家が自分たちの軌跡を記録したドキュメンタリー。
(こちらで予告編が観れます!)
まず印象的だったことは、国を逃れようと決める瞬間だけではなく、安全な国にたどり着くまでの道のりの、毎日に、そして全ての瞬間に、複雑で誰も正解を知らない意思決定の連続だらけだということ。
私は普段、それぞれの旅を経て辿り着いた難民の背景を持つ人たちに日本で出会うことが多いです。
海に囲まれた日本へは、ほとんどの人が飛行機で辿り着くのですが、最後の最後は飛行機だったかもしれないけれど、日本行きの飛行機に乗るまでに、まず壮絶な旅を経ていることを改めて思い知らされました。
アフガニスタンの友人が言っていたのは、自分のパスポートでは観光だとしても行ける国が世界の中でまずとても少ないということ。
アフリカから来た友人が言っていたのはゲリラがいる地域を通っていかないと、パスポート発給オフィスまで辿り着けなかったということ。
映画ではハッサン一家は、車と徒歩で移動します。
子どもたちも一緒に、森に何日も野宿することも。
ブルガリアやセルビアなどにしばらく滞在するシーンが印象に残っています。買い物に出た彼らに石を投げる人がいる一方で、彼らに手を差し伸べようとする人がいる。 彼らの命懸けの旅は、いつも、その地に暮らす誰かのなんでもない日常と交差していました。
そして、生きて終われるかわからないこの命懸けの旅を映像に収めようとする映画監督としての彼と、2人の娘の父親としての彼の葛藤のシーンもあります。
緊迫感漂う旅路の合間合間に、家族のほっこりした関わりや、子どもたちの成長、クスッとしてしまう夫婦のやりとりも出てきます。彼らが、私たちと同じように毎日を生きる存在であることを映し出しているシーンでもありました。
ハッサン監督はその後のインタビューでこう語っています。
「映画が上映されることで、私たちだけではなく、多くの難民たちが抱える問題を伝えられてうれしく思います。私は、世界の人々が紛争によって他国へ逃れる必要がなく、日本のように平和で、誰もが安全に暮らせるようになることを願っています。アフガニスタン情勢は私たちが逃れた時よりさらに悪化しています。でも暮らしや子供の頃の思い出は祖国に残してきました。体はドイツにあるけれど、心はアフガニスタンにあるのです。安全になった祖国で暮らすのが私たちの願いです」
さて、シーンが変わるごとに、「Day 100 / 100日目」のように、テロップが出てくるのですが(それが、私たちはスクリーンで観ているこの映画が、本当はものすごく長い時間の圧縮だという事実を毎回突き付けられる)、何ヶ月も待っても難民の審査が通らない国での場面も出てきます。
待っても待っても結果が出ない。
それは実は日本も同じです。安全な国に辿り着いたとしても、難民として認定される確率は1%にも満たない。いま、日本で難民認定申請をした人は、平均4年4ヶ月待ち続けることになっています。実際に5年前に来日し、一度も審査のための面談に呼ばれていない友人もいます。
私たちWELgeeは、ただ難民認定を待つだけではない主体的な選択肢を生み出すという試行錯誤をしていますが、主体性に溢れる人たちが、埋もれてゆくことが本当にもどかしいし、その可能性がもったいない。
辿り着いた土地で、主体性を活かした選択肢を持てるように。
そのひとつがJobCopassというキャリアプログラムです。
難民としての背景を持つ人たちの逆境を乗り越える力や、人間性、元々の経験を組織の成長に活かしてゆく、そんな企業さんが日本での難民人材採用に乗り出してくださってます。
さて、ハッサン監督は映画監督。妻も映画監督でした。彼らは政権に関わる映像を録り、それが原因で命を狙われて国を出ました。
祖国アフガニスタンでは、2021年8月、タリバンが首都カブールまで進行し、政府は事実上崩壊するという出来事がおきました。命が危険に晒されている人が現在進行形で存在しています。
ハッサン監督はこう言っています。
「多くの文化人が取り残されています。映画監督、人権活動家、記者、詩人など、私に助けてくれと言うんです。でもその術を私は知らないのです。彼らは脱出したいと願っています。」
監督の知人友人含め、深刻な命の危険にさらされているアフガニスタン人の退避支援のために、認定NPO法人Reach Alternatives(REALs)の瀬谷ルミ子さん企画のクラウドファンディングが始まっています。
「これは命を救う映画なんだ」と関根さんはおっしゃっています。
多くの人々は退避のすべもなく、アフガニスタン各地では女性活動家、ジャーナリスト、元政府関係者、国軍・警察関係者、外国軍への協力者、外国組織の関係者、タリバンを処罰した報復で脅迫される裁判官などの法曹関係者、タリバンの教えでは禁じられる音楽や興行に加担したことを罪とされ命を狙われるアーティスト・ミュージシャン、少数民族や特定地域の出身者、LGBTQの方たちなどを対象にした脅迫、殺害予告、拉致、暴力、殺害などが連日各地で発生しています。(クラファン本文より)
紛争、迫害、人権侵害、世界でいろんなことが起きている。全てを知ることはできないし、知れば知るほど、できることの小ささにもどかしくなることも多い。特に、私自身、今回のアフガニスタンの出来事に関してはもどかしさを感じることがたくさんあります。だから、自分にできることの1つで、今回、対談の機会に伝えられることを伝えようと思ったりしました。
休日に家族や友人とこの映画を観て、まず1つの家族から世界を知ることも日本からできることの1つ。顔が見える信頼できる方を通してのクラウドファンディングに参加して、その後の経過を追ってゆくこともまた1つ。
今回の登壇に一緒に登壇してくれたもう一人のゲストについて、最後に触れたいと思います。
私がWELgeeの活動を始めたのは、ハッサン監督のように希望をかけて国を越えてきた難民の若者たちに日本で出会ったから。
その仲間のひとりが、2019年にアフガニスタンからきた同い年の青年です。
当時は友人たちとのシェアハウスに一緒に暮らしたこともある彼も、国際プロジェクトに関わったことで命に危険が迫り、祖国を逃れざるを得ませんでした。
彼が最後に、会場の皆さんに語ったこと。
「大事なのは困っている誰かに手を差し伸べること。誰にでもできることがある。希望を失った人が、そこから、前に進めるようになるかも知れない。自分もそうだったから。希望はどこからでも生まれる。これは誰にだってできること。あなたの近くの人の力になってみてください。」
いつも、世界と日本を繋げてくれてありがとう。
どうか、1日でも早く家族に、安心の日々がやってきますよう。

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