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 ある国に、昆虫嫌いの総理大臣がいた。
彼はテレビで、あるチョウの話を見た。そのチョウは越冬地に大量に集まるので、群れたチョウの重さで枝が折れることもあるらしい。
総理大臣は思った。あれは気味が悪い、みんな@してしまえと。

 それを知った人々は、ある話を持ち出して反対した。
チョウの羽ばたきは、遠くの国の天気に影響をもたらすらしいという、     バタフライ効果の話を。だから、チョウの群れを攻撃すれば、この世は大混乱に陥るかもしれない。総理大臣は話を聞くふりをして心を決めた。


 彼は軍隊に命じて、チョウの越冬地を爆撃させた。
森は灰になり、チョウは全滅して、なにが起こったか。
この国がおかしくなったのだ。天気は激変し、人々の心は乱れ、社会は崩壊した。人々は、必死になって、チョウが羽ばたくみたいに腕を振り回したが、遅かった。

 この国だけではなく、この世の全てが滅びたのだから……。

……これはね、一部の人間が、自分の気に食わない人間たちを@したら、国家が崩壊したという寓話だよ。チョウは自分に反対する人間、その群れは民主主義を意味している。だから、国が滅びる間際に、あわてて民主主義を復活させても、無駄、ということさ。世の中にはさ、無数の人間を虫みたいに@す人間が、たくさんいるんだよ……。



愛国者学園物語の第3部より。

いずれ投稿する話にこれを入れるつもりです。モデルにしたのは、北米大陸に生息し、長距離を移動するチョウ・オオカバマダラ。





BBC 2016年3月のニュースより


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