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日本人は無条件に服従する       愛国者学園物語31

 日本では、組織の代表者の意見と、その部下たちの意見が異なることが 多いことがある。代表者の意見が明らかに間違っていても、部下がそれを正すことはない。あとでこっそり、「代表はああ言っていますが、     実は……」と、正しい意見が送られてくることもあった。

 そういうときジェフが、その部下たちに、

「なぜ、あの時教えてくれなかったのですか?」

と聞き返すと、親切な人は

「上司の手前、反対はできませんよ」と教えてくれる。

 だが、一部の人は今までの丁寧な態度とは180度変わって

「余計なことを聞くな!」

と怒りを爆発させることも多かった。卑屈にも見えるほどの丁重さと、その真逆で爆発的な怒りの対比は、ジェフには興味深くも感じられた。

 それに、日本社会には本音と建前がある。そんなことは耳にタコができるくらい、ジェフは聞かされてきた。そんなものはどこの国にも存在するのに、日本と関わる外国人の中には、そのような日本人の態度を二枚舌とか、裏表があるから信用できない連中だとか言って、口汚く罵る者たちがいることもジェフは知っている。

 日本を嫌う人々は、ある日本社会の特異性を指摘する。それは上司や多数派への無条件の服従だ。日本社会では、会社でも議会でも多数派がその実権を握っている。そして、日本人たちは生きるために無条件でそういう上司や多数派を支持しなければならない。


 たとえ、その多数派が間違ったことをしていても、だ。だから、日本社会には、自分たちの意見は正しいのに、それを上司や経営陣は受け入れてくれないと強い不満を持つ日本人たちが相当数いることもジェフたちは知っていた。

 ではなぜ、日本人たちは、上司や上の人物に媚びることが多いのか。それは日本の労働者たちが転職できないからだ、とある酔っ払いが言ったので、ジェフもマイケルも他の友人たちも、そう言い放った男をまじまじと見た。

 「日本社会では、転職をすることは良くないことだとされている。それはみんな承知だろう。同じ職場に長く勤めることだけが、その人が良い人か悪い人かを判断する材料になっているのが日本だ。その職場で何をしたかではなく、どれだけ長く同じ職場にいるか、それが重要なのだ。

 だから、職場に長く勤めるためには、上司に媚びへつらう必要がある。上司が間違っていても、それを指摘すれば、それは会社内で自分の立場が悪くなるだけだから、みんな何も言わない。そして学歴や派閥がのさばることになる。

 会社内で生きるためには、そういう多数派に参加するか、その意思に従わなければいけない。だから、日本人は上司や多数派に無条件で従わざるを得ないんだ。たとえそれらが間違っていてもね。無条件に上の人物を賛美する、その言動に従う。そのような態度は、まさしく独裁者をつけ上がらせるだけなのだが、日本社会のそういう生態は決して変わらないだろう」

「そういう社会では、ファシズムが流行しやすい。日本はかつて世界三大ファシズム国家として、世界の敵だった。そして21世紀の日本では、今、激しく愛国心を叫ぶ日本人至上主義が台頭しつつある。もしかしたら、近未来の日本は世界にとって危険な存在になるかもよ」


続く 

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