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スパイに思想教育を?         愛国者学園物語37

 だが、日本政府はそれを愛国心に欠けるがゆえの売国行動だと非難し、問題をすり替えた。彼らの不満や搾取されるだけの辛い人生など、政府は心に止めることすらしなかった。

 そして公安警察は、日本が憲法改正後に施行した強力なスパイ防止法を武器にして、日本社会のあらゆる階層にいたスパイを徹底的に取り締まった。だが、それでも日本を売る日本人たちは少なくならず、業を煮やした国会議員の中には、スパイ防止法の最高刑を死刑にしよう、あるいは国家反逆罪を創設しようと息巻いた。

 それどころか、議員たちは、そういう日本人スパイたちを再教育して愛国心を叩き込み、日本社会に対して見せしめにしようとまで言い始めたのだ。

 それは、政府による特定思想の強要であり、日本国憲法第19条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」に反するだけでなく、海外の歴史をそのまま真似する愚行だった。

 スパイと疑われた人々や政府の意にそぐわない人間たちを思想犯として扱い、劣悪な生活環境の収容所で、政府に都合の良い思想を叩き込む思想教育を強制することは、旧ソ連や中国、北朝鮮などの独裁的な共産主義諸国で行われていたか、今も行われていることだ。

 そういうことを、21世紀の民主主義国家の日本でやろうというのである。日本人至上主義者の議員グループは、そういう厳罰で罰すれば、日本の機密を売り飛ばすような輩は減るだろう、と考えたらしい。

 これが愛国心を過度に賛美する、平成の次の時代がやらかしたことだ。政府や愛国者学園、それに日本人至上主義者たちが賛美する愛国心に従わない人間たちは、悪い日本人か、日本人ではないとして、見下されるか、犯罪者として扱われる時代になったのだ。

 愛国心の名の下に、民主主義国家の日本の政治は、強権を振りかざす政府とそれを賛美する危険な保守派議員と、与党を批判するだけで実行力が弱い野党議員の群れが演じる茶番劇になりつつあった。

 かつてドイツはワイマール憲法を、当時最も民主的といわれた憲法を持っていた。しかし、その憲法の下で合法的にナチス党が生まれ、ドイツはナチス一色に染まり、歴史上他に例を見ないようなファシズム国家になったのだ。

 平成の次の時代の日本も民主主義国家であるにも関わらず、強権的な法律と微罪で人を逮捕する警察と検察などが幅を効かせるようになった。国際社会がそれを憂慮しても、日本政府は治安維持のためだと説明して、何も改めなかった。ナチス時代は一般的な警察や拷問も辞さない秘密警察が横行したが、今の日本はそれに似ていないだろうか?、言い過ぎだろうか?

続く

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