短編小説「ジェニーは幽霊」②(全⑤話予定
バーボンの匂いが鼻につく。甘い蜂蜜の匂いは、この娯楽室には残っていない。なんという事だ!ミアとは、先月別れたばかりだが、あの日記帳だけは、見ておきたいのだ。ミア。
喋れもしない化け物が、何百箇所も蜂に刺され、なお生きてるジェニーは俺の向かいにいる。お口チャックな神様はどれだけ俺を、困らせる?もううんざりだ!!
「早く鍵を渡せ」俺は怒っていた。
「ミアと関係を持ってるのは、いいとしてまだお前からあの鍵をもらってない」
ブゥゥーーーーーーーーン!
ジェニーは、五月蝿くなきわめく大きな大きな蜂の巣を自分の部屋に、天井隅に見つけた途端、絶叫しながらすかさずドアを閉めた。
しかし、遅かった。全身蜂の100を超える大群に包まれ、その後神秘的で偉大なアートになった。
だが、何故か彼は(ジェニーという名は男性名ではない)生きていた。呼吸もしていた。
蜂が、なんと彼の身体を乗っ取ったのだ。蜂が人間に寄生し、言葉は話せないものの、蜂の巣人間という奇妙なダイナマイトを作り上げていた。
そんな彼は、他は誰一人としていなくなったこの寄宿舎で、数日間一人生きていた。
俺が娯楽室に呼んだのは、ジェニーのバソコンが生きていたからだ。
身体と同化した蜂は、すでに俺の方には襲ってこない。ジェニーの良心とも同化しており、そのセキュリティは効くようだ。
「ジェニー、鍵は、どこだ?」
バーボンのボトルを、床に落として、ガシャンと音を立て豪快に割って、ジェニーはある方を指差し、答えた。
『(ビリヤードに勝ちなさい)』
③に続く
(※この物語は、⑤まで連載予定です。)
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