エンタメ業界に必要なセルフプロデュース力。注目の「メンタルパフォーマンストレーニング」とは
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エンタメ業界に必要なセルフプロデュース力。注目の「メンタルパフォーマンストレーニング」とは

今回は、当社代表の佐藤詳悟とメンタルコンサルティングの専門集団株式会社CORAZONチーフコンサルタントの荒木香織氏による対談です。
かつてラグビー男子日本代表のメンタルコーチを務め、2015年ワールドカップにおける躍進に導いた荒木氏と、今後エンタメ業界にも必要不可欠な「メンタルパフォーマンストレーニング」(※1)の考え方や役割について理解を深めていきます。

※1「メンタルパフォーマンストレーニング」とは、アーティストのパフォーマンス向上のためにボイストレーニングをするように、メンタルのパフォーマンスのトレーニングを行うことによりパフォーマンスの向上を目指すものです。

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株式会社 CORAZON チーフコンサルタント
園田学園女子大学 教授 順天堂大学スポーツ健康科学部 客員教授
荒木香織

なぜ、エンタメ業界にもメンタルパフォーマンストレーニングが必要なのか

佐藤 個人が直接ビジネスをできる時代において、才能ある個人をエンパワメントする=より輝かせる。それがFIREBUGの役割の一つです。

才能ある個人をより輝かせる上で具体的な目標やビジョンが重要になりますが、エンタメの世界では、アスリートのように大会で勝つことや記録を更新するといった明確な目標を持って取り組んでいくのとは異なり、「常に人気を得ていたい」といった漠然としたイメージになりがちです。

僕自身マネージャーの経験を通して、スケジュール管理や契約の結び方といった実務的なことは熟知していますが、メンタルパフォーマンストレーニングに関する専門知識は持っていません。やはりメンタルパフォーマンストレーニングはスポーツにおいて発展している印象がありますし、荒木さんがメンタルコーチを務められたラグビー男子日本代表が2015年のワールドカップで活躍したことを機に認知が広がったように思います。

これからはスポーツだけではなく、エンタメにおいても、日々の取り組み方や考え方をコントロールするマネジメントスキルが不可欠になりますよね。

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荒木 おっしゃる通り、ラグビー男子日本代表の活躍のおかげで、メンタルコーチといった仕事をしている人がいるんだと知っていただけるようにはなりましたが、スポーツ以外のジャンルにおいての認知はまだまだだと思っています。

佐藤 まずは、メンタルパフォーマンストレーニングがどのようなものなのか、そこから教えていただきたいと思います。荒木さんが研究されている領域は、基本的にはアスリートの方を対象としているのでしょうか?

荒木 そうですね。私の専門はスポーツ心理学で、研究対象はアスリート、そして指導者が中心です。メンタルパフォーマンストレーニングには、「状態を維持して」「いい準備をして」「いいパフォーマンスをする」という3つの流れがあり、スポーツはもちろん、日常の中でパフォーマンスをする人たちにとって、なんらかの形で活用してもらえる考え方です。自分一人だけでなく、周りの人と協力しながら、持ち合わせている能力をプロデュースしていくというのは、多くの人に求められることですよね。

佐藤 荒木さんはどういった経緯で、スポーツ心理学を学ぼうと思ったんですか?

荒木 私は中高大・社会人1年目まで陸上競技(短距離)の選手で、インターハイや国体にも出場しました。自己記録も毎年更新して、自分との戦いは楽しめていたんですけど、周りはそれ以上にすごくて、他人との競争では負けてしまう。そこで言われるのは「なにくそ!という気持ちが足りない」とか、「他人を蹴落としてでも勝つんだ!という強さがない」といったことばかりで、具体的にどうしたらいいのか、誰も何も教えてくれない。でも、アメリカならそういったことを勉強できると知って。「なにくそ!」という気持ちがどこから来るものなのかわかるんだ!と。それでアメリカの大学院に行きました。

日本では「緊張」と一言で言いますけど、スポーツ心理学では「身体の不安」「心の不安」「興奮のレベル」といった明確な概念に基づいて研究されているんです。つまり、「この通りにやれば、いいパフォーマンスができますよ」ということが、合理的にわかっている。「これはすごい!」と思いましたね。

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メンタルパフォーマンストレーニングは、その人を知ることから始まる

佐藤 メンタルパフォーマンストレーニングをするときは、具体的に何から始めるんですか?

荒木 まずは、その人を知ることですね。「どのようにしてここまでたどり着いたのか」「誰に助けられたのか、逆に傷つけられたのか」「なにが好きで、なにが嫌いか」「これからどうしていきたいのか」といったことをヒアリングします。実力が発揮できないと聞いていて、実際にヒアリングしてみると実力自体がないということもある。本人ではなく、指導者が原因という場合もある。あとは幼少期の出来事が関係している場合もある。そういった要因をしっかり理解して影響されないようにしていきます。

もちろん、相手によってアプローチは変わります。基盤となる理論をトマトに例えると、Aさんにはトマトソースにして、Bさんにはスライスにして、Cさんには半分に切ってドレッシングをかけてと。トマトを提供していること自体は変わらないですが、どのように提供するかというセンスは求められますよね。

佐藤 なるほど。初対面だと相手との信頼関係ができていないじゃないですか。最初からスムーズに入れるものですか?

荒木 メンタルパフォーマンストレーニングのきっかけが自分からだろうが、他人からだろうが、どんな人でも赤の他人の質問に答えるのは大変だと思います。でも、時間が経てば問題なく話してくれるようになります。重要なのは、お互いが何かに向けて一緒に作業しようと思うこと。そうしないと上手くいかないですよね。

佐藤 「このゴールに向けて一緒にやっていこう」というような設定を最初にするんですか?

荒木 いえ、「状態を維持して」「いい準備をして」「いいパフォーマンスをする」ということが大前提なので、目指すイベントが何であれ、その時期がいつであれ、ゴールだけに焦点を当てることはありません。やはり、流れが大切だと私は思っています。どんな取り組みでも、その人がどこに向かいたいのか、その時々の状態やフィット感を確認しながら進めていきますね

あらゆる人の活動のプロセスをスムーズにし、目標をなるべく達成できるようにする。それは私の力だけでは無理ですし、マネージャーなど、関わる人と情報共有することで、その中心にいるアーティストやタレントも動きやすくなります。メンタルパフォーマンストレーニングというとイメージしにくいかもしれないですが、「考える」「決断する」「勇気を出す」といったことのプロセスを強化してあげること、と言うとわかりやすいですね。

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佐藤 自分で考え、決断していく力をつけていくと。とはいえ、明確なビジョンを描きにくいというアーティストやタレントは本当に多くて。

荒木 難しいですよね。具体的な目標が立てにくいという部分においては、スポーツ以上に厳しい世界だと思うこともあります。普段から、何を考え、どのように消化していけば、より良いパフォーマンスができるか。アーティストやタレント自身にも遂行力が求められますし、周りの人と一緒に取り組むことが大切です。

自分で考え、決断していくことによって、自分の中の軸が明確になってきます。例えば、「この仕事やりますか?」と聞かれたときに、Yes/Noがはっきり言えるようになる。それは、わがままや感情的なことではなく、こういう理由でやりたい/やりたくないと。そういったコミュニケーションができるようになることは、独り立ちの第一歩になります。これで成果が上がってくると、周りも納得してくれるようになる。結局、重要なことは「自分自身を知ること」ですよね。

佐藤 だから最初に全部聞いていくんですね。なかなか自分一人だと自分のことはわからないですもんね。

荒木 そうです。人に話すことで、自分のことがわかるものです。

佐藤 アウトプットとしては、ルーティーンを作っていくことが多いですか?

荒木 その人の性格にもよりますね。決まっているほうが本人もやりやすいし、周りの人も合わせやすいので、しっかり成果が出せるという利点はあります。今までやってきていることで続けたほうがいいことは続ける、必要ないものであればやめましょうというように、「現状に理由を持たせる」ようにします。

佐藤 なるほど、現状を整理して言語化してあげるということですね。

キーワードは「自立」

佐藤 心と体が密接に関わっていてその状態がパフォーマンスに影響を及ぼすことはスポーツにおいてはイメージできますが、同じことがエンタメ業界においても当てはまるという考えを持っている人はまだまだ少ないように思います。エンタメにも今後メンタルパフォーマンストレーニングの考え方は浸透するのでしょうか、また取り入れることで期待できる変化や可能性についてお聞かせください。

荒木 エンタメの世界で活躍するには、「自分自身をプロデュースする力」が必要だと思います。多くの方が、才能を見出されて活動を始めて、うまくいかない時期もあるでしょうが、そこからさらに自分の持ち味を発揮できるようになれば、もっと楽しく、より自分らしく輝くことができるはずです。

佐藤 一つのプロデュースコンセプトで10年続けたとしても、その先20年30年そのまま進むのは難しいでしょうから、その時々に応じた自己実現、自分にとっての「今の成功」「この先の成功」を常に考えられると、新たな可能性が広がっていきますよね。

荒木 その通りだと思います。アーティストやタレント自身の人生があるので、なるべくいい形で活動できることが理想ですよね。不安で落ち込んでボロボロになってしまうのは、本人も周りの人も望んでいないこと。力を出せるように周りがサポートしてあげること、本人が気づいて自分で力を出すことが大切ですね。

ここまでの内容をまとめると、キーワードは「自立」かな。冒頭にエンパワメントという言葉が出ましたけど、周囲のエンパワメントと、本人の自立が大事ですね。

佐藤 エンパワメントって、まずは本人がその気になってくれないと、周りもサポートできないですからね。アーティストやタレントへのコンサルテーションはもちろん、プロデュース、マネジメントに関わる人たちもメンタルパフォーマンストレーニングの重要性について理解できるようになればだいぶ変わるはずです。

荒木 どの世界もそうですけど、環境を変えていかないといけないですからね。環境というのは、周りの人の言動によって形成されるもの。周りが変わることで、その中心にいる人たちがよりいっそう力を出せるようになるはずです。

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佐藤 これから先ニーズが高まっていくと思いますし、メンタルパフォーマンストレーニングが広がることで日本のエンタメがより魅力的なものになればと願っています。

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Writer:龍輪剛
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