中国発の連続起業家・程涛、日本でビジネスを展開する“フェアな”理由とは?|issin株式会社 代表取締役社長 程涛
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第一回目は、体重管理を習慣化する「スマートバスマット」の開発・販売を行うissin株式会社の代表取締役社長・程涛さん。issinを立ち上げる前は、popIn株式会社を創業し、ネイティブ広告に対応したプラットフォーム「popIn」や家庭用プロジェクター「popIn Aladdin」を手掛けてきました。そんな程さんが母国である中国を離れ、日本で起業した経緯を伺います。
中国出身の程さんが日本への留学を決めたきっかけは?
中国の大学入試に失敗して合格できず、留年してもう一度チャレンジしようと思っていたときに、親戚から「日本に留学する方法がある」と聞いて、初めて留学を考えるようになりました。我が家は父が公務員、母が経理の仕事をしている一般家庭なのですが、親は「中国の大学を目指すのもいいけど、留学を考えてもいいんじゃない」と言ってくれたし、私もソニーをはじめとする日本の家電製品が好きだったので、日本に行くのもいいのかなと。日本と中国は近いからすぐに帰れるし、総合的に考えて留学を決意しました。
中国での進学を考えている頃から、どの大学に入ってもコンピューターサイエンスを専攻しようと考えていました。幼い頃から伯父の家にあったパソコンで遊ぶのが好きで、中学1年生のときに「プログラミングを勉強する」という約束でパソコンを買ってもらったんです。当時のパソコンは母の年収くらいの価格だったので、そこで「将来はパソコンの勉強をしよう」と決めました。母は、僕が高校1年生の頃に脳出血で半身不随となった父に代わって留学の手続きもしてくれたので、とても感謝しています。日本に来てからは、学業とアルバイトを両立して、生活費や学費は自分で稼ぎました。
起業はいつ頃から考え始めていたのですか?
大学入学時はコンピューターサイエンスに関われるなら何でもいいと思っていて、起業は想像もしていませんでした。考え始めたのは、ITベンチャーでのアルバイトがきっかけ。当時から自分でプログラミングができたので、アルバイトながらプロジェクトを任されたりして、ひと月に30万円くらいいただいていたんです。そこで稼げる仕事なんだと感じたし、Web 2.0の時代でさまざまなウェブ技術が出てきていて、インターネットの可能性にワクワクしたこともあり、起業してみたいと思い始めました。起業に向けて経験を積みたいと思い、大学生の間にアプリケーションをつくる会社やECの運営をする会社、サーバーを監視する会社など、IT関連企業9社でアルバイトしましたね。
大学卒業後は、東京大学大学院の総合情報学専攻に進み、そこで初期の「popIn」(iPod touchの小さい画面のなかでコピーや検索ができるスクリプト)を開発したんです。プログラムの一環で、「popIn」をアメリカのシリコンバレーでプレゼンしたら、評価が高かったこともあり、東大内部の投資会社「UTEC」と特許管理機関「TLO」の力を借りて起業したのが最初です。
日本でビジネスをして感じるのは、日本のマーケットはとてもフェアだということ。これまで提供してきたサービスや製品のすべてにおいて、僕が中国人であるという理由で導入を断られたケースはひとつもなかったですし、政治的な思惑で企業や製品を排除するといったこともないと感じています。アジアのほかの国でもビジネスを展開していますが、日本ほど公平なマーケットはありません。
サービスや製品のヒントとなるニーズはどのようにキャッチしていますか?
toBのサービスは、共通のニーズがあることが重要と考えています。これまでの経験から、3社以上から届いたリクエストは間違いなく世の中のニーズであり、ビジネスに結び付くと感じています。
toCの製品は、僕自身の悩みを解決するものを目指してつくっています。過去にはユーザーアンケートを取って開発に臨んだこともあるのですが、他人の考えを把握してニーズを汲み取るって、難しいんですよね。自分が欲しいものであれば、自分と似た考えの人は欲しがってくれるだろうと、ある程度の顧客基盤を想定できると思っています。
実際に「popIn Aladdin」は、私の経験から生まれました。自宅のリビングで私と妻はそれぞれのスマートフォン、子どもはiPadと、同じ空間にいながらバラバラの情報体験をしている状況を見て、リビングの本当の役割は何だったかなと感じたんです。家族が集まるものを考え、シーリングライトと一体化したプロジェクターというアイデアに行きつきました。「スマートバスマット」も、会社や事業の成長の一方で僕の健康診断の結果は悪化している現実を前にして考え始めました。かつて急病で他界した父の生前の体重変化が気付きとなり、生まれた製品です。
いま取り組んでいるヘルスケアビジネスの将来はどう考えていますか?
現在、issinでは「スマートバスマット」の販売に加えて、生活習慣改善サービス「スタイルアッププログラム」、オンラインエクササイズサービス「Smart 5min.」の提供も始めています。すべてに共通しているのは、インターフェースの力を使って健康を習慣化すること。人生100年時代といわれるいま、健康管理を習慣化し、一生継続できる仕組みが求められると考えています。
そして、issinが最終的に目指す世界は“生命力溢れる世界”。「健康ってなんだろう?」と考えたときに見えたのが、好きなことをやって輝いている人の姿でした。そのためには身体の健康はもちろん、心の健康ややりがいのあることができる環境も重要です。いまは身体の健康に向けて動き出したところですが、いずれはメンタルケアややりたいことを見つけるサポートも実現し、ユーザーの方々が自身を“一新”できるようなソリューションを提供したいと思っています。心も体も健康で好きなことができて生き生きしていると、仕事も勉強もプライベートも充実しますよね。
メディア向けのサービスも提供してきた程さんが、これからのメディアに抱いている思いは?
あらゆるものがあらゆる媒体になる時代だと感じています。仮に「スマートバスマット」にディスプレイを付けたらメディアになるように、差し込むコンテキストによって、いままでと違うチャンネルが生まれる。この時代に考えられるメディアのフォーマットや情報の出し方は、無限にチャンスがあると思います。
そのチャンスをつかむ方法を見つけたいですし、僕は常にメディア視点で事業を展開してきたので、いまもその視点は当たり前のように前提としてあります。また、メディアの皆さんのおかげでここまで来れたので、貢献する方法も考えています。
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