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子育て・保育 公立保育所を中心とした公的保育制度の拡充を【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】

新型コロナウイルス感染症の流行の波が繰り返し起きる下で、保育所・学童保育が果たしている公的役割の重要性が改めて広く確認されると共に、低すぎる保育士の配置基準や面積基準など、制度の問題点も浮き彫りになっています。
すべての子どもたちが健やかに育つ環境をいかに保障するか、政治の責任が問われています。

災害や感染症の流行といった非常時においても、保育所・学童保育がその役割を果たすためには、制度、人員、施設、物資などの裏付けが必要です。十分な基準作りと、その実施のための財政措置は国の責任です。

しかし、この間、政府が行ってきたことは、保育の充実・拡充への逆行です。国庫負担軽減・規制改革路線のもとで、公的保育制度の後退、基準・規制の緩和を進められてきました。

こうした下で、現場では、平常時でさえ、人員・施設共にギリギリの保育を迫られ、そこにコロナが追い打ちをかけています。

公立保育所の増設と、保育士の処遇改善を政府に迫りました。

公立保育所は、20年で3割も減少。
公立保育所の増設を!

日本の保育は、公立保育所を中心とした認可保育所による公的保育制度が原則です。これは、経済的な事情や、病気、障害など様々な事情を抱えた子も含めたすべての子の保育を受ける権利を保障するための仕組みです。

しかし、この間、公立保育所は大きく数を減らしてきました。
・その原因は何か。
・2019年10月からスタートした幼児教育・保育の「無償化」が公立保育所に与える影響は。
公立保育所の増設を求める質疑をまとめました。

◆国の政策誘導によって大幅に減少

公立保育所の施設数と定員の推移をグラフにすると以下のようになります。

青い線が施設数で、オレンジの棒グラフが定員数です。どちらも右肩下がりで減り続けていることがよくわかります。

2019年4月3日衆院内閣委員会質疑より抜粋>
【塩川議員】

20年間で公立保育所の施設数は3分の2、定員数は4分の3に減少しました。保育士は、過去14年間で8割に減少しています。このように公立保育所が減少している理由は何ですか。

【本多厚生労働省大臣官房審議官】
保育の受皿整備に当たりましては、保育の実施責任がある市町村が、公立、私立の役割分担も含めて地域の実情に応じて取り組まれているものと承知しております。さまざまな理由が考えられますため、一概にお答えすることは困難かと考えております。

【塩川議員】
この間、国は、公立保育所の運営費・整備費の一般財源化集中改革プランや行革推進法などによる地方公務員の定数削減の推進を行ってきました。これらの地方行革の推進政策によって、公立保育所が削減されてきたということじゃないですか。

【本多厚生労働省大臣官房審議官】
政府全体として進めてまいりましたそういった方針も含めまして、また、さらに、地域の実情も含めて、市町村が御判断をされているものというふうに承知しております。

厚労省は、公立保育所の削減は市町村の判断としつつ、「政府全体として進めてきた方針も含めて」と国の政策誘導の影響を否定しません。

【塩川議員】
一連の政府の施策の責任こそ問われるわけです。大臣に伺います。
2019年10月からの「無償化」では、公立保育所における自治体負担が10分の10となることで、結果として、公立保育所減らしを加速させるんじゃないのか。そのことが、保育所増設による待機児童の解消や保育士の処遇改善に逆行するものとなるんじゃないのかと考えますが、大臣はいかがですか。

【宮腰光寛少子化担当大臣】
国と地方へ配分される消費税の増収分を活用することにより、必要な地方財源をしっかりと確保した上で、国と地方がよく連携して進めてまいりたいと考えております。

【塩川議員】
必要な地方財政措置を行うというんですが、過去の三位一体改革のときの運営整備費に係る国庫負担金や整備費の廃止、一般財源化というのは、公立保育所減らしに大きくつながっていったわけです。今回の無償化も、それと同様に、公立保育所減らしを加速させることになる。これが待機児童の解消や保育士の処遇改善に逆行するということを言わざるを得ません。
今回の無償化が、認可保育所中心の自治体の保育実施義務に支えられた公的保育制度を後退させるものとなる。

まとめ

20年間で3割も公立保育所が減少しているというのは衝撃でした。

公立保育所は、コロナ禍でその役割を大いに発揮しました。感染拡大で休園になった園の子どもたちを近隣の公立保育所が受け入れ、保育士の派遣が要請されれば、公立保育所の保育士が応援に入るなど、地域の保育を守る役割を担いました。

公立保育所の民営化が進んでいる背景には、国が、公立保育所の運営費・整備費を一般財源化し、地方行革といって、自治体に民間委託の推進や、地方公務員の定数削減を求める「集中改革プラン」の作成と実施を求めてきたことがあります。
政府は、「市町村の判断だ」と片づけるのではなく、国として公立保育所に対する新たな財政支援制度を創設し、保育所の建設や分園の配置・改修への補助、運営費の国庫負担分の復活などを行うべきです。
それでこそ、保護者と保育関係者の「安心・安全な保育を」との願いにこたえることができるのではないでしょうか。<スタッフ>


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