消費税増税 年収200万円台の方たちへの対策はあるのか? 茂木大臣「車やマンションを買えば減税になる」と答弁【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】
安倍政権は、消費税を5%から8%へ、8%から10%へと、引き上げました。
消費税増税は、特に低所得者の暮らしを圧迫しています。当時、安倍総理は、消費税が上がれば所得が低い人ほど重くのしかかる逆進性があることを認めながら、軽減税率や増税対策を行うので「緩和できる」と答弁しました。
この「増税対策」が、低所得者への負担軽減にはつながるのか、塩川議員がただしました。
消費税は低所得者ほど重い負担がかかる逆進性がある
<2019年2月25日衆議院予算委員会より>
【塩川議員】 総理にお尋ねしますが、この10%への増税は、5兆円を超える負担増になります。国民生活に大きな影響を与え、中小・小規模事業者の経営を圧迫し、日本経済に打撃を与えるものです。特に、低所得者世帯の暮らしを圧迫します。きょうは、この低所得者世帯にとっての消費税増税について質問をしたいと思っています。
総理に確認をいたしますが、消費税には低所得者に重い負担がかかる逆進性がありますね。
【安倍総理大臣】 消費税については、負担のみを見れば、低所得者ほど収入に占める税負担の割合が高いという意味で、いわゆる逆進性を有するものでありますが、増収分が社会保障の充実、安定化に充てられることにより、受益は一般に低所得者ほど大きくなることから、そうした受益の面とあわせて評価すべきであると考えています。
また、今般の消費税率の引上げに当たっては、幼児教育の無償化や、年間最大六万円の年金生活者支援給付金等の社会保障の充実を行うことに加えて、所得の低い方々への配慮として、食料品等を対象に軽減税率制度を実施することとしておりまして、いわゆる逆進性を緩和することができると考えております。
【塩川議員】 パネルをごらんいただきたいと思います。
年収に占める消費税の負担率であります。消費税の8%での、年収が低い世帯と高い世帯の差は5.4ポイントになります。消費税10%、これは食料品など据置きの、今予定されているものですけれども、この場合において、年収が低い世帯と高い世帯の差は6.2ポイントになります。どんどん税率が上がれば広がっていく。逆進性の高い消費税が10%に増税されれば、低所得者に一層重い負担がかかることになるんじゃありませんか。
【茂木大臣】 (略)年収が高いほど、消費性向、これは下がるわけでありますから、先ほど総理の方からもありましたように、消費税には、何らの対策もとらなければ、低所得者ほど家計支出に対する税負担の割合が高い、こういう逆進性があるわけでありまして、そこで、今回は、低所得者など真に支援を必要とする層にしっかりと支援の手が行き届くようきめ細かい対応を行っているということでありまして、消費税率引上げの増収分の半分を、教育の無償化であったりとか社会保障の充実、必要であれば細かく説明をさせていただきますが、それにしっかりと使っていく。
さらには、軽減税率の問題でいいますと、確かにボリュームでいいますとそうですが、比率でいいますと、例えば飲食料品、これを8%のまま据え置くということによりまして、低所得世帯は全体の支出に占める飲食料品の割合が3分の1、一般の方は4分の1、こういったことからも、より低所得層に配慮した施策、こういったことになっていると考えております。
【塩川議員】 いや、軽減税率というけれども、これは据置きでしかありません。ですから、ここにあるように、8%の負担で、年収が低い世帯、高い世帯、こういうことでいえば5.4ポイント、これはそのまま残るわけですから、これが何らか低所得者対策になるということは、これはどう考えてもまやかしだと言わざるを得ません。
政府の「増税対策」は“まやかし”
【塩川議員】 まず、夫婦とも65歳以上の高齢者世帯、家計調査によると、年金が下げられたことで実収入が減少する、一方で、物価は上がり、実支出は増加をする、社会保険料や直接税、消費税の負担増が大きい、家計は月に4万円の大赤字となっている。消費税10%増税がそこに大きくのしかかることになります。
そこで、質問ですが、このような、住民税非課税世帯ではないが低所得の高齢者世帯に対して、今回の一連の増税の対策は、何らかの恩恵というのは及ぶんでしょうか。
【野田委員長】 速記をとめてください。
【野田委員長】 速記を起こしてください。茂木国務大臣。
【茂木大臣】 先ほど細かく説明をしなかったわけでありますが、消費税率引上げ分の増収分の半分を使って、介護保険料の軽減の拡充であったり、年金生活者につきましては支援給付金を給付する、それから、住民税非課税世帯以外で言いますね、高等教育の無償化につきましては、住民税非課税世帯だけではなくて、それより上の2階層につきましても、住民税非課税世帯を10としますと、その3分の2、3分の1といった形で学費の免除、さらには返さなくていい給付型の奨学金、こういったものも手当てをさせていただきたいと思っております。
【塩川議員】 いや、聞いているのは、夫婦とも65歳以上の高齢者世帯なんですよ。子供はいないんですよ。
ですから、住民税非課税世帯ではない……
(茂木大臣「だから、前。そうじゃなくて、途中で言ったから、これ」と呼ぶ)
【野田委員長】 大臣、質疑中だから、ちょっと黙っていてください。塩川さん、どうぞ。
【塩川議員】 いやいや、私が聞いているのは、夫婦とも65歳以上の高齢者世帯で住民税非課税でない場合にはどういう恩恵が及ぶのかと言ったのに対して、今答えていなかったわけであります。
【塩川議員】 だから、実態とすれば、こういう高齢者世帯に対しては及ぶものがないということになるわけであります。
【塩川議員】 同じことは、単身の勤労者の場合もあります。
パネルを見ていただきたいんですが、勤労単身者で年収が200万から300万円、(略)1カ月当たりの支出を見ていただきたいんですが、2000年と2018年の比較として、2000年の実支出、1カ月18万3429円に対し、2018年は17万159円へと減少しています。食料費は1割減らし、住居費も2割減らし、服や靴は3割減らし、教養娯楽費は4割減らす。その一方で、光熱水費は2割ふえ、社会保険料は3割ふえる。
消費に係る消費税を試算すると、5%だった2000年の5529円が、これは1カ月単位ですよ、2018年には7649円になる。年間で2万5000円も増加をすることになった。10%増税になれば、更に1万7000円も増加をすることになります。
【塩川議員】 切り詰めた生活をしているこのような年収200万円台の単身労働者に対して、今回の消費税の10%増税における増税対策の何らかの恩恵というのは及ぶんでしょうか。
【野田委員長】 塩川さん、どの大臣の答弁を求めますか。
(塩川委員「いや、それは向こうが決めてもらって結構です」と呼ぶ)
【野田委員長】 では、速記をとめてください。
【野田委員長】 速記を起こしてください。茂木国務大臣。
【茂木大臣】 確かに、年収200万から300万、単身者の世帯でいいますと、消費税の負担も、多額の出費を伴う子育て世帯、これと比べてみた場合には相対的に小さいと考えていることから、一定の御負担、これをお願いすることになりますが、
【茂木大臣】それでも、その上で、先ほど、軽減税率が適用されるわけであります。さらには、中小・小規模事業者でキャッシュレス決済によりまして買物した場合には、ポイント還元、単身者でも当然つくことになります。さらには、自動車を買われる、若しくは、自分でマンションを買われる、こういったときにも、税制上の措置、これはとられることに当然なる形であります。
【野田委員長】 御静粛に。
【塩川議員】 見てもらったように、住居費を減らしているんですよ。何でマンションの話が出てくるんですか。
キャッシュレスというのは、そもそも需要平準化対策でしょう。増税に伴う逆進性緩和の対策じゃないんですよ。そういう点でも、今回のこういった200万円台の勤労単身者の世帯に対して増税に係る一連の対策の恩恵が及ばないという話が、こういうところでもはっきり見えてきたわけであります。
消費税増税分は大企業減税に回された
【塩川議員】 私は率直に、今のやはり税制のあり方そのものを見直すことが必要だ、生計費非課税、応能負担の原則こそ貫くべきだということを申し上げたい。
消費税導入から30年たちました。消費税は、社会保障の財源の確保と称して導入され、税率の引上げを行ってきましたが、国の税収はどうなったのか。消費税導入直後、消費税率が3%のときの1990年度の国の税収は60.1兆円でしたが、消費税率8%の2018年度の国の税収は59.9兆円で同じ。30年たって、消費税は3%から8%に上がったのに、税収はふえていない。
総理にお尋ねをいたします。このパネルにありますように、法人税と消費税の関係であります。
【塩川議員】 国の一般会計税収における法人税、消費税の推移のグラフですが、この30年間、消費税が導入をされ、税率が3%、5%、8%、さらには10%にしようとしております。一方で、法人税率はずっと引き下げられてまいりました。結局、この棒グラフで立っているような実額で見ていただいてもわかるように、法人税がずっと減るのに対して、消費税がもう階段状にどんどんどんどんふえていく。結局、消費税増税は、法人税減税の穴埋めに使われただけではありませんか。
【安倍総理大臣】 消費税は、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しておりまして、勤労世代など特定の者への負担の集中がない、社会保障に係る費用を賄うための財源としてふさわしいと考えています。
引上げによる増収分は、これまでも、法律で定められたとおり、全額社会保障に充てられており、他に利用されるわけではありません。本年10月の消費税率10%への引上げについても、全世代型社会保障の構築に向けて、安定財源を確保するためにどうしても必要なものであります。
引上げに当たっては、きめ細かな低所得者対策をしっかりと講ずることとしております。また、それに合わせて、幼児教育の無償化、また、来年は、真に必要な子供たちに対する高等教育の無償化等も行っていくわけであります。低年金者対策もしっかりと行っていく。
そこで、今委員御指摘の、では、企業の法人税、下げているではないかという御質問でございますが、企業に対する税制については、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んできましたが、その中でも、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、財源をしっかりと確保してきております。
いわば、その減税をこちらに充てたということではなくて、基本的には、先ほども申し上げましたように、消費税の税収については全額社会保障費に充てていくということであります。
他方、法人税につきましては、いわば日本の企業の競争力を高め、しっかりと国際競争力をつけて戦い抜いて勝っていく中において、雇用を守り、さらに、その中で企業が収益を上げれば、それを、設備投資や、もちろん大切な人件費の上昇に充てていくということを我々は期待をしているわけであります。
また、これまで、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引上げや、金融所得課税の見直しにより税率を従来の10%から20%に倍増するなどの施策を既に講じてきているところでございます。
【塩川議員】 これだけ言いわけしないと説明できないのかと言わざるを得ません。
企業規模別の法人税負担率を見ても、資本金1億円未満の中小企業の平均は19.6%です。しかし、資本金10億円超の大企業は18.9%、100億円超は12.5%、連結納税法人は5.8%。大企業の法人税負担率は中小企業よりも低い。こういう税制こそ見直して、社会保障や教育の財源を確保すべきじゃありませんか。
【塩川議員】 税のあり方が問われております。経済力のある大企業、富裕層に応分の負担を求め、生計費には課税しない、累進制にする、これが基本だ。
税制を根本から転換すべきだということを申し上げて、質問を終わります。
まとめ
塩川議員は、消費税導入から30年、法人税減税の穴埋めに消費税増税が使われただけではないかとしました。それに対し、安倍総理は「消費税は安定した財源。賃上げなどを促すため、法人税改革を進めてきた」と述べ、国民生活の実態をかえりみない姿勢があらわとなったのです。
この質問は、消費税10%増税の2019年ですから、コロナ禍の直前です。
コロナ危機が襲い掛かり、苦闘する中小企業者にも、仕事がなく生活が苦しい非正規労働者にも、消費税は重くのしかかり続けています。一方、大企業は、コロナ危機でも内部留保を7兆円も増やしました。大企業の税の実質負担率は、中小企業より低いことに変わりはありません。
大企業・富裕層を優先して、国民の生活実態をまったく理解せず、生活困窮者に寄り添おうともしないのが、自民党政権です。
税制は、応能負担の原則を貫き、生活費には課税しない、累進性にするのが基本です。税制そのものを見直すべきです。
2021年総選挙で、日本共産党は「消費税減税・廃止、富裕層と大企業を優遇する不公平税制をただし、格差を是正します」と政策を出しています。
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