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もし、ワインを知らなかったら

インタビュー相手 サンサンワイナリー 武藤聡さん

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ワインって、”ちょっと難しいお酒”というイメージがありませんか?

産地やぶどうの品種の違い、香りや味の表現など。突き詰めたら奥深く、おもしろい世界なのだろうけど、よく分からずに毎度ほかのお酒を頼んでしまう。そんな人も多いのではないでしょうか。

じつは私もそのひとり。でも今回、サンサンワイナリーの武藤さんのお話を聞いて、ワインが少し身近に感じられるようになりました。

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2015年に塩尻市柿沢にオープンしたサンサンワイナリー。広々とした畑の隣に建てられた醸造所とショップ&レストランは、ヨーロッパ家屋のような外観で思わず目を惹かれます。

ここで総務・企画・営業を担当している武藤さんは、佐久市出身。

佐久市と言えば日本酒が有名ですが、武藤さんはどんなきっかけでワインにハマったんですか?

「20代の頃は佐久市のレストランバーで働いていました。最初はワインの知識がまるっきり無かったんで、近所の飲食店のマスターたちと毎月会費制で飲み会を始めたんです」

私と同じように初心者の時があったんですね。

「そうそう。毎月会費制で良いワインを飲ませてもらって、今だともう手に入らないような何十万もしちゃうようなワインが、当時1万円とか2万円とか、もう本当に今の1/5くらいの価格で手に入りました。

それがきっかけでワインに”どっぷり”ハマっちゃいまして。お店の仕入れというよりはね、自分の趣味でワインを集めるようになっちゃった」

”どっぷり”ですか。その時がワインにハマり始めたきっかけなんですね。

「うん。そこからワインにはすごく興味があって、いつかどこかでね、ワインを作るような仕事が出来ないかなって思っていたんです」

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すごい!その“いつか”を叶えていらっしゃる。
仕事としてワインの世界に入ったのは、何がきっかけだったんですか?

「安曇野ワイナリーに昔からの知り合いがいて、“まだワインに興味があるなら来ないか”と言われて。レストランのシェフとして安曇野ワイナリーに行きました」

なるほど。ワインが分かる料理人は、レストランとしてかなり戦力になりますよね。
安曇野ワイナリーで2年間経験を積み、次のステップを考えていたころ。武藤さんのもとに、新たなチャンスが舞い込みます。

「サンサンワイナリーのゼネラルマネージャーが元々安曇野ワイナリーに居た方で。その方に声をかけて頂いて、サンサンワイナリーで働くことになりました」

サンサンワイナリーでは、ワインづくり全般の舵取りをする役割を“ゼネラルマネージャー”と呼ぶそう。日本酒でいうところの杜氏にあたります。

そんなゼネラルマネージャーのもと、現在の総務・企画・営業の担当になった武藤さん。営業担当としての勉強以外でも、サンサンワイナリーのワインを飲まれてるそう。

「勉強とかそういうのじゃなくて、好きだから飲んでます」

武藤さんのお気に入りは「シャルドネ ネイキッド」。

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実はこのネイキッド、インタビューの予習と思って、旦那と二人で飲んだうちの1本。優しい南国フルーツのような香りがして、一日の疲れを吹き飛ばしてくれました。“また買いに行こうね”と言い合っていたワインが、武藤さんもお気に入りとは楽しい偶然。

「洋食じゃなくて、和食でも合わせられるんですよね」

へえ、和食にも!

「魚ならカルパッチョとか。あとは野菜もいいです。生野菜じゃなくて、火を入れて味付けしたようなものと相性が良い。あとは天ぷら。フキノトウの天ぷらとか、ちょっと苦みのある春の山菜の天ぷらとすごく合います」

フキノトウ!山菜とワインなんて考えたこともなかったです。

武藤さんいわく、タラの芽の天ぷらと合わせるのもオススメとのこと。長野県民としては親しみありまくりの山菜、ぜひ来年は試してみたいと思います。

でもここで一つの疑問が。なぜ長野県で南国フルーツの香りがするワインが出来るんでしょうか?同じ塩尻市内でも、桔梗ヶ原のワインでは南国フルーツの香りを感じたことはないです。

「これは柿沢という土地由来なんですよ。こんな寒い場所なんですけど、なぜか南国フルーツの香りがあって。標高が高いおかげで、酸味もしっかりあるんです」

土の質や気候の微妙な違いで、ワインの味わいは大きく変わるそう。同じ畑で育てた同じ品種のぶどうでも、年によって味が変わることがあるといいます。

今度リリースされる2019年の「シャルドネ ネイキッド」は、きりっとしたシャープな印象だそうです。絶対飲んでみよう。

ワインって不思議。ワインって面白い。

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「一昔前は、ワインって敷居が高くて、お店で飲むものだったと思うんです。でも最近は家で楽しめるようになってきた。『このワインの香りや色や味わいって、どんな料理にあうんだろう』っていうふうに、自由にやってもらうのがぼくは一番楽しいと思っていて」

もっと自由に楽しんでもいいんですね。
ワインの方程式みたいなものがあると、勝手に思い込んでいたかもしれません。

「今まで、『これじゃダメだよ』と言われていたことを、あえてやってみるのも楽しくて。何がダメなのか知りたいし、何を変えたら合うようになるのかな、とか」

少年が夢中でカブトムシを追いかけるように、サッカーボールを追いかけるように、目をキラキラ輝かせながら話す武藤さん。ただただワインを好きな気持ちが伝わってきて、こちらまでうれしくなりました。

最後に、武藤さんが1人のワインラバーとして、これからワインを飲む人たちにワインの楽しさを伝えるなら、どんな言葉を届けたいですか。

「世界が変わる。食に対する執着心がワインから絶対に深まるので、ワインを知らないと人生の半分損するよって言いたいですね」

半分も!じゃあ武藤さんの人生からワインが消えたら、幸せ半分になっちゃうんですね。

「そうそう。ワインを知らなくても、それはそれで100%だったけど。ワインを知って150%の幸せが今ここにありますね」

ワインのこと、もっと知りたいと思ったら、ぜひ武藤さんを訪ねてみてください。

幸せそうに、楽しそうに、きっと素敵な提案をしてくれると思います。

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(取材・編集 有川茜)

サンサンワイナリーの詳細はこちら

【後日談】

ポケットで携帯が震える。誰かと思えば、実家の祖母から。
「タラの芽貰ったから、週末に天ぷらやるよ~」

待ってました!

ワインと天ぷらの組み合わせを物珍しそうに見ている祖父母。そりゃそうだよね、でもこれ最高だよ!

土曜日のランチがちょっと特別な、うれしいひとときになりました。




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