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多様性を実現するには 相手のことを知る努力 ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.12)

次の原稿の締切がまじかに迫り、これまでのアーカイブをちゃんとあげて追いついとかないとなぁと思い、頑張ります。昨日で今クルーのgcdfの講座12回が終わり、ほっと一息の日曜日。素敵で多様な受講者の皆様に恵まれて、トレーナー側も愉しく進められました。で、午前中に言霊が下りてきてくれたので原稿2本書き、昼からはキャリアデザイン学会の大会用pptを鋭利作成中。ほぼ仕事やっているような1日…。でもって、今日のアーカイブのテーマは「多様性」。gcdfだと第11回で扱いますね。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.12)
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多様性を実現するには  相手のことを知る努力
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オフィスや商業施設で大きな鏡のあるエレベーターを見ることがあると思います。あの鏡は何のためにあるかご存知でしょうか。身だしなみを整えるために使っている方もいると思いますが、本来の目的はそうではありません。車椅子を使っている人がエレベーターを安心して利用できるためにあるのです。

狭いエレベーターの中では車椅子の方向転換が出来ません。エレベーターに入る時は前進で入り、出るときにはバックで出ることになります。あの鏡はバックで出る際に、後ろに人がいないかなどを確認できるようにするためのものです。

駅では、よく入口と出口が違うエレベーターを見かけるかと思います。これはなぜかご存知ですか。察しのいい方はおわかりかと思いますが、これも車椅子の方が安心してエレベーターを使えるためです。

入口と出口が異なることによって、入るときも出るときも、車椅子をバックで操作することなく、前進で出入りができます。駅のような人が殺到する場所では、仮に鏡をつけたとしてもバックで車椅子を出すこと自体が危険であろうという配慮なのです。

いずれも聞いてみれば、なんていうことのない話です。しかし、知らないとわかりませんし、わからないと配慮のしようもありません。「知ること」は大切なのです。

「ダイバーシティ」という言葉があります。日本語では「多様性」という言葉になるでしょうか。先日、ある大学の先生から興味深いお話を伺いました。

『「多様性」の反対語は何か』という問いに、ビジネスパーソンからは「一体感のある」「気心のしれた」といった答えが返ってくることが多いそうです。これは、「多様性って必要だけどなかなか難しいよね」という本音の裏返でしょうか。

「多様性に満ちた社会」とは「ぎくしゃくした」「軋轢のある」社会だという風に、まだまだネガティブに映っているのかもしれません。ダイバーシティの推進の過程で様々な苦労をしていることの表れかもしれません。少し違和感を覚える感覚です。

「多様性の反対語は何か」という同じ問いを学部学生にすると、まったく違う答えが返ってくるそうです。それは「画一的な」です。そしてこの「画一的な」ということを学生はは嫌っています。「多様性」を非常にポジティブな言葉として理解しているのです。

「多様性」というのは、「スタンダード」があるからこそ生まれる概念です。「画一的な」世の中の「スタンダード」を守る境界が強固であればあるほど、ダイバーシティは力ずくで推進せざるをえません。

しかし、もしかすると今の学生が世の中の中心となる時代が来れば、ダイバーシティをわざわざ推進する必要がなくなるかもしれません。そして、強固な境界を壊すために、まず最初にやるべきことが「知ること」なのだと思います。

知らないと誤解が起きます。無配慮になります。知らないと他人事になります。知らないといさかいがおきます。

自分と違う立場をきちんと真摯に「知ろう」という態度が人間関係、職場、組織、日本、そして世界を、よりよい状態に導く唯一の方法なのではないかと思います。「知る」努力を続けていきたいと思います。

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