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障害者の雇用  個と向き合う姿勢学ぶ ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.06)

ご依頼を受けて、ちょこちょこ書いていたもののアーカイブをNOTEでしておくことにしました。今日は日経産業新聞の4回目です。一昨年の暮れくらいから、6~7名でリレー連載のようなものを書いてます。2カ月に1回くらい担当がまわってきます。各内容は広い意味でHRに関係があれば何でもOK。4回目は障害者雇用についてです。とても学びのある領域です。
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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2018.06)
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障害者の雇用  個と向き合う姿勢学ぶ
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 障害者雇用の世界にかかわるようになり随分と経つが、学ばせていただくことが非常に多い世界だと実感する。障害者特例子会社を設立して運営も担当している。5名の障害者で立ち上げた組織は27名に拡大しており、このうち精神障害者が半数以上を占める。
 同社は当初から「働いて、貢献して、稼ぐ」「仲間同士で貢献しあうチームに」「優れた貢献をするために最適な環境を作る」という3つのポリシーを掲げている。
 採用する人の大半は、何らかの事情でしばらく仕事ができていなかった人たちだ。生まれながらに障害を持つ人ではなく、途中で障害を持つようになった社員が多い。いろいろな思いと苦労の末に、私たちの会社に出会ってくれた。
 せっかく働くのであれば、自信をもって給料をもらって欲しい、誇りをもって働いて欲しいというのが、最初のポリシーにこめられている。組織では仲間と協業して欲しい、様々な障害をもった人が相互に補完できればきっといい仕事ができるという思いが2つ目のポリシーだ。それらに対する経営側の覚悟が3つ目のポリシーとなる。
 採用時には一人ひとりと長い面接をする。その人の今までの苦労や思いもきちんと理解した上で一緒に働きたいと思うからだ。会社の方針を伝え連携がとれる体制を構築するために、採用が決まったらご家族への説明会も開く。必要があれば、支援機関や主治医とも積極的に会っている。
 障害者雇用を継続するには面での対応が大切だ。会社だけでできる範囲はどうしても限られる。採用するからには、安定的に就労して欲しい。そのためにも、この職場が1人ひとりの社員の「居場所」であり、「持ち場」となって欲しいと願っている。「居場所」をもてたという感覚は「自己肯定感」につながる。「持ち場」を任されたという感覚は「自己効力感」につながる。この2つの感覚は安定して仕事をしていくために、そして何よりも生き抜いていくために大切なものだと思う。
 これらは働く中で得られるものだ。同社には、親会社の各部署が業務を外注・委託している。パソコンを使った業務が中心で、今では20種類以上ある。価値のある仕事を提供できているという実感を皆がもてることは何よりも大切だ。
 もう1つ大切なのは、「個」をみることだ。特に精神障害の場合、同じ病名がついていても、日々の状態は人によって千差万別だ。病気についての理解は必須だが、パターン化は禁物で、とにかく1人ひとりをみることが大事だ。
 「みなんちがって、みんないい」という金子すずの詩が障害者支援の現場では引用されることがあるが、まさにその通りかもしれない。これに対して戦後の日本社会は「みんな同じで、とても楽」というモデルを歩んできた。
 新卒一括採用、企業内人材育成、年功序列、終身雇用といった習慣は、まさに「みんな同じでとても楽」という効率的な世界を作るためのツールだった。しかし、世の中のパラダイムが変わった今、それでは勝てない。
 「みなんちがって、みんないい」を実現しながらも、組織としての大きなベクトルはぶらさない。障害者雇用の現場はその重要さを再認識させてもらえる。

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