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記念すべき"悪夢の一日"-遂に迎えた新江ノ島水族館オープンの日

皆さん、こんにちは!
JCEL株式会社 代表の三坂です。

前回の私の記事では、「前代未聞の価格設定」と題して、既成概念にとらわれない、ビジネスのしくみづくりをご紹介しました。

まだご覧になっていない方は、前回の記事も併せてご覧ください!

開業までのカウントダウン

従来の水族館をリスペクトしながらも多岐に渡り刷新を試みた「新江ノ島水族館」の準備は2004年4月16日開業に向けて怒涛の如く進んで行きました。

開業3ヵ月前になると、工程表に記された何重にも輻輳する作業にクリティカルパスが埋もれてしまい、日々とにかく目の前の課題解決に奔走する日々が続きます。

今、当時を思い返しても多忙過ぎて開業前の日々が自分の記憶から消滅しています。

実はこの頃から毎日同じ夢を見るようになりました。

‟開業の日の朝、オープニング時間になってもお客様がひとりも居ない…“
そんな夢です。

悪夢の当日

悪夢のような日々を経て、遂に開業の日を迎えることになりました。
前日も例の夢を見ました…。

開業当日、まさに「悪夢」を振り払うように神様に祈りながら水族館に向かいました。

オープニングの3時間前に水族館に到着すると、すでにチケットブースの前にお客様の長蛇の列が!

「お客様が来てくれた!やったー!」
思わず心の叫びが口から出てしまいました。

3カ月間毎日のようにうなされていた悪夢をよそにオープニング1時間前には事前に準備しておいた500人ほどのお客様待ちスペースも埋まるほどの盛況ぶり。

スタッフ一同に満面の笑顔が浮かびます。
早くから並んでいただいているお客様の為に「オープニング時間を15分早めてください!」と指示を出しました。

この出足なら今日一日安心して居られると誰しもが思っていました。

嬉しい悲鳴

その後も途切れることなく「片瀬江ノ島駅」からお客様が吐き出されて水族館に向かってきます。

順調には違いないのですが状況は思わぬ方向に向かっていきます。
お客様の来館が時間と共に増幅していき、想定していたペースを遥かに上回る来館スピードになっていきました。

周辺駐車場はすべて「満車」状態。国道134号線は水族館渋滞に!
そして、最寄り駅片瀬江ノ島駅に10分毎に到着するすべての電車から200人超の水族館を目指す人の波が押し出されていきます。

水族館の敷地内で納まらなくなったお客様の並び列は国道134号線の歩道上に茅ヶ崎方面にどんどん延びていきます。

館内はすし詰め状態、外は長蛇の並び列、そこに10分毎に電車から押し寄せる200人超の人…運営責任者の私に館内のありとあらゆるスタッフからインカムで「どうすればいいのか至急指示をください!」と怒声が飛び込んできました。

私は片瀬江ノ島駅から向かう人、チケット発券所、並び列最後部、そして館内の様子の一部が目視できる場所を見つけ、そこで各部署からの情報をインカムで収集し、お客様の誘導とチケット発券スピードの調整を指示して急場を凌ぎました。

ちなみに当日は開館から閉館まで一切の食べ物を口にすることは出来ませんでした。

我が人生でこれだけのストレスをこれだけ長時間に渡って浴び続けたことは後にも先にもこの日をおいて他にありません。

この日からしばらくは「押し寄せるお客様に押しつぶされる夢」を見ました…ホントです(汗)。

チケットの意味

余談ですが…

今の時代、ネットでのチケットマネジメントが当たり前ですが、2004年当時はリアルチケット販売が主流。それ故にビジネスのしずる感を味わえた気がします。

当時、私は水族館のスタッフに

「水族館での数十億円の売り上げは1000円札の積み上げ。皆さんのお給料は一人一人のお客様から頂いた1000円札から出ている。会社ではなくてお客様に感謝だね。」

と話したものです。


JCEL株式会社 代表取締役 三坂伸也

三坂伸也の略歴

一級建築士

早稲田大学理工学部を卒業。
1985年大成建設(株)入社。
1989年オリックス(株)入社。

オリックス不動産(株)水族館事業部長、オリックス水族館(株)常務執行役員を経て、2014年12月オリックス水族館(株)代表取締役に就任。

京都水族館(京都市下京区)、すみだ水族館(東京都墨田区)の開発・運営責任者として陣頭指揮を執る。

2019年 2月JCEL(株)設立、代表取締役社長に就任
JCEL株式会社
国内で常に新たな水族館の形に挑戦をしてきた三坂伸也が代表を務めるJCEL株式会社。満を持して海外へ進出、「水族館の公園化」