流水メン

トイレの音消しマシーンには驚く程大きな音が出る物がある。念の為、音消しマシーンとは、流水の擬音で排泄の音を誤魔化すあのマシーンのことだ。女子トイレの音が少し離れた男子トイレにも聞こえてくる程。誰かが女子トイレで奮闘中である事をアピールしているのだろうか。会社内が結構酷いのだが、静かな会議室フロアなどでは、ワンフロア上や下の音まで聞こえてくる事もある。何の目的なのか知らないが、嫌がらせじゃないかと思う。それとも音を消す以外に目的があるのか。

職場を視察に回る会社の社長。そんな時、女子社員はトイレのブースに入り、一斉にスイッチオン。オフィスに響き渡る音消しマシーンの流水音が社長を迎える。流水音は社長を称えるテーマ音楽。両手を挙げてそれに応える社長の顔はいつもより誇らしげだ。

「若林さん、僕と付き合ってくれないか」
今日の残業で会社にいるのは、丸和君と若林さん。丸和君は、二人になるチャンスを狙っていたのだ。
「丸和さん、ちょっと待ってて」
とトイレに飛び込む若林さん。響いてくるのは音消しマシーンの流水音。
「えっ、本当にいいの」
と小躍りの丸和君。トイレの大音響は「愛している」のサインだ。

トイレに響く音消しマシーンの流水音。その音に反応し、秘密基地でも大音響。
「おい、みんな出動だ。配置に着け」
トイレの大音響は超獣戦隊アニマライザー出動の合図。
「アニマジェット発進」
「アニマタンク発進」
山が割れて秘密基地から飛び出すジェットとタンク。トイレのスイッチでメカが発進。奇跡の力だアニマライザー。

食欲がない。そんな時には、音消しマシーンの流水音だ。「ジャー」という音をおかずにご飯を食べる。いつもよりご飯の甘みを感じるのは気のせいではない。

夢が広がる音消しマシーン。ビジネスにもレジャーにも不可欠な物となると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?