MLB2020年シーズンの行方
※こちらは2週間ほど前に書きました、状況はかなり進展していますが、その時点での見解であることご理解ください。最新情報は明日以降別noteでアップします。このノートを作成中に選手会がMLBの提案に対する再提案のニュースが出ていますので、今週注目です!
米国スポーツ業界は、新型コロナウイルスの影響による試合開催不可の現状に非常に苦しんでいます。スポーツイベントの復活が無責任という見方がある一方で、安全確保の方法を熟慮の上で再開して欲しいという意見が一般的です。
『America’s Pastime』という言葉があるように、野球がプレーされることで全国民に元気と勇気を、また『いつも通り』の生活を送る活力を与えられる事にもなります。これは911後にブッシュ大統領がメッツ戦で始球式を行った時、ボストンマラソンテロ後にDavid Ortiz選手(Boston Red Sox)が試合前スピーチを行った時などが良い例とされています。
莫大な資本のあるリーグ(NFL, NBA, MLB, NHL, MLSなど)は現時点では経済的な危機には及んでいませんが、NFLが一部従業員の減俸、コミッショナーが給料(通常ボーナス含め$40M)を受け取らないと報道されています。チームレベルでは、一部スタッフの減俸(多くが高所得のエグゼクティブ職員のみ)はあるようですが、経営難までに陥っていることはないようです。
メジャーでないリーグは他のビジネスでも起こっている存続危機に追われています。2020年にスタートした新アメフトリーグのXFLは既に破産、マイナースポーツのリーグ・団体は国のスモールビジネス救済策、PPP(Payment Protection Program)の条件を満たせば申請できますが、将来は不透明で今後どのように賄っていくかが注目です。
台湾リーグ、韓国リーグが開幕し、ここ数日でMLB開幕の話題が加速していますが、コロナを別として問題点が多々あります。
現時点でのMLBと選手会は消して良い関係ではなく、来年CBA(Collective Bargaining Agreement, 労使協定)が切れることもあり、ここで妥協することが今後の交渉に響くと考えられています。
シーズン短縮の場合の主な収入減要因
• 放映権 ⇒ 実際放送局との契約内容は不明だが、調整は行われる見込み
• Game day revenue(チケット、コンセッション、グッズ) ⇒ 無観客になればゼロ
• スポンサー収入 ⇒ 放送+球場での露出機会減による降板・規模縮小。ビックスポンサーで知られるA-B InBev(バドワイザー)は、これからスポンサー先チームと契約金・権利の調整を行うと発表している。大企業のこの対応から、その他企業ではより大幅な調整が必要になる事が予想される
MLBと選手会が一番揉めるであろうとされているのは、シーズンが無観客で行われた場合の年俸調整。
Game day revenueは全体レベニューの30%〜50%(チームによって異なる)を占めているため、無観客開催になった場合、オーナー側は年俸調整が必要と主張。
選手会の主な意見
• 開幕延期が決定された時点において年俸調整の合意をしているため、改めて見直す必要なし
• 新たな案(レベニューシェアモデルなど)や一時的に導入された妥協案がCBA交渉で利用される恐れあり
• 年々球団価値の上昇、それに伴う球団売却時のオーナーが得る多額の利益が選手への還元は一切ない事から、一時的なチームの業績悪化について選手が負担する必要なし
• 最善の対策を導入された上でもウィルスに感染する危険性は高く、各選手の家族もその危険に晒される事から、保証・報酬は契約通り受けられて然るべき
スポーツが復活できる状況になってもリーグと選手会が復活案に合意しないことは”PR Crisis”になりファン離れになりかねないため、できる限り平和的に解決されることを期待します。
マイナーリーグに関して
MiLB(マイナーリーグ)はほぼ全ての収入源がgame day revenue のため、無観客であれば開催不可の旨を発表しています。この場合は、各マイナーチームの運営費を、メジャーチームが負担するオプションのみが残されています。まずはMLBの対応が優先されるので、MiLBについての交渉は後になる見通しです。しかし、MLBとMiLBも良い関係でないため、これも様々な政治的な動きが出てくると推測できます。
もちろんコロナが落ち着かなければスポーツは開幕できないので、終息時期の見通しがつくまで様々なオプションを各リーグが検討し、国、州、ホーム都市、リーグ、チーム、選手と様々なレベルでの調整が必要になります。あまりにも不確定要素が多いため今年スポーツの復活は無理なのではと思ってしまうこともあります。
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