「色」という名のロジック

皆さんおはこんばんにちは!
(4328文字/約6分で読めると思います)

加藤 昌治さんが書かれた「考具」という本に、アイデアを出す方法の一つとして「街を歩くごとに特定の色を探す」のはいいよと書かれていたので、早速通勤時に試してみたんですが、こんな店あったんだとか、こういう色は結構使われてるんだなぁといった新しい発見があり、人間の脳みそとはまぁ都合の良い情報しか取得しないんだなぁ思った今日この頃です。

脳みその容量にも限界はあるので、興味ないな、必要ないなと判断したものに関しては無視しているようですが、逆に興味があれば意識的のその情報を取り込もうともします。例えば、最近買おうか迷っている靴があると、やたら人の足元を注視してしまうなどがあります。(NewBalanceは合わせ方が大事)

興味があるものはそれで良いんですが、逆に自分の興味の外にある情報を取得するためには、無理矢理にでも意識する仕組みが必要になってきそうです。

色使いというものを意識していく中で、今日は飲食店の色使いを見てみようとか意識的に変えるみるんですが、そうすると今まで見えてこなかったものが見えてきますし、これまではぼんやりとしたイメージで色彩を捉えていましたが、そこには明確なロジックもあるんじゃないのかな。。?と思いそんな色について考えていこうと思います!

色の認識方法

そもそも人間は色をどう認識しているのか、という話なんですが、人間が物体を見たとき、それを物体として認識するまでの間に「光源(太陽や蛍光灯など)から物体へ光が当たり、物体に当たって反射した光は角膜の後ろにある水晶体で曲げられ、ガラス体を通過して、眼球奥の網膜上で像を結ぶという流れがあります。

この網膜には視細胞と呼ばれる細胞が並んでおり、目に入ってきた光によって刺激を受けると、その刺激を信号に変えて視神経を通じて脳に伝え、この信号を人は"見えている物体"として認識するという流れになります。網膜に映る像は,実際は倒立像ですが、脳がその情報を正立像へ変換してくれるおかげで、違和感なく見ることができているんですね。

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では、目に入ってきた反射光から色をどう判別しているのかということですが、そもそも人が認識できる光の波長は約400〜700ナノメートル(1メートルの10億分の1)とされ、この領域の光のことを可視光と呼びます。

光の波長というとあまりイメージできませんが、そもそもの光というのは「電磁波」の一種であり、電磁波というのは電界と磁界が組み合わさった物です。地球は大きな磁石ですし、大地と雲は大きな電池とも考えられますが、それらのエネルギーが空間を振動しながら伝播していく物理現象のことを総じて電磁波と呼びます。

そんな電磁波の中には人間が認識できる可視光から、目には見えないガンマ線、紫外線などが存在し、その中での色というのはこの可視光における特定の波長によって識別され、例えば530nmの光を直接見ることで、その光は緑色であると認識することができるのです。

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それぞれの色によって生まれる波長の差というのは、物体の表面が特定の色だけを反射し、それ以外の色を吸収することで生まれます。紫色の花であれば400nmの光だけを反射し、赤い靴は700nm前後の光だけお反射し、それ以外の色を吸収しているため、色の差が生まれるのです。

反射される前の光源となる太陽光や蛍光灯は白っぽく感じますが、ここには可視光の波長の色が全て含まれています。厳密に言えば全ての色を認識するところですが、脳がこれを自動的に修正して中性的な白に変換しているため、白っぽく見えるというメカニズムなんですね。

このように、色というのはあくまで反射する光の波長による違いでしかなく、それを人間の脳みそがよしなに識別してくれて、これは赤色、これは緑というように自分達に認識させてくれているということになりそうです。

色に引きずられる印象

人間が色を色として認識するのは光の波長によるものだということが分かりまたが、この色の違いによって変わるのは見た目以外にも沢山あるのでは。。?と思い調べていると人間の感情や印象というのはこの色にかなり引きずられていることを知りました。いくつか具体例を出しながら見ていこうと思います。

光の波長に温度という概念はありませんが、色によって感じる温度差というのはありそうです。オレンジを見るとどこか暖かい気持ちになり、青色を見ると涼しげなイメージを覚えます。

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暖色、寒色とその中間である中性色という分けられ方をするそうですが、暖色は赤〜黄系、寒色は青緑〜青系、中性色は黄緑〜緑系と紫系を指します。人間というのは、暖色系のような彩度の高い色を見ると興奮感を覚え、寒色系の彩度低めな色を見ると沈静感を覚えるそうです。

企業ロゴで見比べると、ストリートブランドのような激しめの目立ってなんぼなSupremeは赤が中心で、自然に優しいウェアを扱っているpatagoniaは寒色系が多く使われており、リラックスした印象を与えてくれる気がします。

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また、暖色は進出色、寒色は後退色とも呼ばれており、暖色は前に出てくるような印象を与え、寒色は奥に入ってくるような印象を与えます。下の正方形は同じ大きさであるにも拘らず、進出色であるオレンジ色の方が手前にあるように感じるのもこの影響のためです。

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ここにも波長の長さが関係しており、人は波長が長い赤やオレンジほど近くに、波長の短い青や紫ほど遠くに感じるようです。この影響からか、ファッションでも暖色系は膨張色とも呼ばれ、手前に広がって見えるようなカラーは着膨れするような印象があるためスタイル重視のコーディネートには避けられたりしますね。。

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ちなみに、囲碁の碁石は白と黒で分けられていますが、直径はそれぞれ白が21.9mm、黒が22.2mとなっており、同じ大きさに見えるように調整がなされているらしいです。。!

他には「重さ」を感じさせるものもあります。下の2つの球体は同じ大きさですが、どちらかというと右側の方が重く感じるかもしれません。このように、明るさが強ければ強いほど軽くみえ、暗い色はほど重く感じられるようです。

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引っ越し屋さんの段ボールに白が多いのはこういった理由もあるらしく、運ぶものが比較的重い引っ越し屋さんにとって、運ぶ物自体を白くすることで、少しでも軽いと錯覚させる効果があるということですね、、!

このように、単なる波長の違いで変わる色でも、人間に与える印象の違いはかなり沢山あるようです。下の記事がとても分かりやすかったのですが、主に心理的・生理的・感情的・文化的影響があると言われており、最初の企業ロゴであれば、その企業にどのようなイメージを持つかという心理的影響がありそうです。


生理的影響であれば、色によって心拍数が上がったり、免疫力が高まったりするもの、感情面では暖色はポジティブ、寒色はネガティブな気持ちになり、紅点を見ると日の丸を思い出す日本人など文化的影響もありそうです。

色で作られる空間と印象

色が及ぼす影響は多岐にわたりますが、実例をいくつか見てみましょう。みなさんご存知の中華料理屋さん「大阪王将」のイメージカラーはもともと赤・黒でしたが、一昨年位から黄色を基色とする改装が行われています。

注目すべきはその影響。2018年11月下旬に黄色い看板に変えた東京・西五反田店では、翌月の売上・客数が前月比で130%を記録したという。これら看板の影響もあってか、イートアンドの2019年3月期の売上高は、前年比3.5%増の約291億円となっている。

看板の色を変えただけで、というのは雑な解釈かもしれませんが、黄黒というのは、進入禁止などでもよく目にする配色であるように、最も目立つ配色と言われており、明度が高い黄色と、低い黒を組み合わせることで人の目を強く引きつけるそうです。また、黄色は気軽さや安さという印象を持たせることもあるらしく、ドンキホーテなどはまさに驚安の配色と言えそうです笑

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一方、重厚感や威厳を表す黒単色は、ブランド店が並ぶ表参道ではよく目にする色な気もします。

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また、飲食でも意図的な色使いが多くあると言われ、、暖色に囲まれた店では、実際の時間よりも長時間滞在したような印象を与えるため、短時間でも満足度を得られることから、店の回転率が大事なファーストフード店では多く使われています。マクドナルドでは赤と黄色を基調にした外装から、暖色系で明度の高い照明が使われていることが分かります。

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一方、仕事や作業などの長時間滞在で使われやすいスターバックスのロゴは寒色系の緑であり、自然に長時間滞在しやすいように暖色系の中でも暗めの茶色やベージュが使われていることが分かります。

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このように、普段何気なく利用している店舗に限定してみても、お客さんが何を求めているのかに応じて、明確なロジックを持った色使いがされているというのはかなり驚きでした。なんとなく"雰囲気"として流していましたが、ここは学ぶ余地が沢山ありそうです。。!

理屈を感じさせない雰囲気づくり

自分の意識を色に集中させたことから見えてきた発見を元に、色がどう見えているか、どんな印象を与えるのか、どのように使われているのか考えてきましたが、一色とっても人に与える影響は計り知れず、感情、距離感、重さ、広がりまで多種多様な要素を持っており、使い方によって人の感じ方をコントロールすることができるかもしれません。

自分も、色というのを特段意識するまでは何も感じていませんでしたが、こうやって理屈立てて説明されると、確かにそんな印象を持つな。。と思いましたし、なんとなくな印象という非言語的なものを色使いという理屈で説明できるのが驚きでした。

空間演出やデザインをされてる方からすれば当たり前の話かもしれませんが、色が人の動線や感情をコントロールできるとしても、コントロールされていることを人に意識させないのが色の特徴なのかなと思います。ドンキホーテに入るとき、黒と黄色が基調だから入りやすいわぁ〜と思って入ったことはないですが、自分がそう思って入店した行動要因の一つに色が入っているかもしれません。

なんとなく"雰囲気"で感じさせるというのは、人が自らそれを選んだことになるので、選ばせるよりも自然なことですし、また選ぼうと思いやすくなるかもしれません。そんな色の力をかなり侮っていたので、今後は広告、ロゴ、空間などに使われている色使いを意識的に見ていくとともに、そこから得られる印象の違い、配色の狙いなども考えていければと思いました!奥深い色の世界。。 ではまた!

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