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良く見えなかった「カサブランカ」

俺らぁよう若かった頃、彼女と映画「カサブランカ」を見に行くことにしたんだよぅ。

俺らぁ自慢げに「味のある映画だがら、素人でも楽しめるよー!」なんて目一杯背伸びしまくっていだっけなぁ。

だけど化粧やら何やら、彼女の支度が長げえのさ!待ちくたびれてつい、イライラして来た俺は「先に行ってるぞ!」なんつって部屋を一人飛び出してしまったんだよぅ。

その後から涙目で追いかけて来た彼女だったけどようぅ、俺の不機嫌さに怒って帰ってしまったけ…(笑)

仕方なく俺は一人で電車を乗り継いで、大きな町の映画館で「カサブランカ」を後悔の思いで見たんだけどもよぅ、メガネを持ってくるのを忘れちゃって字幕がさっぱり見えねーのさ!

周りの連中が笑ったりため息をついたりする時には、俺もそれに合わせたっけな…(笑)

見も知らねぇ社会の中では気を使うのによぅ、彼女には全く気を使わねぇ自分に気付きながら見た「カサブランカ」はよぅ、良い映画だな~と思ったよ…字幕も読めなかったくせによぅ。

前しか見ていなかった若けぇ頃…

それからも俺らぁ癇癪をおこすたびに一人で先に歩き出していたがよ、何時の頃からだっけかな?彼女が追いかけて来なくなったのはよぅ…

その後、何度か「カサブランカ」を見た事はあったけどよぅ、あの字幕がよく見えなかった時ほど良い映画だと思ったことは無ぇな!

若けぇ頃って、色んな事が良く見えてねぇから良いんだろうなぁ。経験を積んで周りが良く見えるようになった今、思ってるよ…へへへ。

「世の中は良く見えないくらいで丁度いい」なーんつってな!

俺はよぅ、人生の終わりまでにもう一度「カサブランカ」を見たいと思ってんだよ。内容は知っているから別にいいんだけどよ、ただ帰り道に振り返ってみてーんだ。

もしかしたら、あの時の涙目の彼女が俺の名前を呼びながら「待ってよ!」なんて言いながら追いかけて来そうな気がするからよぅ…




#映画にまつわる思い出

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