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イラストで見る江戸の園芸

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▪️約200年前、江戸のまち、花と草木のある暮らし。ささやかで華やかな世界をイラストで覗きます。毎月更新予定です。 ▪️執筆者:笹井さゆり/Sayuri Sasai 昔の暮らしや文化…
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#日本花卉文化

第10回 海の見える山紅葉

葉が色づく季節。「春の桜、秋の紅葉」は江戸時代から変わりません。人々はこぞって紅葉狩りに出かけます。今回はその一端のご紹介です。 犬とおまわりさん(同心)がいるのは、名所のひとつ、海晏寺(かいあんじ)の一角です。高台にあるため、海を見晴らしながら紅葉を楽しむことができました。散策するもよし、茶店で休憩するもよし、各々が思い思いに過ごしました。 一点、現代ではあまり見ないのは「紅葉の下で短歌を詠み、その色紙を紅葉の枝にくくりつけておく」という楽しみ方でしょうか。絵の奥の方に、

第9回 菊細工

江戸の人にとって9月は菊の月です。現代の10月頃にあたり、まさに菊の花が咲きはじめる季節のため「菊月」や「菊咲月」とも呼ばれます。 ちなみに、この菊人形は実際に浮世絵にも描かれているものです。ピンチになると「しばらく~」という掛け声とともに現れる、歌舞伎の人気演目『暫(しばらく)』のヒーローの見せ場の再現です。 『暫(しばらく)』には主人公を女性に変えた派生作品『女暫(おんなしばらく)』もあり、庶民のニーズに応えて男女両方の主人公が菊人形化されています。今に例えると、大ブー

第6回 植木を育てる人、売る人

植木や草花を愛でる園芸文化が庶民まで広く浸透するようになると、そうした人々を対象にした仕事も増えていきます。今回はその一部のご紹介です。 一口に植木屋といっても、「地植え」を中心に扱う人、「鉢植え」を中心に扱う人、特定の品種だけを栽培する人、新たな品種を開発する人など多岐にわたりました。 規模の大きな植木屋になると、広大な敷地内でさまざまな植木や草花を育てていたようです。お客さんはその植木屋の敷地へ自由に入り、見物をすることができました(気に入ったものがあれば購入もできます

第4回 おみやげは桜餅

春を代表するイベントである桜の花見は、江戸時代に庶民に広まりました。 お洒落をして郊外へと足を伸ばし、桜並木の下で散歩や弁当を楽しむ1日がかりのイベントです。そんな江戸の花見の成り立ちや、当時の名所を調べてみました。 音曲の師匠と弟子たちが身につけているおそろいの着物は、浮世絵に描かれているものを参考にしています。桜色と格子柄がかわいいですね。 桜並木が生まれて花見のスポットが拡大するにつれ、こうした「お花見ご一行」といった団体行動が多く見られるようになります。また、周辺に

第2回 お気に入りの鉢はどれ?

さて、自分の家でも何か草花を育ててみようかな‥と思い立ったとき、おすすめなのが縁日の露店です。ずらりと並んだ鉢植えの中から、ピンと来るものを選びましょう。 如雨露(じょうろ)の資料はあまり見つけられませんでしたが、園芸アイテムとして、縁日の露店で一緒に売られることもあったかもしれません。 こうした園芸アイテムの豊富さからも、当時、江戸の人々に園芸の趣味が広く浸透していたことが伺い知れます。 【参考文献】 監修・竹内誠『ビジュアル・ワイド江戸時代館第2版』小学館 日野原健司

第1回 江戸っ子に人気の花の名は・・

江戸のまちでは、子どもから大人まで、武士から町人まで、さまざまな人が草花を育て愛でる趣味を持っていました。時には特定の花が人気を集め、大ブームに発展することも。そんな江戸園芸文化の一端をイラストと手書き解説でご紹介します。 江戸時代を通して流行した花には、椿・菊・牡丹などがありました。 朝顔のブームは2回訪れており、いずれも江戸時代後期、庶民の生活も安定して文化が成熟した頃のことです。幕末には、約1200系統もの朝顔が生まれたとも言われています。 さまざまな色や形の朝顔が、