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時代に取り残された高齢者と、中年の違和感

先日、3駅ほど離れたエリアに100均ショップがオープンするというチラシが新聞の折り込みに入っていました。近所にもあるっちゃあるけれど、新店舗の広さや品揃えはどうだろ?と気になり、オープンから2日経って運動がてら自転車で行ってみました。

平日の午後ということもあり、店内は賑わっているけれど、もうほぼ通常モード。知っているチェーン店でも、オープンしたてのお店ってなんだかワクワクします。
ここは近所のお店よりも広く、食器も揃ってる、掃除グッズも結構あるぞ、フムフム…と一通り偵察し、欲しかった洗髪用のクシと洗濯石けんを買い、満足してついでに同じ建物にあるドーナツ店へ向かいました。

甘い物が好きな私はいつも太ることを気にしながらも、スイーツを見かけると、節約とか節制という言葉をすっ飛ばして吸い寄せられていく習性がありるんです。

ドーナツ店に入ると、ショーケース前には誰もいません。
一応気にしますのテイで手をアルコール消毒し、ケースの扉を開けてトレイとトングを取り出し、新作のドーナツ2つは欲しいな~とピックアップ。

そこへ品のよい年配のマダムが入ってきて「こういうのってどうやって買うのかわからなくて」「いつも店員さんにやってもらうから」「そうやって取るのねぇ」「どれがいいか迷っちゃうわ」と話しかけてきて、戸惑いながらドーナツを選んで取り出していました。セルフ式の店舗は初めてのようです。私は「そうですね、沢山あって迷っちゃいますね。」と笑顔で返事をしました。

そんなやりとりをしていると、自分の持つトングが手が滑って落ちてしまったので、新しいトングを取りに入り口の方に戻りました。マダムに先に進んでもらい、私が引き返している間に若い女性が入ってきてマダムの後ろへ続きます。

各々トングでドーナツをトレイに乗せ、私は若い女性の後ろに並び会計を待っていると、マダムがレジで固まっています。レジは半セルフ式で、店員さんがドーナツを箱詰めし、会計はタッチパネルで自分で行うスタイルのものでした。

店員さんにアプリはあるか、などを聞かれたんだと思いますが「私、現金しかなくて」「現金のボタンを押してお金を入れてもらえばいいですよ」というような説明を店員さんがしていましたが、マダムはしばらくディスプレイを眺めても理解できていなさそうで「………」と沈黙が続き、何だこの時間はという変な空気が流れます。

これはアカンと店員さんがカウンターから出てきて、現金ボタンを押しました。ようやくマダムは、財布から小銭を出してチャリンと入れ、しかし金額が足らず、会計は完了しないので、またしばらくぼ~………っとディスプレイを眺めています。ぼ~っとしているというのは端から見た感想で、本人はどうなってるの??と焦っていたのかもしれません。

私は順番がきて、隣のレジで会計してもらっていたのですが、気になって「ここの金額になるようにお金を入れるんですよ」とディスプレイを指して言うと、マダムはお札を取り出しましたが、お札の入れ方も戸惑っていたので、向きを「縦で入れますよ」と教え、無事追加して入れて会計が終わりました。

マダムはスーパーや他のお店でセルフレジを未だ使ったことがないのか、教えてもらってもすぐに忘れちゃうのかな、高齢とはいえこの時代に大変だろうなと思いましたが、まあ仕方ない。

それより、この流れで私が不自然に感じたのは、マダムではありません。この違和感は、他の若い方達が、誰も手助けをしなかったことです。とても奇妙に思えました。

マダムの後ろには、3人くらい若めの女性がドーナツを選び終えて並んでいましたが、この状況で誰も言葉を発せず助けず、じーーっとマダムを見るだけで異様に感じたのです。

会計は店員さんとのやりとりなので、わざわざ口出しなくても…という感覚もあるのかもしれません。が、狭い店舗でとても近い距離で、後ろからやりとりを見ても、明らかに高齢の方が理解できていなくて困っているのはわかる状況です。

サッと教えてあげることはできるんじゃないかなあ。ここで、店員さんが出て来ないといけないほどのことではないと思いました。若いから、むやみに他人に話しかけるのは抵抗があるのかもしれません。もしかしたら、言おうかすごく迷った人もいたのかもしれませんが。
あの沈黙の「………」の時間がとてもひんやりと感じました。

若い頃の自分だったら、どうしてたかな。
しらっと見ていたかなあ。

ドーナツ店で時代に取り残された高齢者を目の当たりにして、自分の老後を想像し、ちょっと切ない気持ちになったお話でした。



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