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あれ?「告知しますかしませんか」みたいなやつはないのですか!

 さて、頭に出来た謎のデキモノ。紹介状を持って大病院に行きまして、検査することになりました。

 ちょっとうろ覚えなんだけど、確か説明は
「おそらくは瘢痕(傷跡)が硬く大きくなったもの。次の可能性は良性の腫瘍。あとは悪性のモノだけど、今の所その可能性は低いとは思いますがきちんと調べましょうね」 
 そんな感じ。ちょいと切って細胞とってあとは結果待ち。
 
 そして後日の通院日。いつ手術かな〜なんて言いながら夫は1人で病院へ行くと、そこで
「ちょっと検査の結果があまり良くない感じで、奥様と一緒に説明聞いていただいた方が」
と、突然言われたのです。ええー!
 しかしまだなんだかよくわかってない夫婦、とりあえず「何はともあれ説明を聞きに行くか」となりました。
 
 指定された説明の日、診察室ではなくて説明の小部屋に通された私たち夫婦。主治医と説明の記録をする方、看護師さん?3人ほどで対応してくださいました。

「それでは説明させていただきますね」
こちらこそお時間とって頂きまして…
「とった細胞を調べた所、どうも良くないモノらしいとなりました」
ふむふむ。
「しかしよくあるタイプのものでは無さそうで、じゃあこれはなんだ?とさらに調べてみました所『血管肉腫』と判明しました」
…それは一体。そもそも肉腫ってなんだ?
「とても珍しい病気でして、この大病院でも年間に1人、出会うかどうかです」
…ほほう?
「実はこれが、非常に難しい病気でして。5年生存率が10%前後と言われてます。1.2年以内に悪くなる方が多いです。転移しやすくて、特に肺に転移すると3ヶ月くらいで命に関わるんです」
…マジか!
この病気は高齢者の患者の方がほとんどで若い方は本当に珍しいんです。治療情報も少なくて、海外の情報も含めて今調べてます。でも夫さんはまだ40代ですし、体力も十分おありですから、出来る治療はやるべきだと思います。お子さんもまだ小さいとお聞きしましたし」
いややるよ。まだ死んだら困る!!
というか肉腫ってなんだ!がんなのか!
「まずは手術で切除します。幸いそこまで大きくありませんので。これは数日の入院でできます。その後経過にもよりますが、放射線と抗がん剤の治療が良いと思います」
えーっと、こんなちょいと大きめのオデキ?、それがそんなに大事なんですか?本当に???
 
 記憶が遠いのですが、こんな感じだったと思います。なんていうか、ドラマだと「本人に告知しますか」とか「余命を聞きますか」とかありますよね?あーゆーのないんですね!

 私たち夫婦はというと、ちょっと目立つオデキを取ってもらう程度の認識だったのが、「肉腫」「1.2年」というパワーワードをいただき(しかし「がん」と言う名前ではないので現実味が薄い)、この展開を全く予想してなかったので、泣くとかショックとか言うより
ポカーン
としながら帰路についたのでした。

 
 息子に「お父さんは来月少し入院する」ことを説明すると無邪気に「お父さん、たんこぶ取るんだね!よかったね!」と喜び。

 私たち夫婦は「えーっと、ほんとにがんなのか?」「いや、調べたんだからそうなんだろうね」「どこも体調悪くないし元気なんだけど」「だよね?」「でも治療しないとなんだよな?」「うん、死んだら困る。息子はまだ小学生だ」「だよな?」「だよねえ?」「入院か…上司に相談しないと」「だよねえ」「…」「…」「とりあえず手術は半月後か」「うん」「…」「…」
 
「何はともあれ温泉行かない?」
 
「…温泉いいな。行くか!入院までは1ヶ月弱あるし!」
「A温泉とB温泉どっちがいい?」
「手術までに2回週末あるよな。両方行くか!」
「オッケー予約する!!!!」

 と言うわけで、2週連続温泉ドライブ旅行催行となりました。いつも通りに楽しくドライブして、公園で息子と遊んで、道の駅で美味しいもの食べて、露天風呂を堪能しました。結果、旅行計画でなんとなくウキウキと半月を過ごせて、何より息子の笑顔がたくさんで、私たちは不安を遠くにやりながら日々をやり過ごしたのでした。


 あまり深刻な話をしない夫婦なんですよね。病気のことはこの時からずっと、あまり深刻に突き詰めたことはないんです私達。
 その頃病気について話したことといえば、夫が「俺ネットで調べたりはしないわ。怖くなるから」と言ったので、「それでいいんじゃない?説明は主治医がしてくれるよ」となって情報収集は私の仕事になったのと、「なんかがんに効く栄養食品とかサプリとかあるよな、飲んだ方がいいのか?」と言ったのに「そのサプリが効果があるなら保険が効くはずだし医者が勧めるはずだよ」とやんわり止めたくらいでした。

 いや、なんていうか今も昔も能天気な患者だったなあ、と思います。でもここからの長い闘病の日々、ほとんど喧嘩もしないで基本笑顔で過ごせたのはよかったなーと。ヘラヘラしてたから頑張れたのかなーなんて今になって思います。
 笑顔は病気に良いって言うしね!多分!
 


ありがとうございます。息子と一緒にハーゲンダッツ食べるために貯金します。