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アメリカと日本のジャズクラブの違いから、ジャズの未来について考えてみた

JAZZ SUMMIT TOKYO オリジナル企画
「サスティナブルジャズ」

第3回目のゲストは、ジャズボーカリストの牧野竜太郎さん。CMへの楽曲提供やラジオパーソナリティー、ミュージカル出演など多方面でご活躍中。学生時代をアメリカとカナダで過ごし、現在はジャズクラブの経営にも携わる中で、ジャズの将来について考えていることを聞いてみた。

ゲスト:牧野竜太郎(まきのりゅうたろう)
鎌倉生まれ。アメリカ・カナダで高校生活を終え、卒業とともに幼い頃から身近にあった音楽に目覚め、大学はニューヨークにて音楽を専攻。
2002年に帰国し、実家であるJazz Club Daphneにて働きながら歌の勉強を本格的始めると共にライブ活動を開始。
関東を中心に全国のライブハウス・コンサート・イベントに精力的に活動中。ジャンルにとどまらない活動とライブパフォーマンスは幅広い層から支持を得ている。
http://www.ryutaromakino.com/

モデレーター:中山拓海(なかやまたくみ)
2017年12月CD"たくみの悪巧み"でキングインターナショナルよりメジャーデビュー。2015年同世代のミュージシャンと共に「JAZZ SUMMIT TOKYO」を結成後、様々なイベントを企画運営。2021年に株式会社化
し、現在は高品質な動画配信サービスとして『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』を運営している。
https://www.takuminakayama.com/

JAZZ SUMMIT TOKYO 公式webサイト
https://www.jazzsummit.tokyo/
動画配信サービス『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』
https://www.jazzsummit.tokyo/premium

ゲスト 牧野竜太郎

アメリカと日本のジャズクラブの違いとは。

中山 牧野さんは、ご実家が鎌倉で「ダフネ」というジャズクラブを経営されていらっしゃいますよね。このコロナ禍でお店はどんな感じですか?

牧野 コロナ禍は本当に大変で。国の支援とか受けながらテイクアウトとかも努力してやってきたんだけど、去年クラウドファンディングに挑戦してみたの。そしたら、24時間経たない内に目標額を達成して、最終日までにたくさんの方々からご支援いただいた。そうやって何とかやれてる感じかな。簡単には元に戻れないし、まだまだ大変だけどね。

中山 本当にどこの店も今は大変ですよね。牧野さんはアメリカにも行ってらっしゃって、日本ではダフネの経営に携わっていらっしゃる。アメリカと日本のジャズクラブの違いについては、どのように感じていらっしゃいますか?

牧野 アメリカの方がお客さんとミュージシャンの距離が近いかな。例えば、ニューヨークでblue noteに行った際に、「今日誕生日なの〜!」って言っている女性のお客さんがいて、そしたらミュージシャンが「ハッピーバースデー」を歌ったの。日本じゃありえないことだけど、それを気軽に言える雰囲気なんだよね。なんというか、トップ中のトップのライブハウスでもそんなにかしこまっていないというか。

中山 金額的なところもあるかもしれないけど、僕も、もっと日常に溶け込んだら良いなとは思います。ホールとかで聴くものについては、ドレスコードがあって、高いお金払ってというのも良いと思うのですが、そうじゃない場所については、もっと日常に溶け込んで、そこに合った楽しみ方ができると良いなと。ジャズクラブにあまり行ったことがない人達からすると、クラシックのコンサートに行くより緊張するみたいな声もあって。そこの敷居を下げたいなと。

牧野 入りづらさっていうと、blue noteとかの方が入りやすいんだよね。小さいお店だと中がどんな感じになっているのかわからないから。僕達みたいに知っている人からすると、「全然来て」って思うけど、初めての人から「1人ではとても行けない」って言われたりする。

Jazz Club Daphneの様子

お客さんとどのようにコミュニケーションをとるか。

中山 僕が今やりたいと思っているのは、ミュージシャンとのトークセッションの場を作るというか。お客さんを交えながら、さっきの演奏がどうとか、こないだのリハがどうとか、そういう話をする場所を作りたい。ミュージシャンの仕事って音楽やるだけじゃないと思うんですよね。僕は地元の静岡で演奏する時に、比較的お客さんが来て下さるのは、演奏だけじゃなくてそういうコミュニケーションがあって、パーソナルな部分を知ってもらっているからだと思うんですよね。

牧野 確かにね。全然否定するつもりはないんだけど、日本で初めにジャズが人気出た時の文化って、寡黙に演奏して、オーナーはすごくうるさくて、みんな黙って聴くみたいな。今のジャズを支えている方々はそれを引きずっていたり、新しい文化を否定する人もきっといるかなと。否定されることを気にしてたら何もできないけどね。

中山 確かに、そういう方もいらっしゃるかもしれませんが、ミュージシャンの人間的な部分を見てコアなファンになる方もいらっしゃるなと。音楽のみならず人間同士の繋がりというか、距離が近いことで生まれていく関係があると思っています。
牧野さんはお客さんとどういう風にコミュニケーションをとっていらっしゃるんですか?

牧野 僕は全然話したい派で、みんなと仲良くなりたいと思うんだよね。人によっては、事務所の方針だったり、距離をとった方がスター性を生むとか言う人もいるけど、ダフネみたいな50〜60人のお店で距離をとるって難しいよね。楽屋も無いし、お客さんとミュージシャンがすぐそばにいるのに何も話さないのはおかしな話で。葛藤することもあるけど、僕は人が好きだから、大切にしたいなと。

ゲストがJAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUMに出演した際、MCを交えながら通し一発収録を行うという、さながら温かいライブのような雰囲気だった

ジャズのユニオンを作って音楽の質を担保する。

中山 国内では数少ない男性ボーカルですが、今後どうなっていくと思いますか?

牧野 どうなるんだろうね。これは、文化がいけないと思うんだけど、誰でも歌えるっていうところからスタートしてしまっているんだよね。実際に、歌って人のセンスによるから誰しもが教育が無きゃいけないということではないんだけど、音楽に魅力がなくても容姿につられてファンがついちゃうこともあるんだよね。

中山 上手い下手ではなくて、自分の承認欲求のために歌っているというか、音楽へのリスペクトが無い人はいるかもしれませんね。

牧野 そうそう!お店もそうなんだよね。音楽へのリスペクトが無い人でも、ファンがいるからという理由で出演させてしまう。

中山 日本の音楽界では、プロ試験とかが無いですしね。お店はお客さんを呼べる人にやってほしいと思うし、集客と音楽性は全然関係無かったりする。アメリカってジャズのユニオンがあるじゃないですか。そのユニオンに入っているミュージシャンは演奏する時に最低保証金額が決まっていて、逆に、ユニオン加盟店では、ユニオン所属のミュージシャンしか出れなかったりするんですよね。

牧野 そういうの必要だと思うな!

中山 だからと言って、僕自身でユニオン立ち上げて、所属ミュージシャンを自分で決めていくっていうのは難しいですけどね。

牧野 中山君が選ぶんだったら、サックスは中山君1人しか選ばれなくなっちゃうね。(笑)

完璧じゃないからこそ、生音が好き。

中山 ライブストリーミングとかも主流になってきていますが、生音を伝え続けていく為にはどうすれば良いと思いますか?

牧野 僕が思うに、このコロナ禍で「やっぱり生だぜ」って気づいた人がたくさんいると思うんだよね。

中山 僕も生音の価値は高まったと思っています。ただ、完全に分かれているのではなく、相乗効果を生むと思っていて。例えば、あんまり頻繁にライブに足を運ばなかった人達が、配信を見て行くきっかけになったりとか。

牧野 確かに、ジャズ界のファン層ってすごく狭いけど、こういう世界の中でどの演奏に行くかを見定めるきっかけにはなるよね。両方が上手く使われつつ発展していけば良いね。

ゲストのYoutubeチャンネルでは、オンラインの特性を活かした音楽コンテンツとなっている

引用元 牧野竜太郎Youtubeチャンネル

中山 僕は、制作する側として難しいと感じることはあって。ライブだと視点は一つしかないけど、配信だと一つのカメラでも色々な角度に動いていけるし、切り替えもあるじゃないですか。ミュージシャンの方々からは、ライブに行っている時と同じ方が良いと言われることもありますが、僕は逆だと思っていて。ライブでは見れないところを映したいと思うんですよね。今は配信自体が進化していく過程だから、色々と情報交換されてより良くなっていけばいいなと思います。

牧野 配信が進化していった時に、生音の良さは何かというと、空気感だろうね。完璧じゃないものが生というか。ダフネだったら、シェフの調理時の音とか、油の匂いとか、冬場の暖炉の曇りとか、そういう邪魔が入るのって、僕は結構好きなんだよね。

中山 僕は生の演奏って焚き火みたいだなと思うことがあって。近くで聴いてると温もりや熱さを感じたり、温度や視界的なものって生じゃないと感じれらないなと。

牧野 それこそ、手拍子が薪みたいな。ファンの熱が上がると熱くなるしね。そういった相乗効果を感じられる生って大切ですよね。

文・編集 小林真由美

Jazz Club Daphne(ジャズクラブダフネ)
https://www.jazz-daphne.jp/

JAZZ SUMMIT TOKYO 公式webサイト
https://www.jazzsummit.tokyo/

▼サステイナブルジャズの動画はこちらにてご視聴いただけます。
動画配信サービス『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』
https://www.jazzsummit.tokyo/premium

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