見出し画像

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

いつからあんな大きなイビキをかいて寝ていたのだろう?
眠っている間のことだから、自分では気づけないし気づかない。
誰かと暮らしていれば、教えてもらうことがあるだろうが、一人暮らしではそんなことはないので、気づくことはない。
たまたま知り合いたちと雑魚寝をしていた時に、ぼくが大きなイビキをかいていたとしても、よほど仲が良くなければ、「イビキうるさかったよ」とはなかなか言い出せないだろう。

ぼくの場合は、その雑魚寝をした後で、何気なく「なんで年取るとイビキとかかくようになるんだろう?若い時ってあまりイビキかく人っていなかったよね」と話しをした時に、その場の雰囲気がちょっと変わったのを感じた。「あれっ?ひょっとしてぼくってイビキかいてたんだろうか?」と思った。

普段、周りの空気が読めず、知らず知らずのうちに知り合いから避けられていくことが今までたくさんあった。そのため、過剰に周りのちょっとした変化に敏感になっていた。それは、こちらの思い過ごしの場合もあるかもしれないし、明らかに自分の発言から空気が変わっていることもある。
ぼくが、ちょっと苦手だなと思っている人から嫌われるのであれば、全く全然気にはならない。どうぞ嫌ってくださいとさえ思っている。
しかし、そういうごく少数の苦手な人以外の人から、距離を取られたり、嫌われたりするのは、とても耐えられない。
なので、昔とは違い、今は周りの空気を乱していないかと必要以上に気にしてしまっている。

「嫌われたくない」

その想いがとても強い。

イビキの話しに戻るが、気になったぼくは、イビキをかいていたかどうか尋ねる勇気がないので、自分で確認することにした。
夜寝る時に、ICレコーダーで録音することにした。

翌朝、録音した音声を聞いてみる。
寝る前には睡眠薬を飲んでいるので、寝付きは早い。10分もしないうちに、とても大きなイビキをかき始めていた。想像していた数倍の大きさだった。それが朝まで続いていた。

とりあえず、病院へ行くにしろ、自分でできる対策をしてみることにした。
まず、口呼吸をせずに鼻呼吸をするように、口を閉じるテープを貼って寝ることにした。
しかし、肌にやさしいテープでは大いびきには勝てず、気づくと剥がれてしまう。
次に、マウスピースとテープの合わせ技で試みるが、効果なし。
最後は、あごを締め付けて強制的に口を開けさせないサポーターを顔に巻く。
それでも、治ることはなかった。

メンタルクリニックの受診の時に、主治医に相談すると、睡眠薬を変更して、市民病院の睡眠時無呼吸外来への紹介状を書いてもらった。
うつの症状も、夜間熟睡できていないことが影響している可能性もあるから、もし睡眠時無呼吸で治療して、熟睡できるようになったら、うつの方も良くなるかもわからんねと、言われた。

そして、市民病院へ行き、とりあえず自宅でできる検査キットで睡眠時の記録をとった。結果は、1時間に15回以上呼吸が止まっている状態で、睡眠時無呼吸症候群と診断された。

治療を行っていくとしたら、C-PAPという機械をつけていく方法しかないが、どうしたいかを尋ねられたので、治療をしていきたいと即答した。
すると、改めて精密検査の必要があるので、一晩入院して機器を付けて睡眠時の状態を検査した上で、C-PAP療法を始めていくことになった。

睡眠時無呼吸症候群の一番の原因は、肥満だそうだ。のど周りに贅肉がつくことで、気道を塞ぐことで起こることが多い。なので、C-PAPを使って空気を送りのどが塞がるのを防ぐことで解消されることはあっても、痩せてのど周りの贅肉が落ちない限り完治はしない。

一泊入院では、膝・腕・胸・頭部に電極を付けて、機械に繋がれた状態で一晩過ごす。翌朝目覚めたら、それを外してもらい検査終了となる。
看護師さんに、電極を外してもらいながら「やっぱり大きなイビキかいてましたよ」と言われた時、分かってはいたけれど、とても恥ずかしかった。

2週間後、検査結果を聞きに行くと、中から重度の睡眠時無呼吸症候群だと告げられた。そして、来週からC-PAPによる治療が始まる。

まず、自分では、痩せる努力をしなくてはならない。それが問題だ。

もうすぐ、失業給付も終わる。
仕事を探さなくてはいけない。それは去年の年末から動いてはいるが、未だどのような働き方で仕事を探していくのかというところで決断がつかずにいる状況が続いている。精神状態も浮き沈みが激しい状態が続いている。

公的支援機関も利用しているが、仕事を見つけてきてくれるわけではない。
自分で探すしかないが、この歳で経歴といったものもない精神障害者を雇ってくれる企業はそうそうあるわけではない。

  1. 病状をオープンにして一般就労をする。

  2. 障害者雇用で就労する。

  3. 就労継続支援A型を利用して最低賃金で単純作業をする。

  4. 障害年金だけで働かずにつつましく生活していく。

どうすればいいのか、どうしたいのか、決めきれず、ただただ時間だけが恐ろしいスピードで過ぎていく。

今まで、楽な方へ辛くない方へと選んできたツケが回ってきている。自分で蒔いた種だから、自分でなんとかするしかない。

いっそ、死んでしまおうか。そんな考えも頭をよぎる。
瀬戸際に立たされている。
そんなぼくの後ろから、孤独な影が背中をそっと押してくれるのを待っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?