Facebookの「最高裁」の理念

Facebookの「最高裁」こと監督委員会の憲章(Charter)公開時に添えられたマーク・ザッカーバーグの手紙は,このプロジェクトの理念を表していると思うのですが,日本語版が見つけられなかったので和訳してみました。理念は,原文で読むのが一番だと思うので,原文を見たい方はこちらにアクセスしてください。

https://about.fb.com/wp-content/uploads/2019/09/letter-from-mark-zuckerberg-on-oversight-board-charter.pdf


監視委員会に対するFacebookの取り組み

 Facebookは人々が声をあげられるようにするため作られています。表現の自由は,自由で包摂的で民主的な社会に対するのと同様に,私たちが会社として存在するための基本でもあります。自分を表現する力を持つ人が増えれば増えるほど,私たちの社会はともにより進歩すると,私たちは信じています。私たちは,当社の製品とポリシーがこれをサポートしていることを確認したいと考えています。

 それと同時に,私たちは,人々が自分の声を使って他人を危険にさらすこともあると認識しています。私たちのプラットフォームで許可されていることと許可されていないことを明確にするコミュニティ・スタンダードがあるのは,そのためです。これらのポリシーを適用する際には,国際的な人権基準に基づいて,信頼性,安全性,プライバシー,尊厳といった一連の価値観に従います。自由な表現への取り組みは至高のものですが,人々を安全に保ち,有害なコンテンツを削除する必要があります。

 私たちは毎日ポリシーを実施する責任があり,毎週何百万ものコンテンツの決定を行います。しかし最終的には,私たちのような民間企業が自分たちでスピーチについて非常に多くの重要な決定を下すべきだとは思いません。そのため,私は政府(原文ではgovernmentsとなっていて,日本人が政府と聞いたときに想像する単一の政府ではなく,中央政府や州政府,もしくは他国の政府なども含みうる言葉と解されます)に有害なコンテンツに関する明確な基準を設定するように求めてきました。また,私たちが,今,独立監視委員会を設立することで,コンテンツの決定に異議を申し立てる手段を人々に提供しようとしているのもこのためです。

 誰かが私たちの決定に異論ある場合は,まず私たちに上訴することができ,この独立した監督委員会にさらに上訴することができます。監督委員会の決定は,私またはFacebookの誰かがそれに同意しない場合でも,拘束力を持ちます。監督委員会は私たちの価値観に基づいてその決定を通知し,プライバシーを保護する方法でその理由を公に説明します。

 監督委員会は私たちのコミュニティの擁護者となります-表現の自由に対する人々の権利をサポートし,人々を安全に保つという私たちの責任を確実に果たすようにします。自分たちの意見が聞かれるであろうこと,そしてFacebookが彼らの表現に対して究極の権限を持っていないことを信頼できるように,監督委員会が,独立した組織として寄与することを願っています。Facebookの株主にその取締役会が説明し続けるように,監督委員会も私たちのコミュニティに対して同じようにできると信じています。

 過去1年にわたって,世界中の専門家から,この監督委員会がどのようにあるべきかについてフィードバックをいただいています。私たちは類似団体を調査し,憲章案を発表し,公開協議プロセスを実行し,ワークショップに参加し,フィードバックの概要を公開しました。この憲章は,私たちが聞いたことの多くを反映しており,これまで検討してきたいくつかの最大の質問,すなわち,監督委員会メンバーはどのように選ばれるべきか, どうやってFacebookからの独立性を確保すると同時に私たちの原則に確実にコミットするようにするか,どうやって理事会に請願するのか,どうやって監督委員会は審理するケースを決定するか,ということにこたえます。

 この憲章では,Facebookは監督委員会にいくつかの約束をしています。監督委員会のコンテンツに関する決定を履行し,ポリシーに関する勧告的意見に関しては行動を起こすことを約束します。私たちは,監督委員会の独立した判断を実行するための能力を維持ないし保護することを約束します。そして,情報に基づいた意思決定を行うために必要な情報とリソースを理事会に提供することを約束します。

 この憲章は,理事会の設立に向けて一歩近づけるものですが,まだ多くの作業が残っています。最初は少数のケースのみが審議されることを予定していますが,今後はその範囲が拡大し,業界全体でより多くの企業が含まれることを予定しています。

 自由な表現とオンラインコミュニティを保護する制度を構築することは,インターネットの将来にとって重要です。監督委員会がどのように進化するかを楽しみにしています。このプロジェクトを適切に進めるために時間と労力とエネルギーをこのプロジェクトに与えてくれた皆さんに感謝します。

マーク・ザッカーバーグ
Facebook創設者兼CEO

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