大統領とフェイクニュース

少し前ですが,2020年8月5日,Facebookがトランプ大統領の投稿を削除したというニュースが報道されました。その投稿は,FOXのインタビュー動画で,子どもは新型コロナに対し「実質的に免疫がある」等と話していたものだったとのことです。Twitterも該当する投稿を削除するまでツイートを一時制限する措置をとったとのこと。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO62349380W0A800C2000000?s=3

とうとう,一国の大統領の投稿がフェイクニュースとして削除されるなんてことが。

Facebookは,2020年5月26日,ツイッターがトランプ大統領のツイートにフェイクニュースである可能性があるとラベリングをした際,プラットフォーマーがそこまで踏み込むべきではないと批判したと報じられています。

https://www.foxnews.com/media/facebook-mark-zuckerberg-twitter-fact-checking-trump

ツイッターがフェイクニュースとラベリングしたツイートは,2020年9月15日現在も読める状態になっていますが,「facts(事実)」を確認しようというリンクがはられていて,このリンクに飛ぶと,トランプは根拠のない主張をしているというCNN Politicsの記事等が表示されるようになっています。
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1265255835124539392

Facebookは,その後,全米で広がるBLM運動(Black Lives Matterという標語の下に黒人差別をなくそうという運動であり,訳語には諸説あるものの「黒人の命を軽んじるな」というDeepLの訳語がうまいなと思います)に関連して,ヘイトスピーチへの対応が甘いとして批判を受けていました。広告ボイコット運動にまでつながっており,マーク・ザッカーバーグ氏は,6月1日14:05投稿で,以下のようなコメントを出しています。

https://www.facebook.com/zuck
自動翻訳をベースにした仮訳を掲載してみます。

先週の痛ましいできごとは、すべての人に尊厳と平和を持って生きる自由を与えるためには、私たちの国がどこまでやらなければならないのかを思い出させてくれます。それは、アメリカの黒人が今日もなお耐えている暴力が、人種差別と不正の長い歴史の一部であることを改めて思い起こさせてくれます。私たちは皆、変化を生み出す責任があります。
私たちは、黒人コミュニティと共に立ち上がる--ジョージ・フロイド、ブルナ・テイラー、アーマウド・アーベリー、そしてその名前を忘れることのできない他の多くの人々をたたえ,正義のために働くすべての人々とともに。
この戦いを支援するために、フェイスブックはプラットフォームを通じて黒人コミュニティのための平等と安全を支援するためにもっと努力する必要があることを私は知っています。見ているのはつらかったですが、ダーネラ・フレージャーがジョージ・フロイド殺害のビデオをFacebookに投稿してくれたことに感謝しています。私たちは ジョージ・フロイドの名前を知る必要があります。でもフェイスブックは人々の安全を守り偏見を増幅させないようにするためにもっとやるべきことがあるのは明らかです。
正義のために戦う組織にも資金が必要なため、フェイスブックは人種的正義のために活動しているグループにさらに1,000万ドルの資金を提供しています。私たちは市民の権利アドバイザーや従業員と協力して、地元や全国の組織の中で、今この資金を最も効果的に利用できる組織を見つけ出しています。
1,000万ドルでは直せないことは分かっています。持続的で長期的な努力が必要です。プリシラと私が個人的に取り組んできた分野の一つで人種差別や人種格差が最も深刻なのは刑事司法制度です。この分野での私たちの活動についてはあまり触れてきませんでしたが、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブは最大の資金提供者の1つで、人種的不公平の克服に取り組む組織に数年前から毎年4,000万ドルを投資しています。プリシラと私はこの活動にコミットしており、今後も何年にもわたってこの戦いに関わっていくことを期待しています。今週は、まだまだやるべきことがたくさんあることを明らかにしてくれました。
私は、国として、まだ先にあるすべての仕事を理解し、正義を実現するために必要なことを行うために団結できることを願っています--今、悲嘆に暮れている家族や地域社会のためだけでなく、不平等の重荷を背負っているすべての人のために--。


このように,苦しいながらも,中身の判断から距離を置くという方針をとってきたFacebookがトランプ大統領の投稿を削除したということで,冒頭に紹介したニュースには目を引かれました。

これまでの批判に押されたというふうにもとれますが,このトランプ大統領の投稿は, COVID-19関連だったからということもあるかもしれません。COVID-19関連のものは,たとえばYouTubeなどは,当初,COVID-19関連の投稿全般を収益化プログラムから除外するなど,フェイクニュースの流布には特に厳しい対応をとられている傾向を感じます。
(※YouTubeは,2020年4月2日,「COVID-19 に言及しているコンテンツや COVID-19 を扱っているコンテンツで、YouTube の広告掲載に適したコンテンツのガイドラインとコミュニティガイドラインを遵守しているものは、収益化の対象になりました。」とアナウンスしています。
https://support.google.com/youtube/answer/9777243?hl=ja&ref_topic=6151248)

いずれにせよ,一国の大統領の発信が一企業によってフェイクと判断されて削除されたり,ラベルされたりするというのは,すごい世の中になったなあと。

トランプ大統領だから(笑)みたいな一エピソードとして流されがちですが,現代を生きる一人一人にとって大きな議題ではないかなあと個人的には思います。フェイクニュースはだれが判断するのか。判断する人をどうチェックするのか。専門家に任せっきりでいいのか。専門家って誰が決めるのか。はたまた放置して自然淘汰に委ねるのか。「誰か」ではなく,自分ごととして考える人の総力,すなわち「自分ごととして考えられる人の数×その人たちの力量平均」が問われているように思えてなりません。そして,力量平均を上げるというのは,「賢いだれか」が上をひっぱっていく形では,分断と猜疑がうまれるだけなのではないでしょうか。

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