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何処かの短編

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とある何処かの、ちょっとおかしなちょっとした話
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2021年10月の記事一覧

河川敷

何処かの河川敷 犬の散歩、ジョギング、自転車 のどかな風景が流れている と、土手で絵を描いていた男がふと何かに気付いて空を見上げる 中空に黒い点が一つ 見ているとどうやらそれは落ちて来ている様子 男はじっと見つめながら、ゆっくりと黒い絵の具を手に取って蓋を回す 「お上手ですね」 「どれくらいやられてるんですか?」 「え?、あ、すみません」 「あ、ごめんなさい、邪魔しちゃいました」 「いえ」 「お上手ですね」 「ありがとうございます」 背中で答えながら再び空の黒に目を

公園

とある公園 男が二人、ベンチに座って缶ビールを飲んでいる 空はとってもいい陽気 「便座あるじゃないですか」 「便座」 「あれ、輪っかんなってるやつとなってないやつあるじゃないですか」 「あー、はい」 「あれって何が違うんですかね?」 「あー」 「え、どっちですか?」 「うちのは輪っかんなってないです」 「あ、うちもです」 郵便屋さんがポストを開いてごそごそ袋を入れ替えている 昨日とおんなじ郵便屋さん 「強度とかがあれなんですかね」 「あー」 「輪っかになってる方が」