The Smithsから見る音楽史

・はじめに

 みなさまごきげんよう。梅雨はどこえやら、各所で真夏日となっている今日この頃でございますが、いかがお過ごしでしょうか?もう真夏の勢いに任せてお出かけしてるでしょうか?歴史を振り返ってみれば,レジャーでの音楽との関わりあいも配信サービスなどの登場によって変化してきました。古くはポータブルレコードプレイヤーなどがあり、太古の昔、人々は夏に湖畔でキャンプやBBQをするときにデカいレコードと一緒に持ち運んで音楽と食事を楽しんでいたわけです。それが今やスマートフォンなどや音楽プレイヤーなどの再生機器、イヤホンやBluetoothスピーカーの登場によってどこでも一人で音楽を聴けるようになったわけです。インターネットがあればどこでも音楽が聴ける時代、豊かになったといえば聞こえはいいですが、それに反して音楽と向き合うという場面が減ったようにも感じられます。例えばレコードはアルバム単位での販売でしたからコンピレーション盤(いろんなバンドやアーティストの曲が入っているアルバムのこと、今でいうとこの作者がV.A.:ヴァリアスアーティスト表記になっているアルバム)でもなければそのバンド、そのアーティストに向き合わざるを得なかったわけです。これは前回指摘した音楽リスニングという行為が受動的になった(なりつつあるのではなく、あえてなったと書きます。)ということを証明するかと思いますが、前回の記事を書いてからまた考え、思ったのは音楽の芸術としての面とBGMとしての面です。いうなれば、モナリザをルーブルに飾るのか、家の玄関に飾るのか、ということで、無論、すべての音楽がモナリザであるかどうかという前提的な疑問はあるのですが、音楽の扱われ方、という面で見ると大方このような二面的な使い方になるかと考えられると思います。これについては次回の記事にてより深堀していこうと思います。

・The Smiths、その音楽性

 さて、長々と書かれたイントロを飛ばした諸君、賢明である。なぜならこれから音楽史のスタート地点として見ていくバンドThe Smithsはイントロとあまり関わりあいがないし、読んだ方にはわかる言い方をすると外に出て遊ぶときに聴く音楽じゃないし、真夏日に家の中でエアコン点けてダラダラしてるような奴にこそ聞いてほしいバンドである。そんなわけで、第二回はThe Smiths中心史観である。
まず、The Smithsとはどんなバンドなのか簡単な概略を説明する。

・結成、解散年:1982-1988年
・メンバー
 Vo  モリッシー
 Gt  ジョニー・マー
 Bagt  アンディルーク
 Dr  マイク・ジョイス
 Gt  クレイグ・ギャノン(ジョニー・マー脱退時から参加)
・ディスコグラフィー(発表アルバム)
 1984 The Smiths
    1985 Meat Is Murder
    1986 The Queen Is Dead
    1987 Strangeways, Here We Come

 The Smiths、英国の誇るべきポップバンドである。ジャンルとしては”ネオアコースティック(ネオアコ)”などに代表される80年代初頭のイギリスのポップミュージックカルチャーになるのだがそのメッセージ性やサウンドの傾向からフィル・スペクターのウォールオブサウンドやモータウンのようなダンスミュージック、ニューウェーブなど、幅広いサウンドを複合的に作り上げたバンドで、オルタナティブ的な志向の走りともいえる。同時期のバンドにはネオアコの代表的なバンドであるオレンジ・ジュースなどがある。影響を与えたバンドとしてはイギリスのStone Rosesなどのセカンド・サマーオブラブのバンド達や、OASIS、Blur、Suedeなど、90sに起きたブリットポップバンドたちが列挙される。特にOASISのギタリスト、ノエル・ギャラガーに与えた影響は大きく、The Smithsのギタリスト、ジョニー・マーはノエルにThe Smithsのレコーディングで使用したGIBSONレスポールを貸与(ノエルが後に破壊するが笑って許してもう一本あげたらしい)したりするなど、The Smithsの後々への影響は音楽史的に無視できない。しかし、悲しいことに日本での認知度はそれほど高くない印象を受ける。それは置いておいて、The Smithsが受けた影響について考察すると、60s、70sの音楽と90sの音楽を繋ぐ大きな歴史の転換点であったといえる。例えば有名な話で、このバンドを結成したモリッシーとジョニー・マーはモリッシーが立ち上げたニューヨーク・ドールズのファンクラブがきっかけで知り合うなど、明らかにプロトパンクの影響を受けていたり、反面、ジョニー・マーが「ギター一本でフィル・スペクター・サウンドのようなものを作ることが自分の理想だ」などと述べており、面白いことに我々日本人が注目しがちなBeatles的なものよりも60s、70sの歌謡曲やポップサウンドへの接近を試みたことが伺え、それまでのロックミュージックの総括的な作品群となっている。また、モリッシーの歌詞は現代のLGBTやヴィーガンにつながるものが多く、特に二枚目のアルバムMeat Is Murderなどは明らかにヴィーガン思想であるし、ミュージシャンが菜食主義をとるのはThe Smiths以前にはジョン・レノンなどの例があるが作品で表現するほどの主張をはっきりさせた前例として、後続のミュージシャンに与えた影響は無視できない。このように80sにおけるThe Smithsの活動は50sから始まったロック音楽が90sから始まるオルタナティブになっていくための過程であり、ある意味、ここでチャック・ベリーやレイチャールズに代表される古典的ロックンロールのある種のリバイバルと破壊が行われたのではないかと推測される。総括すれば、The Smithsはロックの醍醐味ともいえるサウンドのポップス的な大胆さと、歌詞世界の大胆さを兼ね備え、先達と後続の間に存在する楔のようなバンドであるといえる。

・さいごに

 さて、The Smithsを中心として歴史を見ていったわけだが、正直荷が重いというか考えるべきことが多すぎて完全に片手落ちな記事になってしまった。しかし、それだけThe Smithsの重要度は高いといえるのである。今回の記事は前回よりもバンドの固有のサウンドについての言及ができておらず、周辺バンドも多いため、追い切れていない。また、80s、90sはハンディカムなどの登場によって海賊版ではあるがライブ映像が残り始めた時期であり、与えうる影響の範囲が拡大されていった時期でもあるため、後続のバンドについては特に触れることはできなかったのも悔やまれる。
 とまぁこんな風に言い訳を並べてみたが、文字数を3000字前後としているため、書ききれないというのもある。いつかこの中心史観シリーズが完成した暁には加筆修正を加えて読者の時間をガッツリ奪いたいものだと思う。
 ここまで読んでいただきありがとうございました。コメントなどで指摘や応援を貰えるとより一層良い記事になっていくと思うので荒らしでも大歓迎!どんどん盛り上げていきましょう。
 では、また次回お会いできることを楽しみにしております。

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