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現役イノベーターの皆さんからイノベーションの真髄を聞いてみた件

2024年5月24日(金)にJASPER Meetup#2を開催しました。

皆さん、開催報告は、読んでいただけましたか。

今回はイノベーションをテーマに開催してみました。

SDGsにより様々なビジネスが影響を受けていますが、エネルギー業界も例外ではありません。
いわゆる化石燃料による事業に閉じず、より包括的な企業となるべく、各社、新領域や新事業の創出に奮闘中です。
言い換えると、各社今までやってきたコア領域のR&Dだけでなく、いかに新しいビジネスを考え出すかという観点でイノベーションへの関心が高まっています。

実際のイベントでは、5名のイノベーターを集めパネルディスカッションという形でイノベーションについて語ってもらいました。

まさにイノベーションというのは、ふわふわ中のふわふわ。
そこで、できるだけバラエティ豊かなイノベーターを集め、議論を通じてイノベーションの深淵に迫ろうと考えたのです。

今回、私はモデレーターを務めさせていただきました。
この記事では、その目線から各イノベーターの意見や当日の議論を振り返ってみようと思います。


いろいろなバックグラウンドの登壇者5名

まず、登壇者のご紹介です。
上述の通り、様々な観点から議論が為されるよう、少しタイプの異なるイノベーターの皆さんにお声掛けしました。

登壇者の皆さん

岡村 正太 さん

  • ビーコンや各種センサー事業を行う株式会社ビーキャップを立ち上げ&経営

  • 一貫してユーザーの課題にぶつかり続け、生粋の起業家としてあり続ける

國政 秀太郎 さん

  • 大阪ガス株式会社にて業務改革や新規サービス開発に従事

  • データサイエンスの専門性を活かしながら、いろいろな”10倍”を達成

岩佐 昭宏 さん

  • 千代田化工建設株式会社でイノベーションに関する部署を立ち上げ、同社で初めてのスタートアップ出資やベンチャーキャピタル出資を実現

  • たった1人で部署を立ち上げたり年間100社に突撃したりとパワフルに東奔西走

横木 美保 さん

  • フューチャーアーキテクト株式会社にて社内新規事業制度を利用し2Cアプリの立ち上げを経験

  • 現在はエネルギー企業に対する企業文化改革に従事

藤原 真一 さん

  • エンジニアリング企業の社長を経て、データサイエンスを支援するDSマインドという個人事業を立ち上げ

  • 経営者として試行錯誤した経験を糧に今なお最前線でDXのアドバイザーとして活躍

当日は、経営者から若手まで、あるいは社外での起業なのか社内なのか等、いろいろな観点で話を聞くことができました。
我ながら、とてもよい人選となりました。

パネルディスカッション

さて、ここからは当日の議論を振り返っていこうと思います。

議題①|イノベーションの定義

まず初めに話したのは、イノベーションをどう捉えるかという話です。

例えば経営学では、いろいろな人が様々な表現でイノベーションを定義づけていますが、現在進行形で活躍されているイノベーターの皆さんはイノベーションをどう捉えているのでしょうか

イノベーションの定義

いかがでしょうか。

皆さん、思い思いの定義を書いていただきました。
私は、各イノベーターのバックグラウンドがよく反映されたそれぞれの表現だと感じました。

しかし、当日の議論では、最終的に表現は違えど通ずる部分は多分にあるというふうになりました。

例えば、課題設定が大切であるということは皆さん共通していました。
課題の大切さは岡村さんが熱弁していたわけですが、どちらかというとHowに言及していた他の皆さんも、とは言えHowの前提として適切な課題設定があることは大変重要であると頷いていました。

また、藤原さんの定義のようにイノベーションと言われてまず想像するような0→1(だけ)ではなく実際は0.5→1のようなものもイノベーションと捉えていくべきという点も共通でした。

私は、これは、1つは時代から来る必然だと感じました。
いわゆる「つくれば売れる」という時代は終わったわけです。

また、そのマクロなトレンドを踏まえた彼らの生存戦略でもあるのだろうと考えました。
従来の0→1は100年に1度くらいの話なので、自分が生きているうちにイノベーションを起こそうと思うと、もう少し緩く構えなければいけないのでしょう。

議題②|イノベーションへのアプローチ

次に参加者が最も興味があったであろうイノベーションに至る方法について議論をしました。

イノベーションへのアプローチ

いかがでしょうか。
こちらも各イノベーターのバックグラウンドをよく反映した表現ではないでしょうか。

当日の議論でもアプローチは状況や人それぞれでよいのではないかという結論に至りました。

しかし、やはり共通的なところはいくつか見出すことができました。

例えば、実行力や胆力のようなものです。
アプローチは様々ですが、どんな方法であれそれを完遂するためのエネルギーが必要というのは共通の意見でした。

横木さんの「社内起業ですらしんどかった」という発言に対しては、イノベーター全員が頷いていました。

そして大変興味深いことに、そのエネルギーの源が感情的な要素であるという点も共通していました。

  • 「大変だ」「困った」というような肌身で感じる強烈な課題感

  • 「嬉しかった」「悲しかった」というような今まで自分の心を動かした体験

イノベーションは「しんどい!」
だからこそ自分が熱くなれるものが必要だということです。

また、岩佐さんや國政さんからは、どんなイノベーションでも周囲を巻き込む必要が必ず出てくる。
そして、協力してほしい人は往々にして忙しいので、労力やコスパを度外視しても「手伝いたい」と思わせる要素が必要
そういった観点からも感情的な誘引が必須とのことでした。

一方、藤原さんからは、それだけではダメだという話もありました。

熱量があることは必要条件だが、ご時世や技術など、それ以外の環境や要素が揃うのを待つ、あるいは、揃うよう動くというのも大切であるとのことでした。

かつて、コンピューターの処理能力が未熟だった時代、業務へのAI活用を考えたがあまりの遅さに見限ってしまった。
そう後悔を語る藤原さんの姿はとても印象的でした。

議題③|イノベーションの今後

最後に最近の環境変化を踏まえて、これからのイノベーションについて議論しました。

まず前提として、イノベーションを取り巻く環境変化については驚くほど全員の意見が一致しました。

イノベーションを取り巻く環境の変化

まず、やはり、イノベーションに限りませんが、生成系AIの影響は大きいようです。

  • そのおもしろ過ぎる得意性から誰しもが生成系AIを使ってなんらか新しいことをやろうと躍起になっている

  • あるいは、アイデア出しや壁打ちに生成系AIを使うことで、アイデア(だけ)は量産できるようになった

また、生成系AIに限らず、少しロングスパンで見るとデジタルそのものが同じ構図で捉えられます。

  • “デジタルの活用”を考えることで「あんなこといいな」を考えやすくなった

  • デジタルのコモディティ化により、アプリをつくったり、データ分析だったり、誰しもが・より簡単にできるようになった

こういった状況に対し、イノベーター5名が出した答えは「当事者たれ」でした。

今後のイノベーションに向けて

当事者になる。
何故なら当事者にならないと得られないものがあるからだそうです。

  • 「自分の番だ」という緊張感

  • そこからくる「あれ、どうやるんだっけ」という集中や解像度の高まり

実践者のみが得る感覚だったり実情への理解が、AIから生まれた薄っぺらい有象無象を御すための武器になるのです。

いや、イノベーター5名の言いぶりは違いました。
もはや武器になるというより、新たな挑戦を拒めば生き残れない、私はそんなニュアンスとして捉えました。

起業畑の岡村さんや横木さんの言葉には、これからも実践者として挑戦し続けるぞという強い意志がありました。

また、國政さんからは、だからこそ会社としてはいかに優秀な人を暇にするかが重要であるとのことでした。
優秀な人にイノベーションの嗅覚を会得してもらうためには実践しかありません。
彼らを忙殺させている場合ではないのです。

そして、藤原さんからも会社、というよりは経営者へのメッセージとして「お前もやるんだぞ」というメッセージをいただきました。
DXという大きな経営アジェンダに対処するためには、その主役である経営者こそが実践者にならなければなりません。
部下にやらせている場合ではないのです。

岩佐さんには、キャリアという観点からこの話を締めくくってもらいました。
曰く、会社が挑戦の機会を与えてくれないなどと泣き言をいうのではなく、自分の死活問題なのだから、自分事として挑戦の機会を創りだしていかないといけない。

皆さん強烈な当事者意識ですね。

終わりに

おもしろかった、、、おもしろかったに尽きます。

まず、イノベーター皆さんの意見は、それぞれ興味深いものでした。
私はモデレーターとして事前に皆さんの意見を聞きましたが、それぞれの経験に裏打ちされ、それぞれの色があり、当日の議論がとても楽しみでした。

そして当日。
それぞれの話を持ち寄ったのでいい意味で激しい議論が交わされるのかとも思ったのですが、実際はいずれの話題も話していくうちに本質的なところは収束し、驚きもありつつ、ただ必然性や納得感も感じたのでした。

当日の議論に関しては、私個人としても「そうだよな」と思うものばかりでした。

私はコンサルタントという立場からイノベーションに携わってきました。
登壇者の皆さん程ではないかもしれません。
しかし、やるかやらないかは雲泥の差であり、やることでしか得られない解像度の高さがあるという話などは、首がもげるほど頷きました。

そういった本質的な話を実践者から聞けたことは非常に貴重な機会になりました。

やはり実践者が語る言葉の解像度はとても高く、そして、うまく言えませんが、やったことがある人だけが出せる納得感が5名の全員にありました。

改めて兜の緒を締めるいい機会になりました。

この場を借りて登壇いただいた5名の皆さんにはお礼をいたします。
ありがとうございました。

パネルディスカッションの風景

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本記事執筆|フューチャーアーキテクト株式会社 髙部雄史