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坊主アドバイザリーっておいしい?

いきなり「坊主xx」と書かれてもイメージわきませんよね。

「坊主バー」のような、アットホームなよろず相談が出来るような場をイメージしたネーミングです。

あまり案件数は多くは有りませんが、コンサル委託内容の中で「アドバイザリー」の依頼を受けることが有ります。

今回はその業務内容や、思ったことなどについて、事例等を参考に、依頼する側と、受ける側の目線で、対比も交えながら書こうと思います。




アドバイザリーとは

一般的なコンサルの委託内容としては、経営課題や施策に対し、情報収集や分析を経てその確からしさの検証から実行までのフェーズを請け負う形と思います。

一方で、検証や実行は依頼元で行い、そのプロセスや作成された資料に対して、委託元企業以外の情報や知見をもって、レビューや示唆を出す「アドバイザリー」という形態も有ります。

さらにアドバイザリーも、その在り方は幅広いと思いますが、ここでは例として2つのパターンについて触れた後で、今回のケースについて具体的な内容に移りたいと思います。

一つは、実績のあるカリスマコンサルのような人にアイデアを提示して、ダメ出ししてもらうようなパターンです。

こちらは、ある程度目指す姿が明確に有り、それを体現している方に委託するケースが合っていると思います(後図、「カリスマダメ出し」)。

もう一つのパターンは、より上流から寄り添い、検討の方向性などについて議論していくパターンです。

一つ目との対比としては、「そもそも、どういう形でアイデアを出していくか。それらをどう評価するか」について議論をするイメージです(後図、「坊主バー」)。

分類を図にすると以下のようなイメージです。

コンサルティング形式分類イメージ

今回は、後者について、ある顧客の事例をもとにお話させていただこうと思います。


アドバイザリーに向けたポイント

ある企業様と最初に接点を持ってから約半年
先方の課題と我々に出来ることとを"摺合せ"ながらも、すぐには"依頼内容を具体化"出来ず、1〜2ヶ月間隔で会話を続けていました。

その結果「まずは、アドバイザリーから」という形で進める事となりました。

ここでのポイントは、”摺合せ"と"具体化すべきかどうか”、それともう一つ”相性”なのかなと思います。

"擦合せ"で意識しておいた方が良いこと

”摺合せ"の目的は、双方の相性の見極めかと思います。

分岐は以下の図のようになりますが、この際にアドバイザリーという選択肢をお互いが持っていないと、着地の無い関係性が続き疲弊してしまうので、この選択肢はお互いに意識しておくと良いと思います。

擦合わせ時のゴールイメージ


"具体化"のメリット・デメリット

次に"具体化すべきかどうか"ですが、それぞれメリット・デメリットが有りますが、その内容について依頼元と、それを受ける依頼先の目線から触れてみたいと思います。

依頼元でより具体化を進めてから委託するメリットは外部コストを抑えられることに対し、デメリットは内部コスト(人員、時間)が大きくなることかと思います。

具体化に時間をかけすぎ、機会損失を招いたり、逆に具体化せずに委託したことで後に食い違いが発生し、想定した効果が出ないなど、どのくらいの内部コストを割いて"どこまで具体化すべきか"は難しい問題だと思います。

その解決策の一つとしてのアドバイザリーの効果は一定有ると思います。
メリットは、作業自体は内部リソースで行うことで、外部コストを抑えつつ、依頼元で経験が不足している領域に対しても、アドバイザリーにより知見を補完することで具体化することが出来るという点です。

下の図で、通常①→②に向かって内部コストがかかるところを、アドバイザリーによって①→②’ にすることで、「⊿内部コスト➖⊿外部コスト」分の効果が得られる可能性が有りますし、作業自体は内部で行うことで、将来的な内製化に向けたノウハウも身に着けられる可能性が有ります。

アドバイザリー費用対効果イメージ

デメリットは費用対効果になりますが、それも踏まえた相性の良い依頼先が見つかるかどうかだと思います。こちらについては後述します。

さて、冒頭の通り、これを”受ける側”から見てみたいと思います。

先に、かなり具体化された案件のリスクの話をさせていただきます。

具体化された案件は、そこに至るまでの背景情報が見えにくい状態で、定められた計画、目標の達成を目指しますが、見えなかった部分の情報の把握や、コントロールが出来ない状態で、終盤になって前提条件が変わり、当初の目標が達成出来なる。目標そのものが変わる。

より大きな課題のために、案件自体が頓挫してしまうということも有り、デリバリー・リスクが高いとも言えます。

逆に、具体化されていない案件というのは、扱うテーマ・情報の広さに比例して、難易度も上がりますが、早い段階で広く情報を共有することで、先のようなリスクを避けられる確率を上げることができます。

また何より、そういったコンサル側の裁量が大きな案件にこそ、モチベーションが働くというのが、コンサルとしての気質が有るかのかなと思います。

下に図にしてみましたが、「⊿デリバリー・リスク」分、リスクを下げる事が出来ると思います。

裁量とデリバリー・リスク


"相性"も大事

ここまでの話では、アドバイザリーは双方にとってメリットが多いように見えますが、先に書いた通り、相性の良い依頼先が見つかるかどうかという問題が有ります。

その理由は、難易度が高いテーマに対応出来る委託先を探す際に、大手のネームバリューに頼るのがまず思いつきますが、この市場は、”大手はあまり受けない"というのが有ります。

性質上、難易度が高い割に、小規模な案件になるので、受け側としては実入りが少なくなるからです。
そのため、ブランド力の有る大手の人材は対象となりづらいため、この市場では主にフリーランスや個人事業主などが対象になりますが、それらの情報を集めるのは、今もまだ難易度が高い印象です。

大きくはこの"相性の良い委託先を見つける"というハードルが超えられれば、アドバイザリーは概ね、有用な選択だと思います。

雑な言い方をすると、偶然見つけた質の高いコンサルを、とっつきやすく使える選択肢が有れば、そうするに限る。となるでしょうか。

さて、このような形で開始した本案件について、ここから少し、その先の話にも触れようと思います。

書いておいて矛盾のようになりますが、アドバイザリーなら問題なく進むとは良い切れません。

見えてくる「解くべき、命題」

この案件では、規模も小さいということで、依頼元の中で出てきた議論や資料のレビューをするという形でした。

何度か会話を重ねる中で、いくつかの示唆も出させていただき、具体化を進めることが出来てきましたが、具体化が進むうちに、先ほど書いたようなリスクが見えて来たにも関わらず、ある程度の方針が具体化されたが故に、振り返ること無く突き進んでしまうようになっていました。

実は、この案件は、アドバイザリーの依頼を受けるまでの半年間で、依頼元で少し具体化されていたことで、当初は情報が限定的にか共有されておらず、より大きな「解くべき、命題」が見えにくくなっていたのです。

そして、見えない情報に過度な期待をしながら、文字通り盲目的になっていたことで、総倒れになるリスクも有ることがわかって来ました。

そこで、その後の数回の議論では、いくつかの仮説を立てながら、テーマを少し広げた議論をすることで、どのようにリスクと向き合うかと、その具体案に向けた検討が進められるようになりました。
①’→②’ と向かいそうな場面で、②"への軌道修正です。

軌道修正によるリスク回避

それからは、より全体感を持った活動にシフトしていき、本質からブレない議論が出来るようになっていった思います。


坊主で良かった?

当初は案件の具体化についての支援でしたが、”具体化" し過ぎず軌道修正の効く段階だったことと、坊主バーらしく、よろず相談も合わせて会話出来たことで背景や周辺の情報も共有出来た事が功を奏したように思います。

”具体化の程度"とアドバイザリーの適否ははっきりと線が引けない場合もあり、時にはハイブリッドということも有るかと思います。

現状の進み具合と、どの選択肢が良いかについても、事前の会話で相談出来ていると良いかと思います。

コンサルティング形式適否イメージ


まとめ

  • 転ばぬ先の、アドバイザリー

  • ただし、相性の見極めが重要

  • 初めたら少し広めの情報共有が吉

「コンサル失敗例」「コンサル嫌い」という話は良く聞きます。

その原因として「コンサルの使い方が下手」といった課題認識や、その対策として「事前により具体化が必要」という話も良く聞きます。

そのような対策がそもそも難しい場合や、対策をしても改善されない場合の選択肢として、アドバイザリーについて、ご一考いかがでしょうか。

お読みいただいた皆様にとって「坊主アドバイザリーって、おいしい!」となることを心から祈っております。

アドバイザリーについての問い合わせやは、以下の問い合わせフォームよりお問合せください。

冒頭、「アットホームなよろず相談」と書いてしまったからには、気軽な相談も受け付けています。その際、フォームの「お問い合わせ内容」の先頭に「<JASPERについて>」と記載をお願いします。


本記事執筆|フューチャーアーキテクト株式会社 寺戸周介