見出し画像

PM7:00の応援 in NY

数日前から、夜7時になるとカンカンと物を叩いて音を鳴らし出す人が自宅の周辺アパートでも出てきた。これは何かというと、マンハッタンおよび他の地域のエマージェンシーの病院周辺で始まったヘルスワーカー(病院勤務者)への頑張ってコールなのだ。いつ、どこから始まったのかは定かではないけれど、Stay Homeで自宅待機している近隣のみんなが、夜の7時になると一斉に音を鳴らす。場所によってはみんなが同時に手を叩いて音を出し合っているところもある。これが今のNY式の応援なのだ。

こういうのって本当に素晴らしいし、泣ける。何もできなければ、せめて音を出してみんなで応援し合おうと言うアイデアだ。やはり、さすがに体を使って何かを表現するのが習慣の国だけある。

今この街で一番頑張っているのはもちろんヘルスワーカーもそうだし、それ以外にも警察官、地下鉄、ドラッグストアやスーパーマーケットで働くEssential Workerと呼ばれる人たちも、こんな状況でも仕事の現場に立っている。彼らに対する感謝はどれだけしてもしきれないと私は思っている。

ただ、以前のnoteにも書いたけど、デブラシオ市長がマスクの重要性について語り出したのは、ほんの数日前だ。

これについては、いくら言ってももはや習慣の違いだから仕方がないけど、エッセンシャルワーカー、特に地下鉄で働く人たちや警官の人たちのものすごい数の感染が確認され、すでに多くの死者も出ている現在の状況では、マスクに慣れている日本人としては、本当に歯がゆい思いは隠せない。

せめて、彼らにだけは最初からマスクと手袋を市が強く要請してくれていたら、、、。

日本であれば、当たり前のように真っ先にそれを行うだろう。でも、なんでもそうだけど、NYはやってから初めて気がつく、要するに経験して学ぶアナログな街なのだ。それはある意味素敵なところではあったんだけど、こういう状況ではそれが裏目に出てしまった。そこらへんは、日本とは全く逆かもしれない。日本人は不安に敏感だし、いろんなネガティヴなことを数多く想像しやすい神経質な民族だから、その意味では予防は得意だと思う。要するに何か不安を感じると、1を聞いて10を想像するような心配性のメンタルだ。

だから、ロックダウンになる前に、自粛要請の段階でも、すでにみんなが自主的にロックダウン状態を作っていたりする。そんなことはアメリカや他の西欧諸国ではほとんどあり得ない。

でも、NYは経験から学ぶ街だからこそ、経験したことは決して忘れないし、経験を活かすっていうことに関しては、他のどの場所よりもみんなが前向きに考える。そんな街だからこそ、今回はマスクも手袋もしないで働いて感染して亡くなった多くのエッセンシャルワーカーの死は絶対に無駄にしてはいけないと、みんなが思い始めているように感じる。

デブラシオ市長の警告以来、街に働く人たちも、さらに警戒してマスクや手袋だけでなく、レジとお客さんの間にプラスチックの仕切りを作り始めた店まである。ついこの間までは、私も店員さんがマスクをせずに店内で大声で話しまくっているスーパーや色々なお店にはとても恐くていけないと思っていた。

けれども、そんな彼らもここに来て少しづつ変わり始めた。そうなって来るとニューヨーカーは強いと私は思っている。多人種の共存する街は、みんなの助け合いがあって始めて成り立つ部分がある。だから、やるとなったら他人のために一致団結することを厭わないのがこの街のいいところだ。

街のあちこちで、すでに高齢者に対するデリバリーのボランテイアに自ら名乗りを上げる元気な若者たちが出てきていたり、毎日フリーで食べ物を配っている人たちがいたり、パフォーマンスや音楽を通してみんなを励ます人たちが出てきたり、ホームレスの人たちを助けるホテルや教会が出てきたりと、すでに街のあちこちで本気の助け合いが始まっている。

そんな中で起こったことの一つが、この午後7時のヘルスワーカーへの応援だ。

だから、どんな状況であっても、みんなで心を一つにして何かを行うってことは可能なんだということを日本にいてもどこにいても忘れないで欲しい。

今日はまさしくNYって感じのブルックリン出身のキャロルキングの名盤タペストリーの中の名曲を送ります。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?